ハマちゃんの愛する焼き鳥屋「若竹」千歳烏山
2009年 7 月26日(日)
ある週末、どんっ、という鈍い音とごく僅かな振動に気が付いたのは妻だった。え、何?「デジカメを持って最上階にあがろう!」お気楽夫婦が住むマンションの最上階の共用廊下には既に先客がいた。どんっという音は続いており、先客の女の子たちの歓声がその音に重なる。その日はちょうどお隣の調布市の花火大会だった。世田谷の北西の外れにある街に住むお気楽夫婦。最上階に上ると、調布だけではなく、多摩川や豊島園の花火も眺めることができる。横浜方面から都心まで、場所を変えれば360度の眺望が望める。調布方面を望むのは共用廊下と非常階段の踊り場を合わせても2m四方程度の小さなスペース。風があって涼しいだけではなく、高所恐怖症気味の人だったら足下がむず痒くなる眺め。けれど、高いところが大好きなお気楽夫婦にとってこの展望台はお気に入りの場所。周囲に高層ビルが少ない郊外の街のメリットだ。
「なんだかお腹空いて来たね」そうだねぇ。眼下には2人の住む街の控えめな看板の灯りが瞬く。その中のひとつ、歩いて60秒ほどの場所にある焼き鳥屋を目指す。店の名前は「若竹」。何の変哲もない、ふつーの焼き鳥屋。10席ちょっとのカウンタ席と、6人程度座ればぎゅーぎゅーになる小上がりだけの小さな店。しかし、この店の料理は侮れない。何度来ても、ほぼ同じものを頼んでしまうお気楽夫婦。まずは、「キャベツ」と「きゅうりの昆布和え」から。しゃきしゃきのキャベツに辛みそを付けてぱりぱり齧る。旨い。きゅうりは昆布とのバランスが絶妙。これを料理と呼ぶかどうかは別にして、実に美味しい。食材勝負の一皿とは言える。そしてやはりお約束のモツ煮込みを食べ始める頃には既に1杯目の生ビールは空になっている。
焼き鳥はレバー、ネギマ、豚巻きトマト、牛のハラミなどオーソドックスな何本か。いずれも塩で焼いて、七味と辛みそを付けてかぶり付く。「美味しいねぇ♪」お酒が飲めない妻も、緑茶で焼き鳥を頬張る。「この店は地味だけど美味しいよね」同感。店主は口数は少なく、常連客に媚びる訳でもない。けれど居心地が悪い訳ではなく、初めての客でも馴染める雰囲気。決して愛想が良い訳ではないが、たんたんと仕事を続ける店主の立ち姿は好感が持てる。小さな店だから団体客が入れない。だから、小さな喧噪はあるけれど、決して隣に座る妻と大声で話す必要はない。早い話が、ご近所にあって嬉しい実に良い店なのだ。
この小さな店の奥にあるトイレに向かおうとすると、小上がりの席の壁に巨大な似顔絵が目に付く。福々しい顔、垂れた目、くしゃくしゃの髪。自分で描いた自画像のイラストの横にはサインがある。イラストの作者は『釣りバカ日誌』のハマちゃんでお馴染みの西田敏行さん。一度も店ではお会いしたことはないけれど、この店の常連らしい。サッポロビールのCMそのままに、この店で美味しそうにビールを飲む姿が目に浮かぶ。きっと、この店の店主は彼がやって来ても、やはりたんたんとレバーを焼き、生ビールを注いでいるのだろう。だからこそ、西田さんもこの店に通ってもいるのだろうし。「ん、美味しかった♪帰ろうか!」滞在時間わずか1時間強。ビール2杯、焼酎を1杯。2人にとって、これがふつーの夕食。「だからウチのキッチンはいつまでもキレーなんだよね」…こうして今日もお気楽な日々が過ぎて行く。