二人は地図好き「御一新前後 江戸東京鳥瞰図」

p時刻表を見て何時間でも過ごせるという人がいる。動物図鑑を渡すと、目を輝かせながら一日中読み耽ってしまう子供がいる。ホリエモンは東京拘置所で百科事典を読んで過ごしているという。・・・そしてお気楽夫婦の場合は、“地図”。無人島に持っていく1冊というよくある問いには、「地図帳!」と答えるかもしれない。

二人の書棚にはかなりの種類の地図がある。車もないのに、『東京23区道路地図』。過去と現在の比較のために、版が違う2冊。「お台場って何もなかったよなぁ・・・」というような、過去の記憶メモ。『なるほど日本知図帳』『なるほど世界知図帳』。“知図”という名の通り、<世界の血液型分布>などのテーマ毎に地図が掲載されている。知っててどうする?トリビア系のデータが多いのだけれど、実に楽しいのだ。他にも、『地図で知る平成の大合併』『東京・首都圏 未来地図』等々。グルメ系のマップ、旅行ガイド誌などを入れると、数十冊はある。改めて本棚を確かめて、自分でも驚いた。

その中に異彩を放つ2つの地図がある。ひとつは、『THE MAP OF 1936 OLD BEIJING FOLKLORE 老北京風俗地図』。1936年当時の北京の風俗をイラストで描いた鳥瞰図。北京に駐在中の元上司から、一時帰国のお土産にいただいた。駐在が決まった際に、浅田次郎の『蒼穹の昴』を薦めたところ、かなり気に入ったらしく、北京の街の風景に当時の面影を探して歩き回っているとのこと。羨ましい。1912年に中華民国が建国されてから24年後だから『蒼穹の昴』や続編の『珍妃の井戸』の頃よりも新しい時代だが、まだ辮髪の人物なども描かれていたり、清朝の時代の雰囲気が残っていて興味深い。

そして、もうひとつの地図は『御一新前後 江戸東京鳥瞰図』。やはり浅田次郎がらみ。『五郎次殿御始末』の文庫版に付録として付いていた。小さな地図だが、これがまた嵌ってしまう。江戸時代から明治時代に一気に何もかもが変わった訳ではなく、連続した時間の中で少しずつ変わって行ったものもある。明治に入っても、脇差に髷姿の侍たちが東京の街を歩いていたのだ。そんな時代の東京を鳥の目で眺める。・・・今の勤務先は大手濠や神田川の支流の日本橋川に囲まれた“宮城”の敷地内。それにしても、江戸は“水の都”だったんだなぁ。街の名前の由来も、なるほど“溜池”には溜池があったんだ・・・。あっという間に時間が過ぎていってしまう。

「読む本がなくなったぁ。本屋に行こう!」速読の妻が言う。「分かった。でも、とりあえず地図でも眺めてたら?」・・・すると妻は書棚から気に入りの地図を選び、無言で眉を寄せ(それでも楽しい表情なのだそうだ)飽きず地図を眺めるのだった。

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