Archive for 7 月 27th, 2010

そして、神戸「一夜一夜」と、今はなき…。

鉄人28号ビルの街にガオーッ!夜のハイウェーにガオーッ!ガガガガガァ〜ンと弾が来る…ご存知の方はご同輩。アニメ版「鉄人28号」の主題曲。曲の最後には、♪グリコ、グリコ、グゥリィコーッ♫とスポンサー名を連呼する当時のお約束テーマ曲。2009年、その鉄人28号の原作者、横山光輝の生地である神戸に鉄人が降り立った。新長田駅近くの公園に立つ実物大(高さ15.6M、全長18m)の鉄人は、迫力満点。写真の鉄人の足下を通る通行人の方と比べるとその大きさが分かる。鉄人を見るために、わざわざ神戸を訪ねた甲斐があった…のではなく、神戸の街を出張で訪ねた。

ザ・ビーの鉄人のいる長田と言えば、1995年の阪神淡路大震災の際に、大きな被害を受けた街。それが今や大規模な開発が進み、駅前には高層ビルが建ち並び、すっかり復興しているように見える。けれど、地元の人と仕事の話をしていても、つい昨日起きたことのように「この辺はすっかり焼けてしまって…」「仮設住宅がこの辺に立ち並んでいた…」という話題になる。神戸の人にとって、街のあちこちに深く刻まれた震災の爪痕が存在し続けていることが判る。高層ビルの1階には、地権者である商店が入居し、その隣には何棟かの仮設店舗がまだ建っている。

一夜一夜宮の駅に戻り、その日の宿「ホテルthe B kobe」に向かう。リーズナブルで良い宿だ。そして、部屋で三宮での独りメシの店を検索する。三宮には学生時代から憧れていた名店があった。ひとつはキングス・アームスというイングリッシュ・パブ。フラワーロード沿いにあったローストビーフが有名だった店。いかにも神戸らしい佇まいの異国情緒溢れる店だった。そして地元の肉屋が経営するステーキハウス「八百丑」。黒服のお爺ちゃんたちがサービスしてくれたお手頃なステーキが美味しかった。けれど、いずれも今は営業していない。残念。神戸には地元だけにしかない名店が多かった。震災の影響でそんな店のいくつかが消えてしまった。淋しい。

新幹線の楽しみわりに向かったのは「一夜一夜」という、旬の魚の一夜干しを、炊きたての美味しい“銀シャリ”と一緒に食べさせてくれる店。今は東京の丸ビルなどにも出店したけれど、やはり神戸に本店がある店。独りカウンタに座り、ビールを飲み、絶品の干物をいただく。旨い。そして、シメにはぴかぴか炊きたてご飯を、いくら醤油漬けと一緒に。不味かろうはずがない。ホテルまでの帰路、夜の三宮をのんびり歩く。かつての、そして今の神戸を思いながら。…まぁ、ただの酔っぱらいに見えたかもしれないけれど。

日、新幹線に乗り込む前に、妻への土産に神戸スイーツ、自分のために笹すしを買込む。そして、席に着くとビールをぐびり。ひとくち飲む度に、神戸の街が遠ざかる。六甲山ホテル、蛸の壺の明石焼、アンリ・シャルパンティエ(正確には芦屋)のケーキ、苦楽園(正確には西宮)のお屋敷…そして、オチャメだった頃の自分。神戸の記憶が蘇る。

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