本との出会い、人との出会い「みをつくし料理帖」他

Book1Book2との出会いは楽しい。けれども、難しい。ふとした偶然もあれば、自ら選んで、探して、出会うこともある。今年で14回目となる、全国の書店員が選ぶという主旨の「本屋大賞」も本を手に取るきっかけになる。第2回、2005年の本屋大賞恩田陸『夜のピクニック』も受賞して紹介されたのがきっかけ。読み始めると、読んでいる最中なのに読み返したくなり、読み終えるのが惜しくなる。そんな作品だった。以降の恩田作品はほぼ読破。2017年2度目の受賞『蜜蜂と遠雷』の文庫化(ハードカバーはNGというのがウチのルール)が待ち遠しい。本屋大賞作品はほぼ読んでいるが、2014年の和田竜『村上海賊の娘』は、独特の物語世界に引き込まれ一気読みだった。和田竜の『忍びの国』も好きな作品。こっそり映画も観に行こうかと画策している。頼むよ!大野くん。

Book3Book4屋で偶然手にとって読んだ作品から、すっかりハマった作家もいる。ヘタウマな表紙イラスト、とぼけたタイトル、変わったペンネーム。小川糸の最初の1冊『食堂かたつむり』は、ジャケ買いだった。かつてご近所に住んでいたことも知り、すっかりお気に入りの作家になり、文庫化された作品は全て読破。偶然の良い出会いだった。友人に勧めらて読み始めたのはロバート・B・パーカー。スペンサーシリーズ第9作『儀式』を1984年に贈ってくれたのは、今は某大手出版社の役員、アテネ・フランセ時代のクラスメイトだった。すぐにファンになり、全作品を読んだばかりか、1999年には小説の舞台になったボストンを夫婦揃って訪ねたほど。パーカーが亡くなり、2012年に刊行された最後の作品まで、ヴァカンスに持参して新作を読むのが楽しみだった。

Book5Book6を交換しながら読んでいる友人から勧めらて、現在進行形でハマっているのが、高田郁『みをつくし料理帖』シリーズだ。彼女のセレクトとしては珍しい時代物。友人との間では、“食”に関する物語がブームだから、納得の選択でもある。「澪ちゃん(主人公)は、すぐに次が読みたくなっちゃうんです」と、一気に5冊も貸してくれた。舞台は江戸。大坂出身の澪が「つる家」という料理屋を切り盛りする物語。澪の生い立ちを知り、人情味溢れる周囲の人々に、辛い出来事も起こり、電車の中で読み始めた私は一気に江戸にタイムスリップ。確かにすぐに続きが読みたくなる、電車に長く乗っていたくなる物語。「所々泣けちゃうので、電車気を付けてくださいね」と友人からメッセージ。…そんな助言にも関わらず思わずほろり。「不意に泣かせるんですよね」御意。

Book7Book8理帖と副題にある通り、巻末には何とレシピ付き。季節ごとに食材を吟味し、旬の料理を拵え、庶民に手の届く価格で供する「つる家」の女料理人、澪(みお)。現在と比べれば調理器具も食材の保管方法も不十分な江戸にあって、彼女の工夫や発想が見事なのだ。そして味に厳しい江戸の客たち。まずいモノに対する評価は容赦ない。けれど、気に入った時に嬉しそうに食べる姿は、素直でストレート。そして、旬のモノに弱く、季節限定に弱いのは今と同じ。某ガイドブックの星のように、当時も料理屋の番付表があり、店も客も一喜一憂させられるのも現在と一緒だと笑ってしまう。そんなシリーズは全10巻で完結とのこと。現在3巻の途中。まだ7巻もあるぞと楽しみにし、7巻しかないのか大事に読もうと寂しくもなる。魅力的な人気(何と1巻は49刷!)シリーズだ。

書は人の幅を広げる。自分で選ぶだけでは手に取らないであろう作品も、友人から勧められるというきっかけがあれば、出会うことができる。友人との交換日記ならぬ、交換読書ができるのは幸福なことだと思う。購入する作家の担当を分担する。お互いに長い感想を言い合う訳でもなく、短いコメントで次もまた貸して!と暗黙の了解ができる。そして、読書の傾向が近いとは言え、全てが相手に合うわけでもなく、「何度かトライしたけど、ダメでした!」とコメントが返ってくる場合もある。それもまた面白い。本との出会いは、人との出会いでもあるなぁ、と友人に感謝。

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