ねもきちラストダンス♬「広東料理 Foo」

KubotaNemoべることが好きだ。だからこそ、心地良く美味しいモノを味わいたい。お気楽夫婦がこの店は!と思って通うのは“居心地の良い店”だ。日本は海外諸国に比べて概して飲食業のレベル(味とサービス)が高いのに、仕事としては決して高く見られない。一部の高級飲食店は別にして、(広義の)水商売と一括りにされ、軽く見られることが多い。実に心外だ。食に関わる職業は、人を舌で幸福にさせ、サービスで満足させる、素晴らしい仕事だ。演劇や映画などのエンターテインメントやホテルなどにも通じる、消えてしまうモノに対価を支払ってもらうという、評価のハードルが高い職業。モノという形ではなく、美味しさや楽しさという記憶として残る仕事。もっと評価されるべき仕事だ。

Foo3Foo6でこそ有名シェフがマスコミでもてはやされたり、女の子に人気の職業の上位にパティシエが登場するようになったけれど、飲食業界の仕事で生涯を全うするということは、いろいろな意味で今でも厳しい。10代の頃、短期留学先のパリのカフェで働くギャルソン(サービスマン)たちの年齢が高いこと=歳を取っても働き続けられることに驚いた。その頃、ホテルや飲食店でアルバイトをしていた身として、若いアルバイトに頼る日本の環境とは違うのかと不思議だった。同じ頃、旅行先で知った神戸の「八百丑」(*震災後に残念ながら閉店)というステーキ屋さんで働くオジイちゃんたちの、物腰柔らかで、心地良いサービスを目の当たりにして、やっぱり良いなぁと実感した。

Foo1Foo2という立場からの、サービスを受ける側からの視点からではあるけれど、「飲食業界(特にサービスマン)の地位向上委員会」的なスタンスで外食をしてきた。だからこそ、評価という偉そうな物言いではなく、好きだという個人的な言い回しで、拙いブログ記事で飲食店を紹介してきた。ネガティブな表現で飲食店を否定することを避け、嫌だったら行かなければ良いだけ、というポリシーをずっと持ち続けている。好きな店を教えたくないのではなく、ぜひ行って欲しい、一緒に行こうよ!というノリ。飲食店(だけではないけれど)は、圧倒的なスピードで淘汰される。長く続けることはとてもたいへんだ。だからこそ贔屓の引き倒しにならないように応援したい。そんな気持。

Foo5Foo4陰神社前「広東料理Foo」のサービスマン、ねもきちこと根本氏が引退してしまった。個人的な事情で、飲食業界の勤務体系では仕事が続けられなくなってしまったという。とても悲しく残念なできごとだ。ずっと客とサービスマンとしての関係を続けていたかった。パリのギャルソンのように、八百丑のオジイちゃんのように、あるいは新しく進化したサービスマンとして、この店で会えると思っていた。同じ料理を食べても、接客によって味は変わる。好みを知ってもらえば、料理や酒の選択も、安心して身を委ねることができる。巧く嵌ったときは、料理と酒のマリアージュだけではなく、客とサービスマンのマリアージュが生まれる。彼はそんなサービスマンだった。

3月2日、サービスマンねもきちの最終日。ねもきちファンの友人たちを誘い店に向かった。いつものように、にこやかに迎えられ、美味しく料理をいただき、楽しく飲んだ。ねもきちはラストダンスを軽やかに踊っていた。楽しそうで、ちょっとだけ淋しそうで、名残惜しそうに。やっぱりサービスマンは彼の天職だ。

2008年夏、ミッドタウンの「SILIN」で出会ったねもきち。初訪問の際、的確で柔軟で、しっかりとした知識に裏付けされ、この仕事がそして料理が大好きだという気持が伝わる心地良い接客に、すっかり惚れてしまった。以来6年の(あれ?まだ6年か!)短いお付き合い。SILINは年に4回ほど、季節毎に訪れる店だったけれど、Fooは(六本木に比べて)お手頃な分、月に1度ぐらいのペースで通わせてもらった。ねもきちのおかげで、お気楽夫婦の食の世界が広がった。ねもきちが辞める前にとFooにご一緒した福井のK夫妻のように、新たなネットワークも繋がった。感謝。

ありがとう!ねもきち♡またいつかどこかの美味しい店で、(客同士ではなくね)会えると良いね♬

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