先生は男前な女性鍼灸師「オアシス」

Photo痛が治らない。桜の頃にテニスをやって痛めた、腱鞘炎。数ヶ月も放っておいたが、自然治癒の気配は全くない。さすがにこれはいかんと治療を始めることにした。しかし、どんな治療が良いか。整体やボクササイズは長期的な効果はあるが、患部の治療というよりは、むしろ予防。整形外科ではせいぜい湿布や電気治療。短期的に効果があるとは思えない。どうしようか。そんな時、「あら、私も肘の治療してるんだ。IGAさんも行く?」と、スカッシュ仲間Kに勧められ、彼女が通うスポーツクラブの中にある「Sports Massage Room オアシス」という治療室に通うことになった。担当の先生はすらっと背が高く、ハスキーヴォイスの、さっぱりとした性格の酒豪。宝塚の男役出身の(と言ったら誰もが信じる)男前な女性。やはりスカッシュ仲間と一緒の酒の席と、披露宴でご一緒だった。

療初日。ただの飲み友だちだった美しい女性が白衣で目の前に現れ、先生と患者の関係になる。ちょっと緊張。「では、上半身裸になってください」え!ま、そうでしょうけど。緊張が高まる。最近ちょっと脇腹のたるみが気になっていたのに。(そっちかい!)「IGAさんは、痛みに強いですか」いいえ(涙)。痛いのか?やっぱり。さらに緊張が高まる。「はい、分かりました。では肘の状態を診させていただきますね」肘の周辺から、手首、肩、腕と張りの状態を確かめる。「じゃあ、まずは仰向けに寝てください。鍼を打って行きます」怖くて目を開けていることができず、ましてや患部を見ることなどできない。鍼を打たれることに集中しないようにと意識すると、逆に患部に意識が集中してしまう。ぷち。ふぅ。それほど痛くはない。ぷち。ぐわっ!痛い。打たれた場所から指先まで熱い痛みが瞬間的に走る。「あ、ごめんなさいね」と言いながら、ぷち。セーフ。ぷち。あつっ!ぷち…。永遠かと思われる緊張の時間が続く。

Photo_2い。では次に電気通して行きまぁす♪」ん?今、ちょっと声が楽しそうだったか。「まず肘の横です」ぴくん。「次は上です」どくん、どくん。「脇の下です」ぐぇっ!「最後はここです」どくん。おぉっ!カエルの電気実験のように、勝手に指が動く。肘から腕を通って指先までが波打つ痛み。数分間の実験が終わる。思わずふぅ〜っと深いため息が漏れる。「はい、次はお灸です。熱かったら言ってください」既に熱いんですけど、とは言えない。どこまでが我慢すべき熱さなのか、基準が分からない。「はい、頑張りましたねぇ。次は腕全体をマッサージします」や、やっぱり私は頑張ったのか。熱かった。と思う間もなく、ウィーン名物シュニッツェル(子牛のカツレツ)を作る時に使いそうなイボイボ付きの金属のローラーが腕の上を走る。うげっ!痛気持ち良い。「Kちゃんもこれは好きみたいで、これ自分で買ったんですよ。でも、彼女にはもっと深いとこまで鍼を打って、ぐりぐり動かすんですよ。タオルを口にくわえて痛みを堪えてます。頑張ってますよ」それは凄い。「IGAさんにはちょっと無理そうですね」もちろんです。「はぁい、今日はこれでお終いです。お疲れ様でした」はい、いろんな意味で疲れました。

れから数週間。何度かそんな治療を続け、痛みも軽くなって来た。「あぁ、ずいぶん柔らかくなってきましたね」はい。耐えて来た甲斐があります。「では今日は俯せで♪」ん?また声がちょっと楽しそうじゃないか。「はい、腕を上げてください。失礼します」おっ!脇の下をマッサージ?うげげっ!痛い!他人に脇の下を委ねることも怖い。まして相手は美しき男前女性。「はい、力抜いてください」と言われても。うじじじっ!痛みで腰が浮いてしまう。「1、2、3、はいもう少しです」ふぅ。「1、2、3…」いでっ!これは効きますね。いででっ!身を捩る痛みが全身を貫く。男性は痛みに弱いというが、私はトップクラスに違いない。とても子供を産めそうもない。「Kちゃんは子供産んだ時より痛いって言ってますよ」そうなのか、Kちゃん。お互いにこの痛みを耐えて、再びスカッシュができるよう完治を目指す、同志のような気持になってきた。じゃあ、今度Kちゃんに会った時には、お互いに脇の下のツボを押し合ってみます。「ははは。ぜひやってみてください♪」…そんな時でも爽やかで、男前な先生なのだった。

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