四万十の天然鮎「祢保希」

pic_退職を正式に公言した。頻繁に“食事”に誘われることになった。その第1弾として、後輩の女性と妻の3人で食事に出かけた。土佐料理の名店「祢保希」。どうしても美味しい鮎が食べたかった。自分で書いた「鮎」の記事を読み返して我慢できなくなったのだ。皿鉢料理もかつおのタタキも勿論有名だが、高知には清流四万十川がある。聞けば天然の鮎も空輸しているという。食べなきゃいけない鮎は、きっとこれだ。

新宿野村ビルの最上階にある眺めの良い店。お昼時に訪れた前回は、“おばちゃん”の集団で満席だった。ところが今回はスーツ姿の男性だけ。店の印象が随分違う。大広間からは胴間声や拍手が漏れ聞こえてくる。ま、土佐料理じゃけん、そげんこともあるき。…相変わらずインチキ方言。そして“季節のお薦め料理”のラインナップに四万十の鮎はいた。ただし、1,800円也。念のためにサービス係のオバちゃんに聞く。「この天然鮎の塩焼きって、一匹ですよね」「はぁい。そうです。美味しいですよぉ」「じゃぁ、2つ」…って鮎を食べに来たのに、相変わらず小っちぇ私。

「ごりの唐揚」「鯨尾の身刺身」、ポン酢が絶品の「鰹のたたき」。オバちゃんが言うには、「ポン酢、飲めちゃいますよ、美味しくって」…無理だろうけど、確かにさっぱりとした美味。そして、いよいよ「天然鮎」の登場。自宅で焼いたものと違い、腰のひねりがセクシィ。こんがり具合も素晴らしい。箸で腹を割った時に立ち昇る香りにくらくらする。身と腹と皮を小さくまとめ、口に運ぶ。やっぱりこれだぁ。食べたかった鮎は。

「追加で、鮎をもう一皿ください!」こんな時の私の決断は速い。…食べかけた鮎は妻に譲り、新たに自分の皿を待つ。追加の焼きたて鮎のたおやかな姿をしばし眺め、両手で持ち、かぶりつく。独特の香りが鼻腔いっぱいに拡がり、繊細な白い身が腹の苦味と絶妙に絡みつく。満足。都会で味わう夏の香りは土佐の国からやってきた。「転職の祝いぜよ!」…自分に独りごちた。

■食いしん坊夫婦の御用達「祢保希」*店の詳細データ

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