VIVA! ITALIA!「ドンチッチョ」
2013年 7 月20日(土)
フレンチビストロが人気!スペインバルが熱い!などと惹句が踊るグルメ系雑誌。80年代バブルの時代、イタリア料理をイタめしと呼び、ティラミスと共に大ブームになったこともあった。日本に居ながらにして世界各国の料理やお酒を味わえる、そんな国に住んでいることを素直に嬉しく思う。けれど、世界各地に「これが和食?」という日本人以外の料理人が創作日本料理と呼ぶにも問題がある料理を出す店が多いように、日本国内の各国料理にも日本流のアレンジが施されている場合が多い。それでも日本で出される料理の水準はある程度高いから許せるけれど。
まして、京料理と九州料理が全く違うように、同じ国の料理でも地方によって大きく違う。和食、日本料理、という呼び方によっても料理のジャンルが変わってしまう。イタリア料理も同様のはず。「トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ」シチリア料理のお気軽レストラン。だからこそ、この店の名前はとても正確。そして正統イタリアン。決して広くない店内。リストランテのようにお高くもなく、気さくなスタッフ。シチリア島由来の食材、料理、お酒を楽しめる。スタッフたちをシチリア島に研修旅行に派遣するほどの徹底ぶり。それが店の味や雰囲気に見事に現れている希有な店。
例えば、少し早めに到着した私に「待たれますか、先に飲まれますか」と声を掛けるスタッフ。迷うことなく生ビールをお願いして、手書のメニューを眺め、何を食べようかと楽しみながら、ひとりお先にぐびり。メンバーが揃って乾杯の後、「今日のメニューをご紹介させていただきます」と流れるような説明が始まる。押し付けがましくなく、その日のおススメの食材をレコメンド。「イワシとウィキョウ、良いねぇ」「あ、それ食べよう!」わいわいと料理を選ぶ楽しさ。オーダーのボリュームを的確に把握し、全体のバランスを調整しながらさらにおススメしてくれる。気持の良い接客だ。
ワイン選びも同様。その日はワイン好きの若手建築家にお任せ。スタッフと楽しそうに談笑しながらオーダーした料理に合ったワインをセレクト。その日選んだのは、ロッカ、イティネラというシチリアのワイナリーの白。シチリア島はイタリアでも有数のワインの産地とのこと。香り高くきりりと冷えた辛口の白ワインを、アクアパッツアなどの魚料理に合わせる。ん、旨い。イタリア料理はシンプルな味付けと盛付けで、オキドリの要素がフランス料理よりも少ない。仲間たちとわいわいと食事をするのにぴったり。スタッフの対応もいずれも心地良く、料理の美味しさを増してくれる。
「良い店だよねぇ」「うん、さすがだ」見送られ店を出ると、仲間たちが賞賛のことばを次々に口にする。イタリア人の人なつっこさと、日本人の繊細さと家庭的な温かさを併せ持ったサービス。それをマニュアル的ではなく、柔軟で臨機応変かつ自然な振舞いで提供することで生まれる店の空気。シチリア由来のレシピ、食材、ワイン、そして日本人シェフの技。イタリアと日本の良いトコ取り。その日も実に満足!の夜だった。VIVA! ITALIA! VIVA! Don Ciccio!