愛しのポンちゃん≒AMY≒山田詠美「PAY DAY!!!」

P1000673毎回、このシリーズが出ると、「同じ人が書いたとは思えない!」二人でそう呟くことになる。そして、二人とも大好きな作家、AMYの「熱血ポンちゃん」シリーズは、南の島の旅行まで取っておきたいのに、ついすぐに完読してしまう。そう、お気楽なこのシリーズは南の島のエー加減な気分にぴったり。朝からビール飲んでも良いんだもんねぇ、シャンパンだって飲んじゃうもんねぇ、えぇいっ、私だってフレッシュオレンジジュースお代わり!だってヴァカンスじゃん!てなもんである。

ところが、このポンちゃん、なかなか凄い作家“山田詠美”でもある。デビュー作からほとんどの著作を読んでいるのだけれど、その登場人物が、実に魅力的。彼女の文章からは、生身の人間の体温、香り、肌触り、心や身体の“痛み”、街の匂いなどが、リアルに伝わってくる。(妻は乾いた筆致が好きだと言う)知っての通り、彼女の作品の登場人物にはブラックアメリカンが多い。なのにバリバリの日本人の私にも違和感なく読めるのは、彼女の友人関係の産物であるだけではなく、彼らに対する愛情と敬意の表れなのだろう。触れたことのない世界なのに、決して現実から浮いていないことが分かる物語。

彼女の作品群の中では、ちょっと異色の「風葬の教室」も良い。子供の、日本の、物語。ジェシーや、ココや、スプーンは一切登場しない。でも、確実に山田詠美の風味。(そう言えば、かつてマンガマニアだった私は、なぜか彼女の“山田双葉”時代のマンガも偶然読んでいる。「だっくす」というまんが専門誌に掲載された、永遠に売れそうもないタッチのエロな作品だった)

かと思うと、「PAY DAY!!!」のように、9.11を背景に扱いながら、アメリカの“今”を暖かい眼差しで描きあげることもやってしまう。ロビンとハーモニーという双子の兄妹の章を交互に綴りながら、NYCと南部の町ロックフォートを描く。そして、各章の最後は「PAY DAY!」というワードで韻を踏む。さらに、最終章はロビン&ハーモニー、そして家族の物語で締めくくる。まいっちまうぜ、AMY!泣きそうになっちまった。文庫本の解説に「山田詠美の握力は強い」と、書き始める豊崎由美さんに同感。すっかり彼女の作品に、がっちり鷲掴みにされてしまっている。IGA&妻にとって、山田詠美も、AMYも、ポンちゃんも、愛すべき大事な存在なのだった。

1つのコメントがあります。

  1. DAY!


    嬉しいなぁ

     この記事は「IGA“快楽主義宣言”」さんの記事にトラックバックします。

     mixiなるものに招待していただいて、足跡を残してくださった方のところには一応お伺いするのですが、うーん、どこで…

002142811

SINCE 1.May 2005