機上からの風景「神の目線」

P1030082初秋の羽田空港を20時過ぎに飛び立ち、北に向かう。座席は左の窓側。離陸してからしばらく、真っ暗な東京湾の周辺を縁取る輝きを眺める。“宝石箱をひっくり返したような”メガロポリスの夜景。建物の名前を追い切れないほど、増え続けるスカイスクレーパー。そして、上昇を続ける機体の左下に、“ぽつっ”と、球体の花が咲く。ひとつ、ふたつ、その色とりどりの花が増えていく。咲いては消える、光の花束。そう、その便では、TDRの花火を空の上から眺められるのだ。お気楽夫婦は、ちょっと得をした気持で短いフライトを楽しんだ。

妻は、南の島に向かうと自称“航空写真家”として、窓際の席を陣取りデジカメで写真を撮りまくる。大好きな地図通りの地形を見下ろせることに興奮するらしい。当たり前のことなのだけど、気持は良く分かる。確かに、地理で習った通りに、上流から運ばれた砂が堆積し、砂州を形成していたりする地形を眺めると、ちょっと感動したりする。古い指導要綱に則り、全ての教科を履修していて良かったなぁと感謝したりもする。

P1030106初冬、北に向かう昼の便。今度は、独りで窓際に座る。ガイドブックどおりのレイアウトが拡がるTDRを見下ろす。その向こうには、葛西臨海公園、貯木場、お台場、レインボーブリッジ、遠くに都心のビルの群。旅の目的が入院した母の見舞ということもあり、ちょっとだけ、センチメンタルな気分になる。ところが、そんな気持を吹き飛ばすように、しばらくすると雲に分け入った機体が大きく揺れ始める。翼の近くに閃光。同時に大きな電気音。「ただ今、大きな音と共に眩しい光がありましたが、機体に落雷した模様です。運行に問題はありません」っと、放送があった瞬間に2度目の落雷。CAも沈黙。おいおいっ大丈夫か?

帰路、嵐は収まったものの、雨雲が立ち込める中、飛び立った飛行機。厚い雲の隙間から陽射しがスポットライトのように、鉛色の海を照らす風景が拡がる。手術を待つ母にとっての吉兆かと、拝むような気持になる。そして、重苦しい黒い雲を抜けると、作りたてのようなフレッシュな青い青い空。どんな荒天の上にも、この空がいつもあるんだなぁ、と実感。涙が出そうになる。信仰のない私にも、<神の存在>を確信させるような、世界の広がり。むやみにいろんなものに感謝したくなる。・・・それにしても、良い子の皆は、電子機器類の使用を禁止されている時間に、写真撮っちゃダメですよ。反省。

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