幸せ気分をご一緒に♬『幸福ロケット』山本幸久

Happyみ終わった後に、その先に続く物語を読みたくなる作品がある。読み終えたほっこりとした満足感と、もっと読み続けたいと思う欲求。残念ながらもうこれ以上読めないという淋しさ。すっかり感情移入してしまった登場人物のその後に想いを馳せる。彼らのその後のエピソードを知りたくなってしまう。そんな気持が複雑に混じり合う余韻を楽しむ。読後の時間は読書そのものの愉しみ同様に味わい深い時間だ。本を読むなら、読み終わった後に幸せになる方が良い。山本幸久の作品は、まさしくそんな気持にさせる。読むと元気になり、ぽわっと身体が温かくなる。『幸福ロケット』もそんな1冊だ。

Duck人公は小学生たち。11歳の、淡いけれど11歳なりの、拙く純情で、それでもきちんと悩み、打算もあり、深い嫉妬すらする恋の物語。なのに、50代も半ばを迎えたオヤヂがたっぷりと感情移入してしまう。男の子はこんなだったか、ふぅむ女の子はそんなこと考えていたのか。あっという間に山本幸久の術中にハマる。スムースな会話も秀逸だけれど、更に地の文が困る。ツボに入る。視点となる主人公の頭に浮かぶことばが、軽やかな文体で描かれる。人は口に出すことばを一瞬躊躇い、他のことを考えながら発したりする訳だけど、その心の動きを実にリアルに描き出すのだ。

Miharuる日、アヒルバス』や『美晴さんランナウェイ』など他の作品でも同様。主人公の女の子にエールを送ってしまう。健気で可愛い主人公に惚れそうになってしまう。独り言のような地の文で思わずクスッとしてしまう。そう、電車の中で読むには危険。時代小説やビジネス書を読んでいそうな風体のオヤヂが、黄色の表紙のアヒルのイラスト入りの文庫本を読んで微笑む風景はいかがなものか。物語の舞台はフツーの人々のフツーの日常。誰もが経験するであろう世界を描く。しかし、山本幸久の描く登場人物やエピソードが実に魅力的なのだ。後付けで好きになった仕事に頑張ってしまうバスガイドのデコちゃんにも、不器用で空元気な美晴さんにも肩入れしてしまう。あっという間に物語世界にハマり込んでしまうのだ。

MIna白いね。すぐに読み終えちゃうね!本の持ち主に感想メール。実は山本幸久作品は全て借りた本。借りた相手はスカッシュ仲間の小顔美女。「山本幸久いいですよね〜。嬉しい♬」と返信。いつの頃からか、愛読書の貸し借りをするようになった小顔美女とお気楽夫婦。お気に入りの作品を貸して、その感想を書いたブログ記事を紹介する。そして彼女のおススメを借りる。自分たちでは手に取らなかっただろう作家の作品が読める。2人で共有していた読後の幸福感を周囲に広げ、幸せな気分を共有できる満足感。オトナになってから味わう交換日記的な快感♬(笑)

ログで書いてたあの寿司屋に食べに行きましょう!」と小顔美女から嬉しいお誘い。良いねぇ。そんな幸せもおまけに付いて来る。

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