いつもの店で夏の味「神泉 遠藤利三郎商店、他」
2018年 8 月26日(日)
立秋も過ぎ、夏も終わ…らなさそうな今夏。すっかり熱帯地域の日本。だいたい旧暦の二十四節気で季節を感じるのは無理がある。猛暑日が続く8月の初旬に立秋と言われてもなぁ〜という今年の暑さ。とは言え、暑さに負けず、今年も各地で夏を味わった。まずは大阪の北新地。出張の度に地元の方に連れて行っていただく店がある。「高橋謙太郎」という直球の店名。何度かお邪魔してすっかり顔なじみ。まいど!と声が掛かる。
大阪の“新地”という響きだけで敷居が高いと思っていたけれど、この店の気さくな雰囲気で固定概念が吹き飛んだ。同伴でご出勤の2人連れが多いことを除けば、実に居心地が良い。そして料理はもちろん、日本酒と酒器の組合せのセンスが素晴らしい。その日の逸品は白エビの握り。優しい味の白エビのヅケに強めのワサビ。旨い。酒は「阿部勘」の純米大吟醸に青い切子のグラス。目にも舌にもキリッと美味い。夏の幸福。
続いて渋谷 神泉。馴染みのワインビストロ「遠藤利三郎商店」へ。ワインアパートメントの1階という場所柄、ワインの店であるのは当然ながら、この店の料理は実に旨い。長く務めたシェフが替わっても料理の水準をキープし、ワインと相性の良い一品を供してくれる。いつものカウンタ席に座ると、妻にはスパークリングワインならぬスパークリングウォーターがすっと供される。2人の担当(3代目)ソムリエのミホちゃんだ。
実のはこの日、店のFacebookに掲載された「冷製カッペリーニ」の画像と席が空いているという情報に釣られて、サクッと業務を終了。すかさず予約してやって来たお気楽夫婦だった。ミホちゃんにそう伝えると「わぁ、嬉しいです。更新し甲斐があります♬」と笑顔。桃の甘み、トマトの酸味、生ハムの塩加減、そしてミントの香りが絶妙なハーモニー。画像から妄想した味の期待以上に美味しい夏の味。また釣ってねと店を出る。
さらに世田谷線 松陰神社前。行きつけの「ビストロ トロワキャール」に密かに?集まったのは、ある企画でご一緒しよう!というスカッシュ仲間たちとの決起集会(笑)。計画の実現を祈って乾杯!企画とは関係なく話題はあちこちに飛び、注がれたワインがあっという間にグラスから消え、笑い声が飛び交う。まだその企ては公にはできないけれど、このメンバーなら楽しいモノになるに違いない。今からとても楽しみだ。
夏の味として毎年恒例の「鮎のコンフィ」が食べたくて、この店にやって来たのだけれど、鮎を食べる前に絶品ガスパチョが、その日の主役の座を奪ってしまった。ひと匙飲んで、誰もが一斉に目を見張った。この店の絶品のひと皿にもトマトの酸味と桃の甘み。爽やかに旨い。今年はこの組合せだなぁと目を細める旨さ。これは「ビストロ808」では再現できないだろうなと、師匠の技を盗み見る。その壁は遥か高い場所だ。
シメは静岡県浜松市。妻の故郷であるこの街に帰る度に、可能な限り立ち寄る店がある。「割烹 弁いち」という3代100年近く続く老舗の料理屋だ。この店の魅力は最大4人まで座れる個室のカウンタ席。改装前は1階にあった人気のコーナーを2階に移し、ますます魅力的なスペースになった。その日も2人(と店主と3人)で、居心地の良い空間と酒と料理の組み合せを堪能する。「麗(うらら)」という銘酒で幸福の時間の開始だ。
「割烹 弁いち」のある遠州浜松は、食材に恵まれた地であるにも関わらず、地物を活かすけれど地産地消ではなく、その時期に最高の食材を各地から集め、料理に寄り添う日本各地の最良の酒を供する。その日秀逸だったのは、天然のトンビマイタケの独特の歯ざわりと絶妙なソース。シメもトンビマイタケの炊き込みご飯。秋のイメージがあるキノコだが、旧盆の頃が旬の、これも夏の味。なんと口福な時間であることか。
こうして今年もいつもの店で、各地の夏の味を堪能できた。街の巨匠たちに感謝。「あとは夏のヴァカンスを堪能するだけだね」とお気楽妻。了解♬