Archive for 1 月 8th, 2017

ありふれた、ありがたい日常「義父母との日々」

Hamamatsu1Hamamatsu2母が逝き、妻の故郷である浜松に2人で暮らす義父母だけが、お気楽夫婦の両親となった。妻は一人娘。離れて暮らす父母を気にかけ、年に数回は故郷に向かう。春の浜松祭りの頃、秋の連休、そして年末年始が恒例。その度ごとにムコ殿である私も同行。マスオさんに徹し、妻のサザエをサポートする。年末年始のルーティンは、新幹線の車内宴会からスタート。品川駅で買い込んだオードブルを肴に、ビールと缶コーヒーで乾杯。妻の故郷に向かい、マスオさんになるための通過儀礼のようなもの。いつものハレの儀式。*この儀式は年末年始に限ったことではないけれど。浜松に着いた翌日は、大掃除、浜松のスカッシュ仲間たちとの打ち納め、そして両親との忘年会というのがお約束。

Hamamatsu3Hamamatsu4‘16年の忘年会は、義母の喜寿のお祝いを兼ねてカニ尽くしの宴。食が細い2人のために、品数が少ないコースで予約。それでも、カニ刺し、カニすき、焼きガニ、カニ寿司などがひと通り味わえるお得なコース。そしてデザートが出てきた頃合いを見計らって、こっそり持参してきたプレゼントを贈呈。バラの包みのタカシマヤ♬の箱の中は、深紅のバラのプリザーブドフラワー。花屋を何軒も探し回り、ようやく巡り会えた納得の一品だ。「わぁ〜、キレーだね。ありがとう♡」花を育てるのが大好きだった義父母。一軒家からマンションに引っ越した後は、鉢植えの花を育てながらも、億劫になってきた気配もあった。これなら暖かな部屋の中で花を愛でられる、というチョイスだ。

Hamamatsu5Hamamatsu6末年始の大事なお約束がもう一つ。年末のご近所温泉旅行。日頃はほとんど外食もせず質素に暮らす義父母が、年に1回だけのささやかな贅沢として、娘と一緒に宿泊することを楽しみにしているのだ。宿はいつもの「ウェルシーズン浜名湖」という洋室がある温泉ホテル。加えて今年はバリアフリーの客室をチョイス。大浴場などの館内の各施設へのアクセスも良く、膝が悪い義母の負担も軽減できる。この宿の予約と宿泊代の支払だけは、敢えて義父母にお任せ。チェックアウト後にありがとうとお礼を言えることがお互いにきっと嬉しいのだ。そして、私の年始のお楽しみである「割烹 弁いち」のお節料理はお気楽夫婦が支払う。このバランスがマスオさんとサザエの気配り。

Hamamatsu7Hmamatsu8旦の午後、同窓会に参加するため一足先に東京に戻る。車窓に余りに見事な富士山が現れ、思わず撮影。富士山好きの義父母に見て欲しいからとお気楽妻に画像を送る。独りで眺める富士が“家族の富士”になる。富士の名は“不尽”に通じ、その大きさや美しさが尽きないという意味であり、“不二”とも呼ばれ、2つとないほどの山という意味になる。誰もがその姿を見れば、そんな気持になる。自宅に戻り、デパ地下で買ってきたオードブルを、せめてもと小さな器に盛り付け並べてみても、独りで味わう食卓は淋しい。お気楽妻と共に義父母と過ごす年末年始の時間は、毎年同じように過ぎて行く、ごくありふれた日々。けれども、とてもありがたい時間なのだと実感する。

と何年、こうやって年末年始を一緒に過ごせるかなぁ」お気楽妻が零すことばは、実の親のことだけに遠慮がなく、リアリティがあり、切実でもある。だからこそ、マスオさんはサザエさんと共に浜松を訪れる。可能な限り。彼らがお気楽夫婦の記憶の中にしか住めなくなる前に。私の父母が住む場所を訪れる前に。

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