Archive for 2 月 18th, 2007

ご近所でエンタメ『フラガール』

Photo_843連休の初日。ふだんなら、その駅のホームでは見かけない家族連れが数組。手には花模様のパンフ。なんだろうと思って盗み見ると、白地にハイビスカスの花が散らされた真ん中に、“Hula girl”の文字と、イラストの女性が3人、フラダンスを踊っている。そうだった、観に行かなきゃ!忘れるところだった。映画館で観られるラストチャンスだ。その日も、その駅近くの店で食事をして帰る途中。飲んで食べるだけの人生ではいかん。きちんとエンタメ時間を確保しなければ。

都内でも少なくなった貴重な名画座のひとつ「下高井戸シネマ」のあるこの駅は、これまた貴重な(環7を横断する部分だけ)路面電車、世田谷線の乗換駅。お気楽夫婦が食事をするために、途中下車する駅でもある。メキシコ料理のポサダ・デル・ソル、沖縄料理ナンクル・ナイサ、イタリアンレストラン トニーノなどなど。そして、飲んだ帰りに駅のホームで、下高井戸シネマの手作りポスターを眺めるのが小さな愉しみ。スケジュール表やチラシを組合せ、可愛い丸文字の手書きコメントを配し、毎回更新の度に“読ませる”ポスター。そして、ロードショーで行けなかった作品を見つけ「あ、行かなきゃ」と思わせる。この『フラガール』も、そんな作品のひとつだった。

Photo_85この作品への興味は蒼井優(祝!日本アカデミー賞/助演女優賞)がきっかけ。『フラガール』撮影の舞台裏と彼女の素顔を追った<情熱大陸>を2人で観た時に、共に思わず惹き込まれた。ラストシーンの自分の表情に納得できずに、監督に撮り直しをお願いする、さらっとした顔の下にある“情熱”。<イオンカード>のCFでしか見かけなかった女の子が急に魅力的に見えた。懸命にフラを踊る彼女の姿に惹きつけられた。ふぅ~ん、良い感じじゃん、観ても良いかな…と(邦画なのに、珍しく妻も同様に)思いながらも映画館に行く時間を捻出できずに年が明けた。そして、<下高井戸シネマ>での上映を待つことになった。

上映期間終了ぎりぎりの、それも最終回。仕事をなんとか切り上げて駆けつけた。松雪泰子が、実に良い。彼女もこんな役柄を演じる年齢になり、失礼ながら彼女を初めて女優だと認識した演技。豊川悦司が、富司淳子が、岸部一徳が、良い。そして、薄めていない(たぶん)生のままの福島弁が良い。炭鉱町の風景に、『三丁目の夕日』のような、実体験がないのに感じる懐かしさや既知感。たっぷりと感情移入をしてしまった私は、隣の席の妻を気にしながら何度も涙を抑える。笑いが起き、洟をすする音がする。この映画館は観客席もウェットで暖かい。このご近所の映画館での上映まで待って、結果的に正解かもね。観終わった後に、お気楽夫婦は満足の笑みを交わす。「やっぱり良質のエンタメって、良いよね。人を優しくするよねぇ」…そしてやっぱり、いつものように、余韻を味会うために、美味しい酒と肴を求めて、下高井戸の街を歩くのだった。

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