Archive for 3 月 22nd, 2014

加賀百万石のエネルギー「金沢市」

KanazawaStationTsuzumiMon沢駅に降り立った時、その駅舎の斬新なデザインと偉容に驚いた。新幹線沿線各駅の画一的なデザインの駅舎に慣れた目には、実に新鮮だった。東京駅の丸の内(赤レンガ)駅舎、巨大な吹抜けと大階段が印象的な京都駅などを除けば、どの駅に到着したのか分からない程。機能優先なのかもしれないが、残念ながら旅情を誘うものではない。2005年に完成した金沢駅は「おもてなしドーム」と名付けられた巨大なガラス製のドームと、東口に向かって建つ木製の「鼓門」が印象的だ。どんなデザインにも賛否両論はあるだろうが、個人的には好印象。門を挟んで、左右にはバスターミナルとタクシー乗り場のロータリーが配されている。これも実に効率的でデザイン的にも美しい。

BukeYashikiHigashiChayamachi沢市は加賀百万石の城下町。前田家の居城だった金沢城を中心に栄えた北陸地方最大の都市。現在の人口は46万人と意外なほど少ないけれど、江戸時代には、江戸、大阪、京の三都と名古屋に続く大都市だったという。江戸時代、加賀藩102万5000石という石高は大名中最大。その潤沢な財政を活かし、加賀友禅、金沢漆器、金沢箔などの独自の伝統工芸品や、加賀宝生(能楽)などの伝統文化が生まれた。年間760万人が訪れる観光都市でもある金沢の観光資源は、金沢城、金沢城の庭園として造られた兼六園、江戸時代の遊郭に由来する茶屋街、武家屋敷跡など、加賀藩の遺産とも言えるものが多い。その歴史的遺産が第二次世界大戦の空襲を免れたことも幸いしたと言える。

MusiumPool沢の魅力は“古(いにしえ)”だけにある訳ではない。新しい金沢の顔もまた魅力的だ。出張先での仕事を午後に終え、ランチも取らずに向かった場所がある。2004年に開館した「金沢21世紀美術館」だ。兼六園に隣接した芝生に被われた敷地の中央に、総ガラス張りの円い建物。芝生広場には恒久展示物があり、自由に見学できるだけでなく、体験できる。例えば「カラー・アクティヴィティ・ハウス」という作品は、シアン、マゼンダ、イエローのガラスの円い壁の組合せ。3原色の組合せで、角度によって多彩な色彩が生まれ、その迷路のような作品の内部で記念撮影もできる。あるいは12個のチューバ状の管(2個づつ対になって繋がっている)が埋められており、上手く選べば遠く離れた2人で会話できるという、オトナの子供心をくすぐるアートもある。

GuideMapSign沢21世紀美術館で最も有名なのは「スイミング・プール」という作品。地上からはプールの底に人がいるように見え、地下からは地上の人を水中から見上げるような感覚を味わうことができる。私が見たかったのもこの不思議なアート。ところが、展示作品の入替期間のため、無料ゾーンにしか入場できないと言う。仕方なく無料ゾーンの地上から覗くが、階下に人がいなくてはただのプール。残念。気を取り直し、遅いランチを食べるために中心部に向かう。金沢の街のあちこちには現在地が示されたMAPと、主要観光地の案内板がセットで設置されている。デザイン的にも優れており、実に分かり易い。路線バスでも停留所付近の映像付き観光ガイドが流される。これも好印象。

2015年春、北陸新幹線長野-金沢間の路線が開通予定。駅前の再開発も続き、2014年の公示地価の上昇率も商業地として全国4位という報道があった。北陸では金沢が一人勝ちになると隣県では危惧する向きもある。確かに、街が持つエネルギー、土地の力を感じる街だ。江戸時代から綿々と続く加賀百万石の歴史が現在の街並に溶け込み、新旧の優れた建築デザインがしっくり馴染んでいる街だ。久しぶりに訪れ、歴史ある街の文化の分厚さを実感し、その街の香りを味わった。

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