Archive for 2 月 24th, 2008

ぽかぽか春の便り「手作りひな人形」

P1060678_2手紙を習い始めて3年ほど経った妻の両親。毎月揃って教室に通い、毎月決まって絵手紙を送ってくれる。そのこと自体も嬉しいけれど、何よりも一緒に送られてくる“季節”のお知らせがありがたい。寒い季節にははがき一杯にミカンの絵を描き、「この冬も元気でいこう」というメッセージが添えられる。春には蕗の薹の絵と共に、「そろそろ春ですね」という直截なひと言。夏になれば団扇に貼った絵手紙という趣向で、南瓜の絵が「カロチンたっぷり夏バテ予防」という標語のような、とても暖かい便りが届く。絵手紙が届く度に、2人の周囲を過ぎ去る時間のスピードが減速し、新しい季節を自覚することができる。

して、この春、妻の両親から小さな包みが届いた。封を開けるとほんのり春の便り。手作りの<雛人形>だった。今はもう懐かしくさえあるフィルムケースに和紙を貼り付け、水引で髪飾りを作ったふたり雛。両親の人柄そのままの柔らかな表情。良いじゃない!それだけではなく、フィルムケースの中に隠された密書が。巻物のような絵手紙には、相変わらずの脱力系メッセージと共に、梅の絵と菜の花が咲いていた。男雛は父親が、女雛は母親が、それぞれじっくりと描いてくれた労作。さっそく真っ赤なバカラの箱にお2人をお納めし、その前に巻物風の絵手紙を飾った。そこだけ先に春が来た。

な祭りは、古来から女の子のすこやかな成長を祈るものだけれど、“飾る”雛人形というお祝いの形と、“流す”雛人形に代表される厄災を人形に身代わりにさせる形がある。飾る雛人形は、ふたり雛から豪華な段飾りまでいろいろ。雛人形をいつまでも出しておくと婚期が遅れるなどという都市伝説?まである。子供の厄災を身代わりとして守る役目の雛人形は、女の子1人にひとつ。思い出せば、母の実家には大きな段飾りの雛人形が何セットもあり、春になると2階の部屋ひとつをほとんど全部使って雛人形が飾れらていた。母を含めて3人の姉妹がいたためであろうが、子供心には不思議で、そしてちょっと怖かった。毎年丁寧に箱から出され、飾れられ、仕舞われたのだろうけれども、中には指先が折れたり、顔の一部が欠けたりした従者たちがいた。誰もいない時間に2階に上がり、総勢数十名の雛人形軍団を覗き込むと・・・。ぶるっ!

れに比べ、このふたり雛。すこぶる平安。絵手紙の先生も季節ごとに趣向を凝らし、いろんなアイディアを搾り出し、テーマにしているのだろう。でも、こんな力作が自分の手元にないのも淋しいだろうね。「絵手紙は誰かに送って初めて<絵手紙>だから、毎回必ず郵送させるのが先生の方針なんだって」なるほど、それは正しい。そう言えば、もうひと組の雛人形が妻の従姉妹にも届いたらしい。妻が電話をすると「届いたよぉ、可愛いねぇ」との返事。「中に手紙が入っていたでしょう」「え?何?人形の中に?どうして?」プチパニックのおとぼけ従姉妹。「これフィルムのケースなのねぇ、凄ぉいねぇ」従姉妹の電話からも、春の(脱力系の)暖かさが伝わってきた。ぽかぽかした、嬉しい春の頼り。(それにしても手紙がずっと封じ込められないで良かった)春一番も吹き、春本番。

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