Archive for 2 月 11th, 2013

皇居を眺めるホテル「パレスホテル東京」

AfternoonTeaCocktailTimeラン・バルトは著書『表徴の帝国(L’Empire des signes) 』の中で、東京は皇居という空虚な中心を持っていると記した。西洋における都市の中心には広場や教会があるのに対し、東京の中心は緑に被われ濠で防御された誰からも見られることのない皇帝の住む御所だと。著書の解釈や評価は横に置くけれど、確かに以前は建築基準法の規制により100尺(約31m)以上の皇居を見下ろす高層建築は建てられなかった。不可視の禁忌もあった。というか、今もある。東京海上ビル建築の際に、計画を下回る100m以下に設計変更させられたエピソードは有名。その東京海上日動ビルも、基準が見直された今や丸の内の高層ビル群の中に埋没している。

GuestroomBalconyレスホテルの建替えの際にも景観論争が起きた。実際に宮内庁などとの調整もあったらしい。結果、ほとんどの客室が直接皇居の宮殿方向を向かないような設計になったという。そんなホテルに55歳の誕生日のお祝いにと宿泊した。クラブラウンジで無料サービスのアフタヌーンティをいただきながらチェックイン。屋外のテラス席に出てみると宮殿方向も一望できる。客室タイプは和田倉濠View。とは言え、元々ホテルの名前もPalace(宮殿)でもあるし、客室のウリであるバルコニーに出れば皇居方面はよく見える。このホテルの住所は千代田区丸の内1-1-1。東京のど真ん中。それも内堀通りに面して建っているロケーションを活かさない手はない、ということなのだろう。

Imperial PalaceViewNightView果は大正解。都心のホテルとしては貴重な広いバルコニーからの眺めは、素晴らしいのひと言。景観に配慮して皇居側に面した看板が一切ない丸の内のビル群。和田倉噴水公園に続く皇居外苑。そして広々とした皇居の森と宮殿。森の周縁には汐留、六本木、赤坂方面の超高層ビル群が聳え立つ。東京駅周辺に進出したシャングリ・ラ、ペニンシュラ、マンダリンなど外資系のラグジュアリーホテルに対抗するための差別化戦略としては、この眺望を活かすことは有効。従来より評価が高かったサービスや料理に加え、スタンダードタイプ(デラックス)でも45㎡と広めに設定した客室などの施設面での充実により、先行していた外資系ホテルと比較しても遜色ないホテルとなった。

GymGym2こならずっと走っていられるね♬」トレッドミルで走る妻の声が弾む。エアロビクス系のマシンは大きな窓ガラスに向って設置され、その窓の向こうは桔梗濠と皇居東御苑。緑の向こうには竹橋方面のビル群、北の丸公園に建つ日本武道館の屋根。皇居周回のランナーを眺めながら、室内で快適に走る。気分爽快。決して広くはないけれど、筋トレ系のマシンも充実。スタッフもフレンドリー。国内資本のホテルのサービスは慇懃無礼な方向に傾きがちだけれど、このホテルは丁寧でかつ柔軟な対応が心地良い。まだ改築開業して1年弱だけれど、改装以前から在籍していたスタッフの経験値なのだろうか。スタッフとゲストの間でマニュアル通りではない、自然な会話が成立する。

こに住みたいねぇ」妻が気に入ったホテルに対する最大級の賛辞。コンパクトにまとまった水回りの設備、機能的で広く感じさせるレイアウト。全てのモノが収まる場所にきちんと収まるように、その大きさを考慮して設計され、細部まで目が行き届いている。「リラックスできる実に良いホテルだよね」ホテルマニアのお気楽夫婦のお気に入り度はかなり高い。良いね!日本のホテルも♡

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