ここは中国?ポルトガル?「澳門、Macao、マカオ」

Tarochonfun港島のフェリーターミナルから1時間。15分おきに出航するカタマラン(双胴)の高速船は、居眠りする間もなくマカオに到着する。10度以上香港を訪れたお気楽夫婦なのに、なぜかマカオは初訪問。1997年にイギリスから返還された香港に続き、1999年にポルトガルから中国の特別行政区となったマカオ。だから香港-マカオ間の移動もパスポートが要る。因みに、そのフェリーターミナルを比較するだけで2都市の違いが分かる。圧倒的にマカオが清潔で、香港は猥雑。2006年にカジノの売上でラスベガスを抜き、世界一のギャンブル都市となったこと、1人あたりのGDPが世界屈指の水準であることが要因なのだろう。1970年代前半に、沢木耕太郎が『深夜特急』の旅の中で、香港滞在中に訪れ、「大小」というギャンブルで大負けをしてしまった街でもある。

senado squareMercadores宿泊先は「マンダリン オリエンタル マカオ」。マカオでは珍しく、カジノを運営していないラグジュアリーホテル。雨模様ということもあり、チェックインしてすぐにホテル内の「ヴィダリカ」でランチ。ポルトガル料理と中華料理のメニューがあるメインダイニング。これが正解。アヒルを模したタロイモ揚げ、焼豚の腸粉、フカヒレのスープ餃子など、どれも優しく上品な味付けで、実に美味しい。「これは当りだね」妻もご機嫌。アヒルを頭から齧りながら、その日の行動計画を話し合う。基本的には2人とも観光にはほぼ興味がないながら、セナド広場と聖パウロ天主堂ぐらいは行こうか、ぐらいのノリ。タクシーに乗って街の中心部に向かう。ところがチャイナパワーを甘く見ていた。週末ということもあり、街は竹下通り並みの激混み。観光中止!撤収!

casinoMGMパウロ天主堂は諦め、人混みを避けながら街を彷徨う。ポルトガルを感じさせる「大堂(カテドラル)」や、香港と変わらぬ野性的な水産物市場などに出くわし、アズレージョというポルトガルの装飾タイルを使った住居表示(ポルトガル語と中国語表記)を眺め、タイル敷きの美しい歩道に感心する。タクシーを拾おうと乗場の列に並び観察すると、割り込む人もいない。もはや中国人の国なのに、まだ中国ではなく、ポルトガルの香りも残る。ホテルに戻り、スパの予約。これがお気楽夫婦流。外出は終了。とは言え、予約した時間までお隣の「MGM」のカジノでも見学しようと出かける。これがすごい。施設の中に巨大な吹き抜け、謎のオブジェ、魚が泳ぐ巨大な水槽。カジノにフリーパスで潜入。賑わう施設にびっくり。ここでもチャイナパワーに圧倒される。

goosesweetsぅ」。カジノの中で写真を撮っているところを係員に見つかり、中国語で(たぶんプライバシー保護の観点で写真は撮ってはいけない)注意され、大丈夫!大丈夫!(と、理由になっていない日本語で堂々と)答え、這々の体でホテルに逃げ帰る。カジノもショッピングモールもない我がホテルは安息の場所だ。スパでリラックスし、平静を取り戻し、いざ夕食へ。チャイナパワーに辟易としたためホテル内の「ヴィダリカ」再訪。ランチは中華料理だったから、ポルトガル料理でも、と思いつつ中華メニューを選んでしまう2人。大陸人は好きになれなくても、中華料理は嫌いになれない。大好物のローストダックの梅ソース、芥蘭(カイラン)のオイスターソース炒めなどを堪能。旨し。

LouisVittonPonte食の後、ホテルの外に出て夜景鑑賞。MGMのショッピングモールのルイヴィトンの青に目が眩み、遠景の「グランドリスボア」の異形に慄く。沢木耕太郎がカジノで大敗した「リスボアホテル」の新館であり、マカオタワーと並ぶ街のランドマーク。街のどこから見ても目立ち、かつ周囲とは調和しない独特の存在感があるフォルム。このセンスは上海の摩天楼群にも似て、金ぴかな現代中華文化の香りが漂う。観るだけで落ち着かず、妙な圧迫感を感じてしまう。ホテルに戻り、バスタブにお湯を張る。ふぅ〜。全面窓のビューバスに身体を浸し、外を眺める。タイパと結ぶ3本の橋を行き交う車、マカオタワーが闇に輝く。穏やかな眺めにホッとする。それに、香港と同様にfacebookも制限なく使えるし、香港にも似ているが、マカオはマカオだなぁとしみじみ。

の街は、中国であり、ポルトガルであり、何よりもマカオ。そう言えば、香港に向かうANAの機内で「私は香港人です。まだ日本語上手ではないので…」とCAが言っていた。彼女はホンコニーズであり、チャイニーズではないのだ。たぶんマカオも同様。中国から分離され、独自の文化を育み、本土とは違う人が生まれた。返還後も50年間は現状保全を認められたが、じわじわと制限範囲が広がっているらしい。一国二制度が香港にもマカオにも適応されているが、果たしていつまで続くのか。あるいは不健全な本土の一党独裁がいつまで続くのか。「香港やマカオが中国になったら、私はもう来ないかなぁ」妻の言い分は一貫している。Agree!

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