8月6日に思う…『父と暮らせば』

rie「Santa Fe」も買った。キットカットや三井のリハウスのCFも好きだった。『ぼくらの七日間戦争』は出張先の名古屋で観た。輝いていた。若さに溢れた輝きだった。その最後で最高の輝きが婚約記者発表だったと思っていた。その後の低迷が淋しかった。残念だった。痩せすぎた身体が痛々しかった。

ところが、ここ数年の宮沢りえは、素晴らしい。『たそがれ清兵衛』などの映画作品も、「伊右衛門」や資生堂の「フィーノ」などのCFも、爽やかで、儚げなで、憂いを含んだ大人の女性としての存在感があり、とても魅力的だ。誰かモッくんと彼女で「伊右衛門」をベースに映画を一本撮って欲しいぐらいだ。…けっこう良い作品になりそうだなぁ。(ところで彼の「ギャツビー」のCFも良いね)

宮沢りえ主演、井上ひさし原作『父と暮らせば』を小さな映画館で観た。二人芝居として“こまつ座”が各地で公演を続けている戯曲の映画化。原田芳雄と広島弁で交わされる父娘の会話を中心に物語は進んでいく。“ピカ”で自分だけ生き残ったことに負い目を持ってしまった娘と、恋に躊躇う娘を心配し「娘の恋の応援団長」と称し、突然現れた(ピカで亡くなった)父。「お父ったん…」と呼ぶ宮沢りえの声を、「ありがとうありました。」「私だけ生きていくのが申し訳なくて…」「ウチは幸せになってはいけんのじゃ」「わしの分まで生きてちょんだいよぉ」といういくつかの父娘の台詞を、思い出す度に私の涙腺が刺激される。

実に良い映画だ。宮沢りえや原田芳雄の演技者としての力。映像作品ならではのラスト。亡くなった方たちの“死”を、“何十万人もの…”という“数”ではなく、生きていた生活していた一人ひとりの人間として、身近な存在として登場させ、観る人にその“生”を突き付ける。声高に原爆の悲惨さを語るだけではなく、こんな伝え方もあるんだな。芸術の力は報道の力を軽々と超えることもある。それにしても、宮沢りえの才能が、存在が、あの部屋のどたばた劇の渦中に埋もれなくて良かったなぁとつくづく思うのだった。

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