味・ルネサンス「アル・ケッチァーノ」

Photo_2なかなか予約の取れないその小さなイタリアンレストランを初めて訪ね、分かったことがある。この「アル・ケッチァーノ」の存在は、日本各地からやってくるグルマンたちを満足させるためだけにある訳ではない。大袈裟に言えば、その店のある庄内という地域に住むの人々の料理に対する認識を変えていくのかもしれない…ということが。

Photo美味は食材にあり、料理法にある。しかし、例えばこの魚、ワラサだったら、この地方の一般的な食卓では、刺身かせいぜい照り焼き、煮物で供される。もちろん充分美味しいし、不満がある訳ではない。しかし、それがこの店では「庄内浜のワラサのカルパッチョ」になる。脂の乗ったワラサの刺身が、オリーブオイルと相性が良いばかりか、日常的に食べていた魚が、新鮮で贅沢で、イタリア料理にもなることを知る。

Photo_3そして「ローマレタスと庄内豚ベーコンのシーザースサラダ」などと一緒にメニューに並ぶ。この店のメニューには「庄内」「羽黒」などの地元の地名や「井上農場」「三川の佐藤さん」などの生産者の名が冠される。“地産地消”を店のコンセプトとして掲げ、地元の旬の食材を地元の人々が知らなかった組合せと料理法で供する。その日の仕入の具合でメニューを決める。メニューは伝えるだけではなく創るものなのだと教える。

Photo_4この店のシェフ奥田政行氏は、店の客、地元のプロ(民宿のおばちゃんたち)相手に、その経験やレシピ、技を伝えている。「こげだ作りがだ、あったなんけのぉ(こんな作りかたあったんだね)」と驚くおばちゃんたち。そう言えば、子供の頃、都内に住む従姉妹たちが言ったことばをふと思い出した。「このイガイ(ムール貝の一種)美味しい♪でも、こんな新鮮な食材を使えたら、美味しいイタリア料理でもできるのにねぇ」…何年も前に従姉妹が発したことばが、地元出身のシェフによって、今ようやく実現しつつある(明日の記事に続く)

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