Archive for 8 月 13th, 2006

美味の記憶「まんさくの花」

P102_1・・・記憶がない。覚えているのは、友人たちを見送り、部屋に戻ったところまで。翌朝、目が覚め、失われた記憶を妻に補填してもらう。妻の言述を信じるならば、普通に妻と会話し、風呂に入り、髪を洗い、濡れた身体を拭き、下着をはいたところまでは、自分の意思(本能?)で行動していたらしい。その後、パジャマを着ることができず、ベッドに倒れこんだところを妻に発見され、無理やりパジャマを着せられ、眠りに付いた・・・ということになる。いつもと全く一緒。疑う余地はない。二日酔いだ。頭が痛い。

その日は、友人たち3人と四川料理を食べながら、ビールを6本。甕だし紹興酒を3合。妻は烏龍茶を1本。その後、BAR808に移動し、日本酒を飲む。その日の趣旨の一つは、この酒を飲むことだった。姪夫妻から届いた“まんさくの花”。酒好きの二人が選んで贈ってくれた酒をちびちび飲んで、味が変わってしまうのはもったいない。だったら二人を招いて一緒に飲んでしまおう!という作戦。美味しいお酒は、大勢で飲めばより美味しい。もう一組の招待客は年下の友人と婚約。新婚の姪夫妻と同席したら、結婚のきっかけも掴めるかもしれない。そんなアイディア。が、婚約者は所用で欠席。友人から事前にメールが届いた。「一人でも参加します。たっぷり飲んで良いですか?」

・・・彼の希望は叶った。最初は“まんさくの花”。小さな壜に入れ替え、きりっと冷やした辛口の酒は、さらさらとした口当たり。しっかりした味。ほんのり酸味。暑い夏にぴったりの酒だ。「へぇ、美味しいっ」「これ、飲んじゃうねぇ」そんな会話通りに、良いペースで空になる。次に、飲みかけだった“ボンベイ・サファイア”。「私、これ大好き。夏はジンも美味しいですよねぇ」姪も楽しそうに飲んでいる。それにしても誰も酔う気配がない。「あなたも今日は珍しく真っ赤にならないねぇ」妻が不思議そうに私を眺める。スコールのような雨で気温が下がった爽やかな夜のせいだ。良い感じ。

次は“スコーピオン”。冷凍庫でキンキンに冷やしてあるテキーラ。とろりとした透明な液体を小さなショットグラスに注ぐ。何度か目の乾杯。「それにしても彼女が来られなくて残念だったねぇ」「次はお祝いで乾杯したいよなぁ」「次回は必ず連れてきます!」姪の夫君とすっかり仲良くなった友人が笑顔で答える。のんべ仲間の輪が広がる。蠍の透明な壜もすっかり空になった頃、お開きになった。楽しく美味しい酒だった。

「しっかし、毎回覚えてないっていうのが不思議だよね」二日酔いの朝、妻が呟く。「普通に会話してるんだよ。同じ話は何度も繰り返すけど」自分でも不思議。しかし、美味しい酒の記憶は残っているから問題なし!ところで、歯は磨いて寝た?あ、そう。

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