友を呼ぶ酒、日本酒愛に満ちた店「久保田酒店」鯖江市
2020年 11 月08日(日)
2012年11月、当時馴染みだった料理店の企画で出会った福井県鯖江市で酒販売店を営む久保田夫妻。地元を、日本酒を、自分達の仕事を、そしてお互いを愛する、ほんわかと温かな2人に魅せられた。以降、何度か(…と思っていたら1回だけ!)一緒に飲み、そしてSNSでずっと繋がっていた。何しろ、彼らの書込は2人の仲の良さが伝わる、実にチャーミングで愛おしくなる内容なのだ。お気楽妻はすっかり桐ちゃん(奥様)ファン♬
彼らの住む鯖江をいつか訪ねたいと、ずっとチャンスを窺っていたお気楽夫婦。そこにグッドニュース。金沢駅前に2人が贔屓にしているホテルグループの「ハイアット セントリック金沢」が開業するという。よしっ、COVID-19の状況次第で金沢と福井を訪ねるぞ!と決めた。8月の金沢のセントリック開業を待ち、訪問計画がスタートした。そして今冬に危惧されるインフルエンザとの同時流行の前、10月末決行と決まった。
真っ先に久保田夫妻に計画を伝え、彼らの感染予防ポリシーが許せば、ご一緒して欲しいとお願いした。すると間もなく快諾の報。伺う予定をしていた土曜の夜だけでなく、店がお休みの日曜日も福井県内をご案内いただけると言う。ステキだ♬ そう言えば数年前、彼らが私の故郷である庄内地方(山形県)を2人で訪ねると聞き、オススメの店やスポットをSNSでご案内し、遠くからでも楽しんでもらえた様子が嬉しかった。
今回は立場は逆…どころか、ご一緒いただけるとのことだから、希望は最小限にしてお二人にお任せすることにした。東尋坊で火曜サスペンスごっこ(汗)をしたい、三国湊の街歩きがしたい、そして改装されたと聞いていた久保田酒店を訪ねたい、という3つ。すると、三国の街を下見したり、福井での夕食を手配してくれたりと、何だかお二人も我々の訪問だけでなく、計画すること自体も楽しんでいる様子。それは嬉しい♬
旅の初日、福井駅で恐竜を狩った後、待望の「久保田酒店」に向かう。鯖江の駅に降り立ち、線路越しに駅舎を見ると、見覚えがある人影が2つ!久保田夫妻だった。改札を出てすぐ、予想していなかった出迎えに、久しぶりと言い合いながらソーシャルディスタンスを保ったハグを(嘘です。そんなハグはない!)してしまう4人。そして駅前にある彼らの店へ。「きゃあ、ステキ!」と妻。外からの眺めだけで魅了される佇まい。
店内に入ると、建材の木と酒の香りに包まれ、外観と同様に素敵な造り。壁には酒樽を利用したディスプレーや、ショーケースが美しく並ぶ。日本酒のバーカウンターには、オススメの酒が用意されていた。ひとつひとつ、試飲をしながら久保田さんの説明を聞く。どれも蔵元への愛情が溢れ、酒の旨さに深みを加える話。ではと、お勧めの3本と、普段飲み用に「黒龍」のミニボトルを選び、配送の手配をする。これは楽しみだ。
その夜、お二人が初めてデートしたという福井市の居酒屋へ。2人の馴れ初めを伺い、絶品の魚を味わい、酒屋の店主のオススメの酒を飲む。これ程の幸福な夜があろうか。翌日、驚く程明るい(実は暗いイメージだった)東尋坊で遊び、北前船の記憶を刻む三国湊の街を歩き、絶品「甘海老天丼」を堪能する。余りに楽しく別れ難いと思っていた所に、金沢まで車で送っていただけるとの申し出。それは嬉しいと4人でドライブ。
金沢に到着し、お帰りが遅くなっては申し訳ないと躊躇いながら、一緒に夕食をとお誘いすると是非との返事。ではと、初めて4人が出会った時と同様に中華料理にしようと近くの店に出向いた。いくつか料理をオーダーし、日本酒は中華料理にも合うよね、と話していた時にサプライズがやって来た。お店のスタッフがなぜ小さなグラスを用意したのだろうと訝ってはいた。そこに、日本酒が運ばれて来た。答えはそこにあった。
久保田さんが「実はこのお酒はIGAさん達が結婚された年に採れた米を使って作られた…」と説明を始めた時は、よくそんな酒がこの店にあったなと誤解していた。ところが、それは彼が持ち込んだ酒だった。そう言えば、ずっと大きなバッグを肩に下げていた。あれは酒を入れたクーラーバッグだったのだ。我々が入籍して20年とSNSで知り、用意していただいていたのだ。凄いぞ、この気遣い。これはまいったな、久保田さん。
酒の名は「呼友」。(偶然にも)久保田で名高い朝日酒造が主催する「久保田塾」という酒の勉強会の卒業生たちを「呼友会」と称し、全国100店弱の酒販店だけが販売できる限定酒なのだ。それも、20年低温熟成古酒。希少酒×希少の何乗かのお酒だ。味わいと言えば、古酒なのに爽やかで、深みがあり、夫婦の20年という歳月もこうありたいと思わせる酒。友を呼ぶ酒。人との出会い、日本酒との出会いに涙しそうになる。
「またね!」とハグして別れた夜、しみじみと楽しかった2日間を味わう。東京に戻り、数日経った日に届いた酒に記憶を反芻する。「またぜひ、今度は私たちが東京へ!」と嬉しく可愛いメッセージをいただき、では案内する場所をセレクトしておくね!と返す。憎っくきCOVID-19がまだ跋扈しているけれど、万全な感染予防対策の下、またいつかきっと会おう!日本酒愛と地元愛と、友愛に溢れた2人と。