海と野を味わう宿「亀や」そして「湯どの庵」

Photo_2千尋房と名付けられたこぢゃれたダイニング。なのに客は浴衣姿。日常空間ではあり得ない、このアンバランスな空気が“ハレ”の気分を増す。期待と空腹とを抱えながら案内された席に付くと、何やら封筒がテーブルの上に置いてある。裏を返すと“MENU”の文字。中には“文月の御献立”と飲み物のメニュー。すかさず生ビールを注文。メニューを眺めながら生ビールのきれいな泡を楽しんでいる頃に、先附けの二品がやってきた。

Photo_3「じゅん菜の土佐ジュレ」と「夏烏賊ズンダ和え 薄べっこう餡」。初夏らしく爽やかな逸品。「こんな大きなジュンサイって初めて。歯応えがあって美味しい♪」妻が満足気に頷く。土佐酢の柔らかな酸味が食欲をそそる。“ダダチャ豆”のズンダとイカの組合せも絶妙。

Photo_4前肴として「岩牡蠣ともずく卸しポン酢」「地野菜 味噌マヨネーズ」。生牡蠣が大好物のお気楽夫婦。しかし訳あって食べられない私。「くぅ~っ、旨いねっ」私の分も平らげた妻が歓喜する。しゃきしゃきのきゅうり、ジューシーで果物のようなトマトがストレートに旨い。

Photo_5Photo_6さらに椀物には、この季節に欠かせない“鱧”の葛打ちコンソメ仕立。上品なスープとほろほろとした鱧の身がベストマッチ。妻はスープを飲み干す。続く造里には薄作りの鱸とキスの刺身。ローズマリーに天然塩をまぶしたハーブ塩を揉み振り掛けて食べる鱸が絶品!

Photo_7焼物に出てきたのは「車海老塩焼き」「庄内特選和牛味噌漬け」。海老好きの妻は、海老味噌とぷりぷりの海老の身を一緒に頬張り嬉々としている。「美味しいねぇ、新鮮で食材としての質が良いっていうのが素人でも分かるね」確かに。そう言えば母は、この地元の新鮮素材を活かし、余り手を掛けない美味しい料理を作っていたなぁ。(…って、病床の母を余り誉めてないな)そして、まだまだ続く土地の美味。味の記憶が蘇り、新たに生まれる幸せな時間。

Photo_8翌朝、思わず酒!と頼みたくなるような絶品の小鉢が並ぶ食卓に、食べすぎを抑制するのが辛い。庄内米のご飯も正しく美味しい。温泉卵とトロロの組合せなどは感涙もの。それにしても、この亀やグループ、なかなか良いセンス。以前宿泊した同系列の湯どの庵も、しっとりとした和風モダン、スモール&ラグジュアリーの宿。食事も含め満足できた。露天風呂を増設したというし、次は<湯どの庵>を再訪してみようか。

こうして帰省の度に、妻と一緒に“気になる宿”を訪ねることが楽しみになっている。旅行者の視点で故郷を楽しみ、味わう。客観的に街や宿や味、風景、そしてそれらを含む文化を評価できる。街が変っていくことを無責任に嘆くのではなく、生活者の視点では気付かないポイントを誉めることができる。「あれ?リゾート気分で泊まっているだけじゃないんだ?」…まぁ、そうとも言うね。

【お気に入りホテルカタログ】

■「亀や」〈山形・湯野浜温泉〉

■「湯どの庵」〈山形・湯田川温泉〉

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SINCE 1.May 2005