良い夫婦×3=「お祝いの風景」

Photo_3 Photo_5家に嫁いだ弟(正確には農家に種苗などを販売するお店を経営する家に婿養子に行った末弟)が、家と店舗を建て替えた。お客さまに夜も明けない時間から起こされ続けながら(農家の爺婆は朝が尋常ではなく早い)懸命に商いをした結果。これは是非ともお祝いをしなければ。という訳で東京駅から北に向かう新幹線に乗り、弟の住む街に向かった。新幹線とは言っても、正式に新幹線と言えるのは雪を被った吾妻連峰を望む福島まで。そこから先は、踏切のある在来線を通る特急列車。急勾配をのんびり走る峠の風景はすっかり雪景色。シャキーン♪シャリン♬紅葉前線も訪れていない都内からの観光客が、車窓の風景に盛んに携帯カメラのシャッターを押す。季節のメリハリのある日本の風景、日本の気候を実感する時間。

PhotoPhoto_7まで迎えに来てくれた施主(末弟)の車で新居に向かう。かつて苗床が並ぶビニールハウスの建っていた場所に、白亜の邸宅が威風堂々と建っている。我家のベッドルームぐらいの大きさの玄関を入ると、蔵王連峰を望む明るく広いリンビングルーム。キッチンから続く暖房付きバスルームもビッグサイズ。圧巻は老夫婦の寝室のすぐ隣に設置した引戸式トイレ。これまた巨大。子像でも用が足せるぐらいの大きさ。さらに、全ての廊下は車椅子でも楽に通れる幅を確保。もちろん廊下にも階段にも手摺を設置。全室の壁と床には温かい空気が流れる暖房設備。いずれも年老いた義妹の両親のための設備。そして、寒冷地であるが故、もしもの場合のリスクを考えた配慮。

Photo_8Photo_9寄りばかりの家になってしまうからね」義妹が小さく呟いた。子供のいない弟夫婦。新居では老いた両親と4人暮らし。今は両親のための設備でも、遠くない将来には自分たちにも必要になる。家の周囲には種苗用の畑やビニールハウス。店は住居の目の前。職住接近の、定年のない仕事とは言え、定休日も(事実上)ないたいへんな仕事。そんな家族には「家」という器の存在は大きい。「明るくて、暖かくて、良い家ができて、ありがたいよ」と笑う義妹の母。「元気でこうやって仕事ができるのが一番だ。そして帰ってくれば旨い酒がある」義妹の父が嬉しそうに語る。挨拶もそこそこに老夫妻は家の隣の畑仕事に出かけて行く。働くことが、働けることが老夫婦にとって何より幸福。そんな両親を見守りながら共に暮らせることが、若夫婦にとって何より安心。

Photo_10Photo_11んな弟家族のお祝いにと持参したのが「真寿泉」という富山の銘酒。行きつけの居酒屋「なかむらや」の店主に相談したところ、それならと代わりに仕入れてくれた逸品。めでたい名前と、お祝いに相応しい馥郁たる酒。くきっとした歯触りが堪らない食用菊、赤ネギなど地の野菜がたっぷり入った「芋の子汁」など、珍しくも美味しい弟の手料理に舌鼓を打ちながら昼酒。贈り先の家長たちが飲む前に、味見をしてしまう私は不届き者。しかし、幸せそうな弟の家族を眺めながら飲む酒はしみじみ旨い。遅れて到着した長弟夫婦も合流。兄弟夫婦が揃った。当日は11月22日。兄弟夫婦のそれぞれの組合せが、それぞれ良い夫婦なのだろうと顔を見回す。「なんだか不思議な光景だなぁ」1人娘の妻が呟く。母の死や、お互いの年齢、いろんなことを経て、自然に集えるようになった3組の夫婦。短い滞在時間ながら、温かく、嬉しい祝いの席だった。

・・・「さぁ、次の街へ行くよ!」こんな時の妻の行動は機敏だ。

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