オトナの〜に騙されて!「代官山T-SITE」

Tsutaya1Tsutaya2トナの〜」という惹句に騙されて、ノコノコと出かけて行くようでは決して「オトナ」とは言えない。けれど、この場所には騙されたと思って行ってみて欲しい。2011年12月にOPENした「代官山T-SITE」。まさしく「オトナの〜」とい手垢が付いた表現の本来の意味を取り戻してくれた施設だ。T-SITEの「T」は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の運営する「TSUTAYA」のTであり、TポイントカードのT。そして、CCCが30年前に創業した時の店舗名「蔦屋書店」のTでもある。ちなみに、この施設の核となるTSUTAYAは、「代官山蔦屋書店」を名乗る。創業者の増田宗昭氏の『代官山オトナTSUTAYA計画』という著書に、このプロジェクトの描く志と夢が語られているという。その増田氏が創業時に目指した「本、映画、音楽を通してライフスタイルを提案すること」を実現した舞台。

CD1CD2山手通り沿いに広がる4,000坪の敷地に足を踏み入れると、オトナの夢の国の入口に相応しい洗練されたデザインの建築物と大きな木々が迎えてくれる。一瞬にして非日常の世界に紛れ込もうとしているというワクワク感が溢れる。3棟からなる蔦屋書店、カフェバーダイニング「IVY PLACE」などの施設がゆとりを持って配されている。蔦屋書店のファサードは「T」が連なる印象的なデザイン。リゾナーレ小淵沢などを手がけたクライン・ダイサム・アーキテクツが建築を担当。余りの高揚感に浮き足立つように店に入ると、これまた思わず笑顔になる。何、これ!やってくれるじゃない!という仕掛けがたっぷり。本は各棟の1階。3棟を繋ぐ各エントランスには大量の雑誌が並ぶマガジンストリート。書籍たちは「旅」「料理」などのテーマ別に小さな部屋で客を待ち受け、併設されたスターバックスのカフェを飲みながら本を選ぶことができる。

TsutayaNight1TsutayaNight2楽のコーナーは3号館の2階。ジャズ、クラシックなどの大ジャンル別に並べられているだけではなく、「プログレッシブロック」「不良ロック」などという挑戦的なコーナーがあったりする。不良ロックコーナーにには、頭脳警察、PANTA & HALなど、かつて私が愛したグループも並ぶ。窓際にはコーヒーを飲みながら試聴できるコーナーがある。マッキントッシュのオーディオセットから心地良い音楽が流れている。ん〜、完全にやられた!という感じ。そしてだめ押しは、2号館の2階にあるラウンジ「Anjin」。落とし気味の照明、ゆったりとしたソファ席とカウンタ席。周囲には「平凡パンチ」「太陽」など雑誌のバックナンバーが並ぶ。そこでお酒を飲みながら、食事をしながら、ライブラリーの雑誌や館内の本を読める。そこに座っているだけで、僕ってオトナ!という自己満足に浸り、疑似オトナになった雰囲気を味わえる空間。

SaladePotateめて訪問した冬の日、高揚感を抱えたまま帰宅し、興奮を熱く語った。そしてサクラの頃、妻を誘って再訪。妻もぐっと来た様子。各フロアに大量に備えられたiPadを使って、興味深そうに店内情報の検索をしている。「隅々まで実に良くできてるねぇ」と好感触の発言。よっしゃぁ〜っ!また来れるぞと、心の中で小さくガッツポーズ。そしてさらに数日後、T-SITEのシンボルツリーである大きなケヤキの下に佇む「IVY PLACE」に食事に出かけた。今やすっかりT-SITEフリークの趣。カフェ、バー、ダイニングの3つのコーナーを持つ山荘風の外観の落着いた店内は満席。しばし待ってカフェのカウンタ席に案内される。この店は天王洲アイルの「T.Y.ハーバー ブルワリー」の姉妹店。3種類あるオリジナルの生ビールが旨い。内装は開店間もないのに何年も歴史を重ねたような趣。落ち着ける和みの空間だ。良い店だ。

功した企業の創業者の夢を実現するプロジェクト。けれど押し付けがましいところがない。知的好奇心を刺激するオトナのための夢の空間、オトナのディズニーランド。こんな施設を保持し続けるのは経営的には大変かもしれないが、継続して欲しい。大袈裟に言えば、日本の文化が成熟し、オトナの社会になっていくために必要なスペースだ。大切な財産だ。「また来ようね。代官山には美味しいパン屋も多いし」と妻。美味しいパンも、また大切な文化なり。

コメントする








002184371

SINCE 1.May 2005