この作家のホームグラウンドはボストン。1973年に始まった「スペンサー シリーズ」も、「ジェッシー・ストーン シリーズ」も、「サニー・ランドル シリーズ」も、主人公はボストンに住んでいる。そして主要な脇役たちが各シリーズに横断して顔を出す。これらの作品の著者であるロバート・B パーカーの愛する街を訪ねてみたかった。スペンサーが愛するボストンのビール、サミュエル・アダムスをリッツのバーで飲んでみたかった。1999年夏、同じくスペンサー・シリーズの愛読者である妻と一緒にボストンを訪ねた。『スペンサーのボストン』を片手に。この本は、著者が作品の登場人物と共にボストンの街を案内するという設定。ファンに取っては実に嬉しく楽しい本だ。
2010年1月、ロバート・B・パーカーの死により、次回作を楽しみにするという幸せを失った。けれど、スペンサーは、スーズは、そしてホークは、ずっと生き続ける。
【快楽主義宣言より】
■ 「さらばスペンサー」 2010年4月11日
■「読書のための宿」 2007年4月7日
■「ボストンのビール」 2005年5月4日
『1Q84』が困ったぐらいに話題になっている。わが家にはなぜかBook2〈7月-9月〉だけがある。発売初日に近所の本屋さんで平積みにされているものを何の躊躇いもなく買った。家に戻り、Book1もあると知り、翌日買いに行ったら在庫なし。マスコミが煽り、社会現象となっていた。そして数週間。ようやくご近所の本屋にも再登場。今度は本を手に取ってレジに行くのが気恥ずかしい。ということで2009年6月末日現在、まだ彼の最新作を読めずにいる。困ったことだ。
ところで、村上春樹の作品で最も好きなものを挙げろと言われれば、迷わずこの『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を選ぶ。まだ『1Q84』を読んでいない今、村上春樹の全著作を読んだと言えないが、読み終わった後でも同じ答えだと思う。「世界の終わり」と「ハードボイルド・ワンダーランド」というふたつの世界が並行しながら進行し、混じり合い、影響し合い、溶け出して行く不思議な物語。しっとりと湿度感の高い、それでも乾いた春樹文体で物語が紡がれていく。“やみくろ”は、きっと邪悪なものなのだろうけれど、妙に親しみを持っている。「世界の終わり」の図書館を懐かしく思い出すことがある。まるで訪ねたことがあったかのように。
【快楽主義宣言より】
■「2つの世界、2つの物語」2009年9月20日
■「その1冊との出会い」 2008年4月20日
■「僕らの声を聴け」 2005年5月26日