Au revoir !! 浜松「センチメンタル・ジャーニー(2日/3日目)」
2025年 11 月28日(金)


浜松にあるスポーツクラブ「ESPO(エスポ)」は、お気楽夫婦が知る限り、日本で1番(当社比)の施設だと思う。*吹抜けで広々とした明るいプール、ジャグジー、無料のマッサージチェアなど、施設面でもソフト面でも。浜松に通い始めて20年余り、その度にクラブを訪ね、地元のスカッシュメンバーの皆さんとコートに入った。年に2〜3度伺うことでもあり、ラケットとシューズは浜松に常備していた。公式のコートが2面。コートのコンディションの良さはもちろん、コートに集まるメンバーが魅力的だった。その中心にいたのがWご夫妻。住んでるんじゃないか?と思うほど、毎回訪れる度に朝からずっとコートにいた。メンバーに区別なくフレンドリーに声を掛けて一緒にコートに入り、初心者には一から手ほどきをし、コートを活性化し続けた。彼らのおかげで浜松に大勢のスカッシュ仲間ができ、大勢の方と一緒にプレーできた。毎回浜松訪問の楽しみのひとつだった。このコートにも今まで通りに伺うことができなくなってしまう(涙)。スカッシュの後で、中華の名店「氷箱里(ピンシャンリー)」で「これまでありがとうございました!」と、ご夫妻と乾杯したら、「また来ますよね」と返された。多謝。えぇ、また伺いますとも。


浜松城に行きたいと妻に伝えると、「え!行ったことなかった?」と驚かれた。家康が若かった頃に居城とした浜松城は、「出世城」とも呼ばれ、家康の後の城主も大出世したとか。まぁ、今さら肖って出世したいでもなし、身近すぎて行かなかったというのが本音。行ってみれば再現された天守からの眺めも良く、周囲も広々のんびりとした佇まいで、市民の“憩いの場”感が漂う好感度の高い公園だった。続いては始発駅「シン・ハママツ(ここでもエヴァとの連携)」から遠州鉄道通称“赤電”に乗車(それも運転席の見える最前列)し、終点の西鹿島駅を目指す。お目当ては従弟に勧められた「秋野不矩美術館」。地元浜松出身の日本画家、秋野不矩の作品の展示を中心とした美術館。その独特の空気感を持った外観だけでなく、展示空間には靴を脱いで入館するなどちょっと不思議な雰囲気。その建物の周辺だけが異空間に属し、時間も歪んでいるような奇妙な感触。浜松の市街地からは遠いけれども、建築好き&美術愛好家には一見の価値はある。


浜松最終日のランチはうなぎ。旅の計画時からそう決めていた。浜名湖周辺ではかつてはうなぎの養殖が盛んだったことから、浜松といえばうなぎと有名だった。現在は養殖池も減った(以前は新幹線の車窓からたくさん見えた)ものの、それでも浜松市内にはうなぎ屋が多数ある。それも、地理的条件から、3種類の食べ比べができる珍しく嬉しいい街だ。ひとつは、腹開きで蒸さずに焼く関西風、もうひとつは背開きで素焼きの後に蒸して焼き上げる関東風、さらには名古屋風の“ひつまぶし”だ。*ちなみに浜松では“ウナ茶”と呼ぶ店もある。これまで浜松を訪ねる旅にほぼ毎回あちこちの店でうなぎをたっぷりと食べてきた。それでは区切りの浜松訪問として何風を選ぶかと迷いつつ、都内では余り食べられない関西風+うなぎ茶漬けを供する「濱松地焼き 鰻 まさ」という店をチョイス。結果、大正解だった。肉厚で大きいウナギが重箱からはみ出さんばかりに乗っている。表面はカリッと、中はふっくらというまさしく関西風。それを薬味と一緒に食べ、その後に出汁でいただくウナ茶がまた旨い。しみじみ幸福な浜松の味。


浜松みやげと言えば「うなぎパイ」。定番中の定番だ。春華堂という地元のメーカーが昭和36年に発売した、今年でちょうど還暦のロングセラー商品。何といっても安定して旨い。*中でもブランデー入りの「うなぎパイV.S.O.P」が抜群に旨い(当社比)。とは言え、全国区で有名なのに、ほぼ静岡県内(*割れやすく発送に不向きとの判断らしいが、地域限定の希少性?からか転売ヤーが倍の価格で販売し問題になった)でしか買えない。これが嬉しい。妻は新幹線の車窓からホームを眺め、例えば静岡駅から乗ってくる人たちが春華堂の手提げ袋を持っていると、ふふんっと鼻じらむ。それは静岡ではなく浜松みやげだよ!と心の中で叫んでいるに違いない。今回はすっかり東京都民になった義父母からみやげとして頼まれ、自分たち用に買って帰って来た。まさしく浜松人のソウルフードだ。他にも、「浜松餃子ポテトチップス」などの地元限定ポテチ、「治一郎のバームクーヘン」、「みそまん」、などなど、語りたいものはたくさんあるが、自己規制文字数が限られるので今回は深くは触れない。けれど、こう書きながらふと思う。あれ?すっかり私は浜松の人?
浜松に向かう新幹線の車内で、2人宴会を行うのも楽しみだった。お気楽夫婦のSNS仲間にとっては、季節の風物詩。年末になると、新幹線の狭い折畳みテーブルの上に乗り切れないほどのつまみや弁当を載せてビールを飲む(私だけ)風景がアップされると、あぁ年末になったんだなぁと思っていた?と思う。お気楽妻が“ひとり娘”になるための、ある種の通過儀礼?のような時間。私にとっては“マスオさん”生活に向かうための準備だった。もうそんな宴会も開かれない。「また行けば良いじゃない」と、お気楽妻は言うけれど、今までとは意味合いが違う。今回の浜松旅行で、私にとって第二の故郷とも呼べる浜松には別れを告げた。新たな旅先としての浜松を訪問することはあっても、それは違う街だ。とは言え、「Adieu ! (永遠のさよなら)」ではなく、「Au revoir !! (また会う日まで)」と、浜松に言おう。