芝居とドーナツ、妄想と現実『テーブルマナー』AGAPE store

Photoの中には一方的な知り合いがいる。それを普通は、知り“合い”とは言わないのだけれど、身近に感じてしまう余りに相手も自分を知っていると思ってしまう誤解、というか錯覚。例えば、芸能人を街角で見つけると「あら、さんまちゃぁ〜ん♪」とか言いながら肩を叩いてしまう症状。大阪方面のオバちゃんにその傾向が強い。テレビという視る側にとっては日常的存在に毎日のようにその人が現れ、結果、毎日のように(視ている本人にとっては)会っているが為に現れてしまう気持。感情移入してしまい、テレビに向かって相槌を打つという奇態が表出する。自覚もなしに。怖い。…ところが、身体の中に小さなオバちゃんが棲む私にも、そんな感情があった。松尾貴史が主宰するAGAPE store#13公演『テーブルマナー』を観ながら、そんな感情を抑えようとする自分がいた。

Photo_2演は、松尾貴史、最近はすっかり舞台女優の島田歌穂、「猫のホテル」の市川しんぺー、佐藤真弓、D-BOYSの柳浩太郎、そして大和田美帆。さて、私の中の小さなオバちゃんが疼いた出演者とは…。毎朝、薬丸くんと一緒に「…オープンですっ!」とポーズを取る母、野沢直子の迷曲「大和田獏」で有名な?父を持つ、美帆ちゃん。(もう既にちゃん付け!)毎朝見かける母、岡江久美子に親近感を持つが余り、すっかり親戚のオジさん気分。彼女はもう新人ではないし、安定した演技だし、巧いのだけれど、どきどき。ドタバタ不倫劇の役柄に、はらはら。自分の姪っ子が舞台に出ていて、トチるんじゃないかと思ったり、ダメだぁっ!そんなことをしちゃぁ〜っ!姉(島田歌穂)の夫(松尾貴史)になんか騙されるなっ…とか。身体の中のオバちゃんが叫びそうになる。

Photo_3居を観終わり、そんな勝手な妄想の切れ端を抱えたまま、劇場を出る。そう、一種の妄想。しかし、そんな感情移入させる程の芝居だったという言い方もある。でも何かすっきりしない。「面白かったね♪」松尾貴史が主宰するAGAPE storeがお気に入りで、この舞台の演出を手がけるG2の大ファンである妻は満足そう。寒風の中、並んで歩くサザンテラス。季節外れにも思えるイルミネーションがまだ残っている。「あっ!並んでない!」妻が足を止める。確かに時間が遅いこともあり、いつも長蛇の列の「クリスピー・クリーム・ドーナツ」店頭に人影はない。ある年、香港に出かけた際に、日本進出前のクリスピー・クリーム・ドーナツを食べ損なったことを悔やむ妻が決断した。「食べるっ!」晩メシにドーナツ?ビール飲めないし…躊躇する私を余所に、すたすたと店に向かう妻。

Photo_4リスピーの箱を抱えている人を見かける度に「良いなぁ」と零していた妻。しかし、2人共並ぶのは嫌い。確かに今日はチャンスだ。でも、箱で買わなきゃいけないの?「そんなことはないでしょ」短い列であっという間に順番が来る。確かに1個づつ買える。勝手に思い込んでいた私。これも一種の都市伝説。または私の妄想。「ご試食どうぞぉ♪」揚げたてのオリジナル・グレーズドをいただく。これが噂のサービス。妻が支払う間を待ちきれずにひと口。うん、柔らかく、ほんのり温かくて美味しい♬2階のイートインで何種類かのドーナツを食す。甘〜い。2つめで降参。う〜む、これが並んでまで食べたい味か?箱買いは無理。「一度は食べたかったから、満足、満足♪」と妻。不味くはない。しかし、長い行列に見合う味を期待した私の(これも妄想)気持との落差は大きい。妄想と現実のギャップ。「これで香港まで行って食べなくても良くなったから、安上がりだね!」妻の人生は今日もお気楽だ。

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