ご近所B級的香港食堂「香港ロジ」神宮前

Photo_2の店に入ったのは偶然だった。友人たちが毎年開催する映像作品の発表会。前衛的で、斬新で、観念的で、早い話が難解な短編を発表する。上映会場は青山だったり、下北沢だったり。いつもどこで見つけてきたのかと不思議に思うような、分かりにくい場所にある小さな会場。今年は北参道にほど近い住宅街。案内状の地図も芸術的で分かりにくい。最寄駅から歩くこと10分余り。のんびり散歩気分で会場に到着。周囲は小さな商店街。くんくん。匂う。匂うぞ。こんな場所にこそ隠れたご近所の美味しい店が潜んでいるに違いない。興味は既に上映会後の食事に向かっている。が、逸る気持を抑えて会場へ。

Photo_4年通り難解で、意味やストーリーを問うてはいけない映像を観た後、友人と立ち話。映像関係の仕事をしている友人の夫は、近々NYCに赴任する予定だという。「住むのはボストンが良いかなと思ってるんですよ」良いねぇ、良いよ、ボストン。無責任に推薦。持つべきものは海外に拠点を持つ友人。彼らが赴任中に、その街を訪ねるという楽しみがある。ただの旅行者として訪ねる街と、住む人と一緒に滞在する街の印象は大きく違う。ぜひ彼らにはボストンに住んでもらい、彼の地で難解な映像表現に磨きをかけていただきたい。その間にサミュエル・アダムズを飲みに訪ねたいものだ。そんな身勝手な会話をしながら会場の近くの商店街で夕飯の場所を探るお気楽夫婦。

Photo_3ると目に付いたオレンジの看板。「香港ロジ」とある。ん、匂う。香港風のメニュー写真入り看板。「香港的士飯(香港タクシー飯)」の文字もある。ここだっ!「ん、良い感じ。ここにしよう!」妻の直感も同様に反応したらしい。店に入ると意外に小奇麗な内装。看板同様のオレンジのベンチシートが良い感じ。店の奥には明るくこぢんまりとした厨房が見える。スタッフは全員中国人らしい。店内はベビーカーを店内に持ち込む若い夫婦、3世代で食べに来ている家族連れなどで賑わっている。香港的情景。「港式椒塩排骨(香港式スペアリブのスパイス揚)」「海鮮粥」など豊富なメニューも嬉しい。価格もリーズナブル。

Photo_5島ビールと点心を中心とした料理をオーダー。ほどなくして運ばれて来たカリカリのニラ饅頭が美味しそう。「豆板醤をいただけますか」辛いもの好きの妻がフロアスタッフに尋ねる。すると、「豆板醤だとしょっぱくなるから、XO醤をお持ちしましょう」と流暢な日本語で対応してくれる。塩卵の粥はないんですかと尋ねると「塩卵の輸入が厳しくなったんで、日本で作ってるんですよ。何日か経ったら出来ますから食べに来てください」とのこと。気配りは香港的ではなく、丁寧な日本スタイル。これまた良い感じ。続いて運ばれて来たトロトロの東坡肉も美味しい。「ここは良い店だね♬」妻の評価が俄然高くなる。うん、確かに気持の良い店だね。また食べに来たいね。ご近所にあったらかなり嬉しいねぇ。店名の通り、香港の路地裏にありそうな、お気軽で美味しい満足店。

気楽夫婦は決して美食家などではない。どこかのガイドブックの☆の数には全く興味がない。他人の評価を参考にすることはあっても、妄信することはない。そこそこの対価を支払えば美味しいものは手に入る。しかし、味だけで満足できる訳ではない。客が店主に気を使いながら食べるなどという店は選びたくはない。自分たちの好きな味が、料理やサービスに相応しい適切な価格で、心地良いサービスと共に提供されれば満足。そこがお気に入りの店になる。「香港ロジ」もそんな店のひとつになりそうだ。B級的香港を味わいたくなったら、また妻と一緒に訪ねよう。

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SINCE 1.May 2005