以前その店は「BAR808」という名前だった。年に数回だけOPENする小さな店。会員制ではないけれど、マスターの知り合いである必要がある。決まったメニューはないし、凝った料理は出ない。他の店で食事を済ませた後に立ち寄るのが基本。ビール、ワイン、シングルモルト、ジン、ウォッカ、テキーラ、焼酎と一通りの酒は用意してあるが、持込みも歓迎される。ご近所の名店、「ル・プティ・ポワソン」「ショコラティエ・ミキ」のスイーツを味わいながら、紅茶やコーヒーを楽しむ客も多かった。そんな店がコンセプトを変えて「ビストロ808」として生まれ変わった。
新装開店前にプレOPENのパーティを開催。設計を担当した建築家の友人をはじめとした関係者?をご招待。その日の料理は本格OPEN前ということもあり、姉妹店(笑)の「ビストロ・トロワキャール」から取り寄せた絶品シャルキュトリーの盛合せがメイン。サラダやマリネなどの野菜を中心とした料理だけを808のシェフが担当した。トロワのシェフ聡ちゃん直伝のキャロットラペはオリジナルの味わいで好評。プティトマトのマリネ、柿とクリームチーズのサラダと共に定番メニューに決定。新装記念に購入したストウブを使った焼き野菜のサラダは改善の余地ありという結果になった。
正式OPENはその数日後、20年来の友人たちを招いて開催された。前菜は定番のキャロットラペ、プティトマトのマリネに加え、パテドカンパーニュ(を作る予定がミートローフに変身)、スーシェフの担当したローストビーフなど。「どれも美味しいぃ〜っ」「オシャレな料理だねぇ」と招待客にも好評。盛付けには自信があったものの、味付けも良しとの評価にほっと胸をなでおろす新米シェフ。舌を鍛えるために(?)食べ歩いて来た成果が出せたか。とは言え、焼き加減が微妙でミートローフに変更したパテドカンパーニュは、師匠の聡ちゃんから調理のコツを聞き出すことにしよう。
メイン料理はカスレ。豆とソーセージを煮込んだフランスの田舎料理。これも良い出来。友人の買って来てくれたバゲットにぴったり。そして課題だった焼き野菜。前回の反省を踏まえ、レシピを大幅に変更。アスパラガス、プティシュー、ブロッコリー、ピーマンと緑の野菜に限定し、彩りを兼ねてセミドライトマトを加えた「緑と赤のクリスマスヴァージョンの焼き野菜サラダ」が完成。ストウブの使い勝手が分ってきたこともあり、シャキシャキほくほくと絶妙な火の通り加減。トマトの酸味と天然塩で野菜の旨さが引き立つ一品となった。実に旨い。ビストロ808の名物料理に決定♬
「シェフ、どうもありがとう。どれもとっても美味しかったぁ♫」満面の笑みで帰って行く友人たち。「お疲れさま、なかなか良い出来だったよ」とお気楽妻が微笑む。スーシェフなのに、シェフに対してちょっと上からの物言いが気になるが、良しとしよう。こうして新装なった「ビストロ808」が無事にOPENした。次回の営業は年末。腕を磨いて、皆さまのご来店をお待ちしております♡

リノベーションが完了して1ヶ月余り、ようやく新たな住まいがお気楽夫婦にフィットしてきた。出来立てのわが家はまだまだ余所行きの顔をしていて、モデルルームに仮住まいしている気分が拭い切れなかった。その後、残工事を(ほぼ)終え、収納方法を工夫し、自分たちなりの生活空間の動線を決めていきながら、日を追う毎にじわじわと馴染んで来た。そんなある日、プロのカメラマンに撮影してもらったわが家の画像が送られて来た。半日がかりの撮影、そして加工行程を経て仕上がったわが家の完成記念画像。う〜む、さすがプロの技。別嬪さんに撮られたわが家の麗しの姿にほれぼれ♡。

そこで、改めてわが家を別嬪画像でご案内。リビングダイニングルームは明るく広々として快適な空間に仕上がった。20年前に購入したお気に入りのダイニングテーブルは、何度か自分で塗り直していたものを、今回はプロに依頼。周囲の家具の色調に合わせて塗り直されたテーブルは新たに誂えた趣き。以前のテーブルを知る友人たちでさえ、「え!これって前からあったテーブルなんだ!」と驚く仕上がり。さすがプロの技。シンメトリーに配された造り付けのTVボードは、今回のリノベーションの象徴。TVの周囲は隠し、左右の文庫用本棚は魅せる収納。お気に入りのコーナーだ。

ワイングラスなどを飾るカップボードはガラス扉。奥行は梁のサイズに合わせ250mmと浅くして、すっきりと見せて、かつ効率よく収納できる。エアコンとレンジフードのダクトを収め、かつキッチンの収納吊り棚と一体化させ、ダイニングルームを包み込む効果を生み出す天井周りの建具は秀逸。アーチ部分の仕上がりは芸術的ですらある。対面式にしたキッチンも生活感が出ない工夫があちこちにある。使わない時には収納棚に格納されるレンジフードはその典型。天井高2500mmまで上げた玄関にはアクリル板を嵌め込んだ内扉を設置。外の冷気を遮り、廊下を生活空間に変えるマジック。

書斎とベッドルームは一体化し、以前より広く明るく感じる空間に変わった。ヘッドボード代わりの腰高壁を目隠しとしつつ、リモコンやメガネなどを置くために壁の厚みを活かしたニッチを設置。ホテルのベッドサイドにあるような読書灯付き。小さな工夫の組合せで眠りにつくまでの時間が実に快適になった。住まいの中心にあるのが洗面所とバスルーム。扉を開け放つと3方向からの採光で明るく開放的。鏡の下には女優ライト付き。ガラス扉のバスルームは、洗面所との仕切り壁もガラス。マンションには珍しいバスルームの窓を最大限に活用。すっかり入浴時間が長くなった。
「ウチにいるのが楽しいって良いよね」妻の短いコメントに、してやったりとほくそ笑む。年初、とある不動産会社のモデルルーム見学をきっかけに、本格的にリノベーションの計画を立て、あっという間に実行した1年だった。当初の予算を大幅に超えてしまったけれど、わが家のリノベーションは大成功。満足の完成度。計画から建築中(仮住まい生活を含め)そして完成まで、たっぷりと楽しめた。そして今、完成したわが家「808」を日々堪能している。改めて友人の建築家、ヒロベくんに感謝。
*ご興味がある方は、彼の事務所のサイトをお訪ね下さい。雑誌『モダンリビング』最新号の表紙も飾ったとのこと。ステキな建築写真が満載です♡
☆「廣部剛司建築研究所」 http://www.hirobe.net