ショコラの国からのメッセージ『Chocolate Book』by Miki Miyahara

表紙地和男さんという写真家がいる。1995年、『別冊太陽』の特集「香港を食べに行く」に掲載された、シズル感溢れる料理写真に魅せられた。彼の写真には、味も、香りも、一緒にプリントされていた。中華料理好きの2人にとってバイブルのような1冊となった。そして、その雑誌をスーツケースに入れ、お気楽夫婦は初めて香港に旅立った。以来、香港への渡航歴を重ね、すっかり香港好きの2人となった。今年の冬、香港で開催されている東アジア競技大会のスカッシュ日本代表を応援する、という理由を付けて香港に旅立とうとしたお気楽夫婦。「えぇ!また香港行くのぉ?」と周囲の声。そう、この夏に香港を訪れたばかり。結局航空券が取れず、渡航は叶わなかった。けれど、チャンスがあればいつでも暴飲暴食の街に行く心構えはできている。

ノエルリスマスを目前に控えた冬のある日、甘い香りのする1冊の本を手に入れた。『Chocolate Book』というタイトル、チョコレート色の装丁。表紙にはマンディアンの割りチョコ。ナッツの香ばしさが鼻腔に広がり、チョコレートの甘さやほろ苦さが口の中に溢れて来る。そんな写真。ページをめくると、小花柄のクロスが現れる。まずは、テーブルのセッティングから。真っ赤なギフトボックスに収まった、ボンボンショコラたち。カカオパウダーにまぶされた上品なパヴェ(石畳)ナチュール。オレンジの砂糖漬けにチョコレートをコーティングしたオランジェット。美貌のチョコレートたちがページ毎に、ページいっぱいに登場する。食べたことがあるものは味の記憶が呼び覚まされ、ないものは味の想像が広がる。どれも美しく、実に美味しそう。

プリンセス敵な本だねぇ」「ありがとうございます」ミキちゃんと妻が本を手に取りそんな会話をする。実際に美味しかったけど、このクッキープリンセスの写真が実に美味しそうだね。「そうなんです。撮影は大変だったんですけど、どれも凄く良い写真になりました。この写真の欠片ひとつがあるとないとでは、ぜんぜん美味しそうな感じが違いますよねぇ」そう言ってミキちゃんが指差すのは、きれいに並んだクッキープリンセスの列にぽつんと1ヶ落ちている小さなチョコの欠片。なるほど、指で隠すと写真の雰囲気が変わる。チョコレート工房のリアルな絵になる。自分のサイトの写真を自分で撮るミキちゃんの視点は正しい。そんな若きショコラティエンヌは、チョコをデザインするアーティストであり、作品をプロモーションするマーケッターでもある。

サイン本ころで、せっかくだからサイン本にしてもらおうかな。「あぁ、待ってください。どこかにペンがあったと思うんですけど」慌ててペンを探すミキちゃん。ボールペンで良いよ。「あったぁ。じゃあここに書きましょう♪」そう言ってホワイトのインクのペンで、チョコレート色の扉ページにサイン。初めからそこに印刷してあったかのように美しいバランス。さすがアーティスト。ショコラの国からのメッセージをもらった気分。ありがとう。「でも、ウチではこの本を眺めるだけだろうね」と妻。そうなのだ。この本は実はレシピ本。ミキちゃんのショコラやケーキ、クッキー、ジャム、ソースなどのレシピがたっぷり詰まっている。けれど、間違いなくお気楽夫婦にとっては、本来の目的に使われることのない本になる。

べたくなったらこの店まで来れば良いんだし、作ることはないよ♪」と威張る妻。この本はショコラティエ・ミキのカタログ代わり。飽かず眺めて楽しもう♪

■『Chocolate Book by Miki Miyahara』定価1,800円 主婦の友社

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