舌で味わう四季「たん熊北店」後編
2007年 5 月20日(日)
日本料理ほど季節に敏感で旬の味を大事にする料理はない。そして、季節を味わうのはこの店、<たん熊北店>。次の一皿をオーダーすると本城さんが板さんにぼそっと告げる。「白子ふたぁつ付けて」・・・<季節の天ぷら盛り合わせ>がカウンタに鎮座。初夏の使者“茗荷”、“大葉”などの背後に“白子”を発見。「鯛の白子ですわぁ」などとさり気なくおっしゃるけど、これが実に旨い。ひと腹を塩で、もうひと腹を天つゆで、分け合って食す。鱈の白子よりもあっさりと、でもやはり濃厚でジューシーな味と香りが衣からはじける。
「くぅ~っ、水が進むぜぃっ」その日の妻は薦められた発泡水<シャテルドン>を飲んでいる。結構良いお値段。「びっくりしますよね、水でその値段は」板さんが笑顔でひと言。「ちょっと勇気要りますね」妻が嬉しそうに応える。彼は天ぷらが出るまでのちょっとした間を気にして、色鮮やかな一品を供してくれていた。「豆腐の味噌漬けなんです。漬けてから1日毎に味が変っていきます。2週間ぐらい経つとチーズのようになります」どれどれ。うっ、旨ぁ~いっ!!幸せな味にお気楽な2人が悶えていると、「それ、彼の秘密兵器なんですわ」と、絶妙のタイミングで本城さんが会話に入る。
「美味しいですねぇ」隣の親子連れも豆腐の味噌漬けをいただいて感激。3人とも笑顔が溢れている。ね、カウンタ席って良いでしょうと、声には出さないけれど、お気楽夫婦にも笑みが零れる。続いてこちらは<加茂那須の海老そぼろ餡かけ>これまた彩り鮮やか。ぷりぷりの海老とグリーンピースが餡に絡んで絶妙。生を茹でたグリーンピースは、ほくほくと実に美味しい。缶詰の味に慣れた舌には、季節感溢れるこの食材が別のもののように感じられる。
そして、締めに<鮭茶漬け>。たっぷり解した鮭の身が贅沢に盛り付けられる。ふぅ~っ、季節の味を堪能。満足。「もっと頻繁に来れると良いんですけどねぇ」妻が心からそう言うと、「あんだけいろんなとこに行ってらしたら、なかなかいらっしゃれませんよ。羨ましいですわ」え?ブログ相変わらず読んでいただいているんですか。それは嬉しい。「フランスに行かれた記事なんか、ほんと羨ましくて」本城さんはかつてパリのフランス大使館でも腕を振るわれた方。そんな方にフランス旅行の記事を読んでいただくなど、畏れ入る。また、この記事を読んでいただくことになると、たん熊さんの味を上手く伝えきれず、これまた申し訳ない。でも、また是非お邪魔します。せめて、年に4回。それぞれの季節の味を楽しみに。