Archive for 11 月 7th, 2015

建築うんちく大阪の旅『ぼくらの近代建築デラックス!』

MakimeKoukaido城目学という作家が好きで、デビュー作『鴨川ホルモー』をはじめ『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』などの地元関西を舞台にした奇妙奇天烈な作品群を読んできた。現実のすぐ裏にある(けれどある訳は無い)不思議な世界が拡がる独特な作風。そんな彼と私の共通項がある。「渡辺篤史の建もの探訪」というTV番組♡LOVEなのだ。彼のエッセイ集『ザ・万歩計』の中で、実に滔々と渡辺篤史(のTV番組)に対する愛を歌い上げる。このテーマではかつてブログ記事を書いたのでそちらに譲るが、そんな建築物好きの万城目学が、門井慶喜と共著で出版した本がある。『ぼくらの近代建築デラックス!』という1冊。関西出身の2人の作家が繰り出すボケ突っ込みとウンチク合戦が実に興味深く、アカデミックではない分気軽で楽しく、妙におかしい。

NomuraShibakawa築に関する本なのに、この本を抱え“建もの探訪”したくなる街歩きガイドでもある。旅に出たくなる。…ということで、旅に出た(笑)。この本、「大阪散歩」「横浜散歩」と、街ごとに近代建築を訪ねる構成になっており、第1章が大阪、第2章が京都。であれば編集方針通りにと大阪の近代建築の宝庫、中之島と北浜を訪ねた。梅田から御堂筋を南下し、大江橋を渡る。右手に日銀大阪支店を眺め、大阪市役所、中之島図書館と大阪を代表する近代建築の横を通り、辰野金吾が設計した(東京駅も!)大阪市中央公会堂に到着。周囲に建物がなく、全容を見渡せる分、赤レンガに白い花崗岩という壮麗な“辰野式”の建物の中でも特筆すべき美しさ。続いて難波橋を渡り、北浜の近代建築群を探訪。掲載されている「高麗橋野村ビル」「芝川ビル」などの建物以外にも、少彦名神社(神農さん)の社務所になっているビルなど、いろいろ発見があり実に楽しい。

NightViewLounge刻、宿に戻り、窓から先刻までひとり彷徨っていた街を眺める。訪ね歩いた近代建築群の姿は、現代の高層ビル群の林の中に隠れて、残念ながら見えない。遠く阿倍野の「ハルカス」やクラゲのような大阪ドームを望み、眼下の「フェスティバルタワー」と建築中の朝日新聞社のビルを眺める。パソコンでGoogleマップを開き、ビルの名前を確認する。都内でもすっかり追いつかなくなったけれど、街歩きのランドマークとなる高層ビルができる度に、名前と立ち姿を(老朽化しつつある)記憶中枢にインプットする作業もお気に入り。高いところに上り地図を確認し、街を歩き地図をチェックする。自分の頭の中のMapが補足され、地図なしで街を歩けるようになるのが何よりも嬉しい。ホテルのラウンジでワインを飲みながら、眼下のビルや通りの名を復唱する。

TenpeiShinchiとくち餃子が良い!」仕事を終え合流した妻に、うどん、ネギ焼き、餃子など、大阪の粉もんの中で何が食べたいかを尋ねると、迷いなくすぐに答えた。ラウンジで乾杯した後に街に出かける。夜の街歩きの手始めに「大阪駅前第1ビル」から第3ビルまで続く地下街(梅田のラビリンス!)を歩き回り、北新地に向かう。横断歩道で信号待ちの人々の中に、すでにご出勤風情のキレーなお姉さんたちが混じる。ネオン瞬く小路に入ればいかにも同伴だろうと思わしき2人連れが何組も。そんな街の片隅に(ほんとに分かりにくいほど、新地の端っこに)「天平」という小さな店がある。メニューは餃子と漬物のみ。料金は不明瞭。どこにも餃子はいくらかは書いていない。餃子を2人で30ケとお願いすると、普通1人20ケはいけるよと返されるが、少食の2人はそれで良し。

リパリだし、ちょっと辛めで美味しいね」妻もお気に入りの模様。ワンタンを焼いたような小ぶりの餃子をあっという間に平らげ、お会計をお願いすると、最初は3,600円と言われたのに、間違ってましたわと3,000円に変わる。ふふふ、やっぱり不明瞭。それもまた楽し。「ウチも同伴出勤に見えるかな」クラブ、ラウンジ、スナック、バー、看板の店名を眺めながら、のんびりと新地の街をそぞろ歩くお気楽(同伴)夫婦。夜の街探訪もいとをかし。

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