Archive for 8 月 14th, 2016

ヴァカンス本2016「村上春樹、ダン・ブラウン、他」

20161オで日本選手が活躍する夏も後半、ようやくお気楽夫婦のヴァカンス(ホテルに篭り本を読む旅)が始まる。毎年春先から旅先で読みたい本を買い溜め、読むのを我慢し積ん読。通勤車内で読みたい作品は先に読み、旅先に向いていそうな作品を残すのがルール。今年のヴァカンスはちょいと長めだから、多めに持って行こうか。妻との間で検討会が開催される。2人が購入するのは文庫が基本。リノベーションで書棚が大きくなったとは言え、元々が狭いマンション住まい。ハードカバーを買って良しと決めた作家以外は文庫化されるまで待つ。春樹&龍のW村上、ロバート.B.パーカーだけが例外の3人。特にパーカーは新作を旅先に持参するのを毎年楽しみにしていた。だが、残念ながら2012年の夏に持参した『春雷』が、パーカー最後の作品となった。

20162上春樹の『ラオスにいったい何があるというんですか?』は、ハードカバーであることから、文句なく当選。村上春樹の紀行文はお気に入り。例えば『遠い太鼓』。彼が日本を離れていた3年間に(とは言え、村上春樹の場合、日本を離れている期間の方が長いような気がするが)訪ねた国でのスケッチの集積だと彼は呼んでいる。ローマ、アテネ、ミコノス、ヘルシンキ、ザルツブルク、旅情を唆る地名が並ぶ。『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』も好きな紀行文だ。アイラ島を訪ね、シングルモルトを片っぱしから飲み比べたくなる。それなのに、今回はラオス。なぜラオス?聞かれるまでもなく、いったい何があるというのだ。こちらが聞きたい。久しぶりの村上旅エッセイ、それもうまく行かない旅の気配。楽しみにしている1冊だ。

20163ン・ブラウンの『インフェルノ』も当選確実。上中下の3分冊だから通勤の車内でも読みやすいのだが、『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』などの、一連のラングドン・シリーズは、実は旅先の読書に向いている。世界各地の大都市や人気の観光地が舞台となっている作品は、既に訪れた場所ならば映像的にリアルなものになり、未訪問の街ならば訪ねてみようかという気持ちにさせる。ヴァカンスの只中で、次のヴァカンスに想いを馳せるというゼータクな時間を過ごすことができるのだ。今回の作品はダンテの『神曲』がモチーフになっているようだから、物語の舞台はイタリアか。2000年にローマを訪ねて以来、イタリアには行っていない。ヨーロッパの旅のリスクが少なくなる頃に訪れようか。…まだ読んでもいないのに夢想してしまう。

20164ェフリー・アーチャーの『クリフトン年代記』シリーズも楽しみだ。第4部『追風に帆を上げよ』を読みながら前作を思い出し、第5部『剣より強し』を読み終わる頃には、次作を楽しみにし出すのだろう。アーチャーの作品は当たり外れがあるけれど、善悪の価値観がはっきりとしている場合が多いから感情移入がし易い。だからこそ軽く読み流しやすく、大河小説的に(良い意味で)ダラダラとヴァカンス中に読むには向いている。鼻持ちならない登場人物も南の島の空気の中では許してあげられる。中毒性があるという程ではないにせよ、各編が続編を読みたくなる終わり方をするからズルい。つい買ってしまう。ロバート.B.パーカーの『スペンサーシリーズ』の最新作が読めなくなった今、毎年楽しみにできるシリーズになると良いのだけれど。

20165イクル・クライトンの新作も、残念ながら読めなくなってしまった。『ライジング・サン』がベストセラーとなり、『ジュラシック・パーク』で全世界的に有名になった彼の作品(日本語訳・文庫化)は、全て読んでいるはずだ。医学ミステリ、バイオサスペンス、テクノスリラーなど、彼の深く広いジャンルに渡る物語は魅力的だった。2008年に没したクライトンの年齢は66歳。まだまだたくさんの物語を紡いで欲しかった。彼の遺作となった『マイクロワールド』は、未完で発見された原稿をリチャード・プレストンという作家が引き継いで完成させた作品だという。読み終えた後にお気に入りとなれば、彼の作品を遡って読んでみようか。あれ?何だか今年の夏の候補作品は、意図せず海外作品が多い。う〜む、他には…。

20166浦しをんがいるじゃないか。我慢できずに読んでしまいそうになったけれど、『神去なあなあ日常』の続編『神去なあなあ夜話』が残っていた。直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』をはじめ、映画化やドラマ化された作品も多いけれど、観た後でも映像に負けない独特の世界観が好きだ。現実と薄い皮一枚で繋がっている異なる物語。リアリティがあり、異空間的魅力もあり、少しだけ非現実的な登場人物も良い。『風が強く吹いている』や『小暮荘物語』も、そんな非現実的リアルな物語として好きな作品だ。「あれ?それ読んじゃったよ」と妻。え〜っ!我慢できなかったのか。では、文庫化を楽しみにしていた『村上海賊の娘』かな。それともぶ厚いから、有川浩の『空飛ぶ広報室』かな…。そんな2人のヴァカンス突入まで、あとわずか!

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