婿殿も修行中!「かみのやま温泉 古窯」

菩提寺の本堂弟の義父が急逝したのは昨夏。交通事故による突然の訃報だった。ところが、お気楽夫婦はヴァカンスの真っ最中。長弟からの葬儀の連絡も空しく、一切の連絡が取れない状況の2人。帰国後、メールと留守番電話のメッセージに慌ててお悔やみの連絡。失礼極まりない長兄だった。その非礼のお詫びも兼ね、1周忌を迎える今夏、お気楽夫婦は弟の住む温泉街に向かった。前夜の深酒の後遺症(二日酔いとも言う)に悩みながらも、たっぷりの朝食を取り、マスターの運転で月山を越える高速道を走る。国交省の施策“高速道無料化社会実験”の名の下にタダになった山形自動車道。内陸に向かうルートはスムース。対して、夏の海に向かう対向車線の交通量は、以前と違い渋滞気味。社会実験の結果は明白。

法圓寺定通りの時刻に義弟の一族が待つ新居に 到着。婿養子として、農家に種苗などを販売する商家に嫁いだ末弟。朝早く起き、農家や家庭菜園を行う地元の爺さん婆さん相手に、懸命に商売をしてきた。けれど、元気に野良仕事をこなす義父の跡を継ぐのは、まだまだ先だと思っていただろう。地方のムラ社会での家長の役割は、多方面に渡る。昨夏の葬儀では、会ったこともない親族、檀家の役員などへの対応に苦労したという。弟の住む街は、内陸部の温泉街。生家のある海辺の街とは“ことば”が違う。極端に言えば、お互いのことばが通じない。地元の国立大学に進学した弟は、長い時間をかけて“ことばの壁”も乗り越えた。親族が集まるリビングルームでは、異国のことばが飛び交っていた。「…全くことばが判らない」妻は目を回す。けれど、末弟は2カ国語を実に器用に使い分ける。

上山温泉の名湯宅での一周忌法要を終え、向かった菩提寺は「法圓寺」という古刹。山門から本堂を眺める。高く聳える松、地面に並行して枝を伸ばす松、それぞれがきれいに枝が整えられている。立派な鐘楼まである境内の隅々まで、手入れの行き届いていることが判る。本堂での法要を待つ間、これまた堂々たる2間続きの座敷で一休み。雪見障子越に中庭が見える。池や庭木のバランスが素晴らしい。思わず廊下まで出て庭を眺める。う〜ん、これは見事。座敷に戻り、ご住職に庭の素晴らしさをお伝えすると、剪定した樹にとってはもう少し慈雨が必要なのだけれど、と穏やかに微笑まれる。その後本堂で法要。本堂の設えも、欄間の彫刻も素晴らしい。良いお寺さんだ、善いご住職だ。そして、善い檀家衆なのだろう。

展望風呂要が済み、お斎の会場「日本の宿 古窯」に向かう。旅行業者が選ぶ日本の名旅館上位の常連、地元住民自慢の宿でもある。立派な宴会場で、豪華な料理が並ぶ。施主として末弟が挨拶。滞りなく、それでも緊張しながら。会場の空気が硬くなる。その後をご住職が穏やかに挨拶を引き取り、訓話をいただき、和やかに会食が始まる。ふぅ。ほっとする。思えば、会場内の親族の中でも若手となる末弟。早過ぎた家督の相続。家を継ぐ者への試練でもあり、教育でもある。都会にはなくなってしまった、地域の縦社会の断片。一人前の大人になるための通過儀礼。婿殿はこんな世界で、こんな社会で頑張っているのだ。頑張れ!婿殿!Go Ahead!

風呂入っちゃおう」妻の提案に頷く。帰りの新幹線の時間を言い訳にお斎を中座し、名旅館自慢の大浴場に向かうお気楽夫婦。日中の男性風呂は最上階の展望風呂。誰もいない湯船に身を浸す。ふぅ、良い旅だった。お祝いも、弔いも無事に済ませた。それぞれが地域に根を張る弟たちを見届けた。「なんだか、3人とも似てるよね」妻が新幹線のシートに身を沈めながら呟いた。

マスターは修行中「Bar LAPITA(ラピタ)」開店!

庄内空港着陸前の海岸線ハーバーを背に暑の夏にも慣れかけた7月末、嬉しい便りが届いた。故郷で暮らす弟から、市役所を辞めて開店準備してきた店ができるという挨拶状。店の名前はLAPITA(ラピタ)。宮崎駿監督の作品『天空の城ラピュタ』ではなく、南太平洋の海洋民族の名前であり、小学館から発行されていた(現在は休刊)雑誌の名前にちなんでいるという。雑誌ラピタのコンセプトは「大人の少年誌」だった。休刊中というのが縁起は悪いが、弟らしいネーミング。さっそく開店祝いを手配しつつ、お披露目をしてもらう日程調整を開始。そう言えば、昨夏に亡くなった末弟の義父の一周忌にも出席しなければ。そうか、いっそ1泊2日で、祝いと弔いの旅にしよう!

ステージ付きCDラックる週末、お気楽夫婦は慌ただしい旅に出た。羽田空港では開業間近の国際線ターミナルや、4本目のD滑走路を眺めながら飛び立ち、庄内空港では晴天に恵まれたおかげで、南の島のリゾートのような青く光る海岸線を眺めながら無事に着陸。そして、迎えにきてくれた弟と共に、生家近くにあるヨットハーバーを訪ね、母の墓前に花を手向けた。さらに、川遊びで身体を冷ました後にビールをきゅっと飲み干し、スタンバイOK。マスター(弟)の運転で宿泊先のホテルに向かう。お気楽夫婦をホテルに降ろすと、マスターは開店準備のために店に向かう。

カウンタ待たせしました!」義妹と姪がホテルに迎えに来る。店の前にはお祝いの花と「本日貸切」の案内板。階段を上がり、ドアを開ける。ほほぉ。想像以上に広い店。いわゆる“居抜き”で借りたため、以前の経営者の嗜好で揃えたソファ、シャンデリア、内装はカラオケスナック系。大きなモニターや壁に飾られたLPレコードのジャケット、棚一杯のCDなど、マスターの趣味の品々が溢れる。店にやってきた客は、古い雑誌コレクションの前で、ジャケットの前で、CDラックの前で、それぞれの思いで佇む場所らしい。スナック系の内装と、’70年代フォーク&ロック、’80年代POPSのBGMがまだ溶合ってはいない。けれど、これは間違いなく弟の城、マスターの部屋。「Common a my room!」と招かれ、やってきた彼の友人の気分。

サッカー観戦用モニター2人が贈った胡蝶蘭の鉢の傍、ボックス席のソファに座り、改めて店内を眺める。カウンタの中では、まだプロになりきっていないマスターがぎこちなく微笑む。「開店準備で10kg痩せたんだ。やっぱり諸先輩に聞いた通りたいへんだった」と、それでも満足げに語る。彼の一番の財産は、役所勤めだった頃の人脈。開店から1週間程、毎日がお披露目の貸切営業だったとのこと。市長をはじめとした役所時代の諸先輩、同僚、高校時代の同級生、後輩、バレーボールのコーチをしていた頃の教え子たち、その父兄…。地元に密着した生活をしていたからこそ、広がった人脈ネットワーク。そんなお世話になった方々の来店が一巡した頃、本当の勝負になる。知人友人相手に修行中のマスターが、プロになった頃に店の展望が開け…て欲しい。

い店だね」地元名産のだだ茶豆を齧りながら、お酒を飲めない妻が呟く。うん、良いスペースだ。自分で注いだ生ビールを味わいながら、私は思う。このスペースを愛してくれる客を相手に、良い意味でゼータクな商売をすれば良い。客商売はたいへんだけど、経営はかんたんではないけれど、組織の中での煩わしい気遣いはいらない。好きなだけ仕事を続けることができる。好きな街で仕事ができる。そんな道を、そんな仕事を選んだマスター。Go Ahead!

夏はカレーだ!「レトルトカレー」

カレーの本棚らばがに、ほたて、牛タン、さくらんぼ、お茶、名古屋コーチン、京野菜、じゃこ天、牡蛎、完熟マンゴー、ゴーヤ…さて、これらは何でしょう?日本各地の名産?半分正解。実は、これ全てご当地レトルトカレーの具材。それ以外にも、トドカレー(缶入り)や、全国的に有名になった横須賀海軍カレー、地元老舗ホテル(例えば、函館五島軒、横浜のニューグランド、箱根の富士屋ホテルなど)のレトルトカレーなど、各地で話題のカレーは枚挙に暇がない。日本人の食生活に欠かせないカレー。独自の進化を遂げ、それぞれの地方でオリジナルのカレーが新たな名物となっている。

全国各地のレトルトカレーんなレトルトカレーが家庭に普及したきっかけと言えば、お馴染みの大塚食品のボンカレー。発売された当初は、量が少なく、具材も小さく、やはり母が作ってくれたカレーの方が旨い、と思いながら食べた(当時は子供だった世代の)方々も今や日常的に利用しているはず。そして、発売当初から食品としてだけではなく、日本のレトルトカレーの王道を作った(と私が勝手に思っている)という功績がある。それは、ブック型のパッケージ。スペースを取らず保管しやすいし、販売する側にもメリットがある。北野エースという店では日本各地のレトルトカレーを、圧倒的な種類を揃え、常時販売している。その陳列棚はまるで本屋か図書館。

サグチーズカレーマトンカレーる夏の夜、食欲が無い(お気楽夫婦は食欲はありありだけど)時はカレーだ!と思い立ったお気楽夫婦。2人で食べるにはレトルタカレーだ!ということで、近所にできたカルディ(レトルトカレーの種類が豊富!)でレトルトカレーをゲットすることになった。ところで、妻はご飯よりもパン好き。カレーを食べる時でもご飯ではなく、ナン(クスクスでも可)をチョイス。従って、選ぶのは必然的にじゃがいもをはじめとした具材ゴロゴロの典型的日本のカレー「カレー曜日系」ではなく、フォンドボー系の欧州カレーでもなく、ナンに合わせるにはインド系の本格カレーということになる。うむむ、そんなカレーが果たして…あった。2人が選んだのは、かなり辛そうなマトンカレーとサグ(ホウレンソウ)とチーズのカレー。いずれも本格的で旨そうだ。

マトンカレーを盛り付けるサグチーズカレーを盛り付けるにお湯を沸かし、レトルトパックを投入。冷凍のナンをオーブンレンジで温める。料理とも(当然ながら)呼べないお気楽夫婦の夕餉の支度。そこに添えるのは、お気楽妻にやってきたブーム、新鮮野菜のピクルスと生野菜のサラダ。熱々のカレーをナンに乗せてパクリとひと口。うっ、旨いっ!なぁんだ、本格インド系カレーも、レトルトでOKじゃないか!ナンもこれぐらいの味であれば充分だ。おっ!キャベツにサグカレーを乗せて食べると、これまた旨いじゃないか!う〜ん、これは新鮮な味の組合せ!これは旨い!と、(元々食欲不振ではなかったけれど)2人の食欲増進。やはり夏はカレーだ!

大阪のソースころで、前述の北野エース、レトルトカレーだけではなく、品揃えが面白い。例えばソース。大阪人は数種類のソースを使い分けるとは聞いていたが、実物が並んでいるのを見るとある種の感動を覚える。たこ焼き、お好み焼き、焼きそば…それぞれ使い分けなくてもええやないかいっ!となぜかインチキ大阪弁で突っ込みたくなる。ある意味、日本人のデリケートな味覚の象徴。これからの日本の観光資源、輸出品は“日本の食文化”だっ!と叫びたくなる。「…それは、きっと暑いからだね。何だか記事も散漫だよ」カレーを食べても汗ひとつかかず、冷静な妻が呟く。はい。確かにテンション上がってました。カレー食べて、ぽたぽたと汗かいてました。でも、やっぱり、夏はカレーだ!よね?

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SINCE 1.May 2005