セイレーンの誘惑!NODA MAP「キル」
2007年 12 月24日(月)
2007年もあと数日で終わる。今年観た芝居の本数はわずか14本。1ヵ月に1本強。それもなかなか“当たり”がなかった年だったと嘆くお気楽夫婦。こうしてブログの記事で観終えた芝居をあまり紹介しなかったことでも分かる。ん?そう言えば昨年の今頃も同じようなことを嘆き、同じような記事を書いてはいなかったか?あ、やっぱり。行きたい公演は何本かあったがチケットが手に入らなかったという事情も昨年と同様。観劇公演数も減っている。う~む。
振り返れば今年の初芝居はNODA MAPの「ロープ」、最後の芝居がやはりNODA MAP「キル」だった。「キル」は再々演。1994年の初演は、記念すべきNODA MAPの第1回公演であり、妻と初めて一緒に観た舞台でもある。劇団夢の遊眠社の頃から、現実の延長線上ではない物語が紡がれ、夢の中にいるような不思議で心地良い時間が過ごせる舞台がずっと好きだった。なのに、芝居の内容はすっかり忘れており、おかげで新鮮な気持で観劇できた。(隣に座る妻の存在に緊張していたのかもしれない)改めて“天才”野田秀樹を堪能し感激できた。若年性アルツハイマーではないかと疑う自分自身に言い訳している気もするが。
野田秀樹の芝居はネタバレしても楽しめると信じて堂々と記載するが、彼のことば遊びは単なるダジャレではなく、美しく韻をふみ、ことばの持つ力を感じさせる、いつもながら鳥肌が立つような完成度の高い脚本だ。キル、着る、切る、KILL。羊の国の西にある西羊(洋)…。意味を持って演じられて、その瞬間の確信が裏切られるように意味を失うことばたち。意味を捉え考えようとするのではなく感じる芝居。初演のテムジン、主演の堤真一も良かったけれど(覚えていないくせに!)初舞台とは思えない妻夫木聡が良い。勝村政信と山田まりやも美味しい部分をさらって持っていってしまう。
それでもやはり、特筆すべきは俳優としての野田秀樹の存在感だ。あの遠く聞こえる汽笛のような声で舞台に現れると、すっかりそこはNODAワールド。彼のいる場所を目で追ってしまう。彼のセリフに引き込まれてしまう。あぁ、そうか、きっと野田秀樹はギリシア神話のセイレーンのような存在なんだなぁ~~。(NODA風に読める人は読んでください)その声に魅せられ、舞台に足を運ばされてしまい、惑わされてしまうんだなぁ~~。
やっぱり(当たれば)ライブのエンタテインメントは震えるぐらいにすばらしい。よぉっし!来年はもっと芝居に行くよ!コンサートにも久しぶりに行こうぜ!と気になっていた公演のチケットを立て続けに購入。ロックミュージカル「ヘドウィグ&アングリーインチ」、東山紀之主演「覇王別姫」、「ポリス」東京ドーム公演など、あっという間に来年のチケットが5公演分も手元に届いた。「あと2つ、行きたいと思っている公演あるんだよねぇ、これも行こうか♪」おぉ、ここにもセイレーンがいた。妻の目がきらりと輝いた。