秋味、ねっとり、上海蟹「萬来軒」(前編)

p1000外食三昧、中でも中華料理好きの夫婦が住む街には、なぜか中華料理の店が多い。昔ながらの中華定食系、北京家庭料理、広東&香港系、台湾小皿系、ヌーベルシノワーズ、鉄鍋餃子などの、バラエティに富んだ中華料理激戦区。店の数も駅周辺だけで20軒以上。その中に中華三昧夫婦が足繁く通う店が2つある。駅北口の四川料理、萬来軒。駅南口の広味坊。2人はそれぞれ、北口中華、南口中華と呼び、「今日は北口?南口にする?」と使い分けている。

北口中華、萬来軒は2人の謂わば“台所”。自分たちが頻繁に通うだけではなく、友人たちと一緒にわいわいと楽しむ店。年に何回か、いろんな理由を付けて集まり、本格四川料理を味わう。秋のテーマは(なぜか四川の店なのに)お約束の“上海がに”。なにしろ中国では、「不食大閘蟹 何叙人生(上海がにを食べずに人生を語るな)」と言うらしい。いつもながら中国人の表現は大袈裟だけど、確かに美味しい。

この店で毎年オーダーするのは、独特の香りとねっとり濃厚な蟹味噌と内子が堪らないメスの“蒸し蟹”。そして、活きたまま紹興酒の中に1週間ほど漬け込む“酔っ払い蟹”。そんな秋限定、季節の味を今年も大勢で出かけて食した。中国名、大閘蟹(ダマチャアシェ)、学名:中国モズクガニが柿色に蒸されテーブルに登場する。賑やかだったテーブルの全員が息を呑む。携帯やデジカメで写真を撮りまくる。披露宴のケーキ入刀のよう。オレンジ色の味噌が挑戦的に私の視線に絡みつき、微笑む。箸でつまみ、一年ぶりの味を舌に乗せる。・・・うっ、旨い。「今年はLLサイズ仕入れたから、去年より100円だけ上げて1,900円にしたんですけどねぇ・・・」って、おじさんたら商売っ気ゼロ。蒸し蟹5ハイ、酔っ払い蟹2ハイ、中国山椒の麻婆豆腐、四川水餃子、マコモ筍とイカの炒めもの、その他たっぷり8人で食べて飲んで30,000円強。1人4,000円弱!安い!

同じ上海蟹でも麻布十番の「中国飯店富麗華」ではメス蟹200gで5,000円、オス蟹250gで5,500円。(値段相応に、丁寧に身をほぐして供され、自分の手は一切汚れない)蟹味噌と卵白炒め、蟹肉入小籠包などを、小食の二人で食べて30,000円弱だった。・・・萬来軒のおじさんに言ったら卒倒しそうな料金。(続く)

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