Archive for 4 月 7th, 2013

春の旅、春の味「オトナの味覚」

SakuraMochi餅が訴えてきた。食べて♡美味しいの♬。何週か続いた関西への出張。その日も最終目的地は京都。京都伊勢丹の地下食料品売場で帰路の弁当とお土産を探していた。足が向いたのは地元京都の和菓子コーナー。名だたる名店が季節感たっぷりの演出をしている。中でも京都寺町通に本店を持つ「仙太郎」の桜餅は、実にたおやかな風情。関東の長命寺餅よりも関西の道明寺餅が好きな妻へのお土産にと手に取る。東京に戻り、そのまま羽田空港に向い、父の見舞に向うというスケジュール。空港で妻と待ち合わせ、ラウンジでお土産の桜餅を味わう。2枚の香り高い桜葉に包まれた優しい甘さの桜餅。京都の春の味と香りがふぅわり。期待以上の美味しさに2人で完食。

Uruiを見舞った後は、弟2人と共に会食。父の若き日の、子供だった自分たちの、様々な記憶を掘り起こし合う。春になると両親に連れられ山菜を採った。ミズ(ミズナ)、ワラビ、ゼンマイ、コゴミ。採ること自体は楽しかったけれど、その味は子供向きではなかった。例えば、ウルイ。その日も真っ先にオーダーした懐かしの味。湯がいて酢みそと和えた上品な一皿。シャキシャキとした歯応え、酢みそとウルイの香りがほんのり鼻先に漂う。オトナの舌には美味しいけれど、ウルイの酢みそ和えが好き!という子供はいないだろうなぁ。たらの芽を見つけると父は喜んで採っていたけれど、たらの芽の天ぷらもオトナになってから初めて美味しさが分かった。

Kogomi竹煮、コゴミのゴマ和えをつまみに地の酒を飲む。しみじみと父と息子たちの記憶を辿る。その後に受験し直したものの、一時は大学受験を止め、フランスに行くんだ!とアテネフランセに通った長兄である私。次弟は長年勤めた地元の市役所を辞め、バーを開業した。現役で地元国立大に入学したのに自主退学してしまった末弟。その後もいろいろなことがあった。それぞれがいろいろな心配をかけた。今だからこそ話せる互いのエピソードに思わず吹き出したり、頷いたり。そんな想い出は甘いだけではなく、苦みも、痛みもある。けれど、こうやって3人揃って父を見舞うことができることを、何よりも父に感謝せねば。

みや辛みを味わえてこそ、スパイシーな刺激を楽しめてこそ、オトナ。いろいろな経験を得たからこそ、味の深みが分かる。それこそオトナの楽しみ。忘れていた記憶を蘇らせ、新たな記憶を刻み込んだ兄弟の会食。苦いだけだった想い出に甘みや旨味も加えアレンジして、言えなかった当時の気持を披露できるようになった。単純に仲の良いだけの関係ではなかったけれど、お互いに年齢を重ねれば、長い時間を経れば、笑い合うこともできる。許すこともできる。忘れることもできる。春の旅で味わった春の味は、オトナの味でもあった。

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