どこに泊まるか、何を読むか「バニヤンツリー ウンガサン」

VacancesNight年度が始る頃、妻の忙しさは最高潮。その頃からお気楽夫婦のヴァカンスの準備が始まる。まずはどこに行きたいか、ではなく、どのホテルに泊まりたいかが最優先。こぢんまりとしたラグジュアリーなホテルであること、ジムがあること、部屋は充分な広さと読書スペースがあること、それがホテル選びの基準。2014年、妻が選んだのは「BanyanTree Ungasan Resort」。バリ島の南端にある、ヴィラだけのリゾート。バリ訪問は3度目、バニヤンツリーはビンタン島、プーケット島など4ヶ所目の訪問。2人のお気に入りの組合せ。そして楽しみなヴァカンス計画は忙しい最中の妻のニンジンだ。

LivingroomBathroomう一つの準備はヴァカンス本。2人が普段は読まないハードカバー、じっくり読みたいシリーズ物、のんびりヴァカンスに向いている作家などが選択基準。2014年は村上春樹『女のいない男たち』、ジェフリー・アーチャーのクリフトン年代記2巻4冊、スペンサーシリーズの研究本など計10冊を読まずに貯め置いた。よしっ!これで準備万端。夏の旅は軽装。短パン、Tシャツ、しゃらしゃらしたワンピース、ランニング用のシューズなどを詰めてもスーツケースは1ヶで充分。日曜の朝、自宅から羽田までタクシーでわずか30分。快適な旅の始まり。羽田空港発、シンガポール経由でバリに飛ぶ。

BedroomBedsideょっと計算間違って、宿泊代かなり高かったんだよねぇ」今さらながらに妻が言うには、ヴィラは全室プール付き、最も狭い1ベッドルームでも400㎡、1泊の宿泊代は…聞かなかったことにする。陽が沈んだ後にチェックイン。広い敷地のリゾート、カートでヴィラに案内される。ヴィラの門のドアを開けると、水盤に浮かぶ敷石路。そこを抜けるとマイプールに直行できる。途中の入口を開けると広いリビング&ダイニング。廊下を通って右手にベッドルーム、左手に巨大なバスルーム、シャワールーム、2面×裏表の洗面台、クローゼットとトイレは2ヶ所。うむむ、迷いそう。宿泊代を思い出し納得。

JacuzziPool朝、改めて数日間滞在することになるヴィラを探索。天井が異様に高いリビングルームには大きなソファ、ダイニングルームの椅子の座り心地も良く、直接プールにエントリーできるベッドルームには眺めの良いカウチ。どこも心地良い読書スペースになりそうだ。庭に出るとデッキチェア、ジャクージは温水、ちょっと冷たいけれどマイプール(ここには裸族が現れそうな予感)は広々。庭のガゼボ(東屋)にも大きなソファ。これはゼータクだ。ジムで汗まみれになったウェアも、ここにたっぷり干せそうだ(これ大事!)。眺めて廻るだけで笑みが零れる。ひたすらリゾート内に籠る2人はぴったり。

MainpoolPoolside食の後、レストランの傍らにあるメインプールでのんびり。プールサイドにはガゼボ風のパラソルと一体型の巨大カウチ。プールを渡る風が涼やか。日射しは強いけれど、気温は30度程度、湿度も低く、読書にはぴったり。「ここ、気持良いねぇ」妻がくったりヴァカンスモードで寛ぐ。往路の機内で読み始めた萩原浩の『砂の王国』が早くもエンディングに差し掛かった。順調過ぎる読書ペース。夏旅で読む本は、その時に過ごした景色や空気と結びつく。決して明るい物語ではないけれど、この爽やかな青空と繋がるのなら、厳しい結末にも希望の欠片が混ざっていそうな気持になる。

GymSpa体が解れたぁ〜」ジムで1時間ほど走った後、エアコンの効いたストレッチルームで身体を伸ばしながら妻が独り言つ。飛行機で移動した翌日は身体を動かすのが一番。アクティブレストが最善だと信じる2人。実際、数時間座り続けた身体は硬くなっており、一晩眠っただけでは完璧なリラックスモードに入らない。汗を流し、シャワーを浴びてスッキリとした後、冷えたビールをぐびぐびと飲めば、ヴァカンス気分突入。午後はプールサイドで読書三昧。夕暮れ時にエステでマッサージを受ければ完璧なぐだぐだリゾートモード。どこにも出掛けず、海にも入らない、2人のヴァカンスが始った。

旬のムールをフレンチで♬「ビストロ トロワキャール」

BeerGelee辺の街で育った子供の頃、砂浜の海水浴場ではなく、岩場で潜って遊んでばかりいた。獲れるのはサザエ、たまにアワビ(子供には難しかった)、岩牡蠣、そしてインゲェ(イガイ)と呼んでいた黒い貝。早い話が密漁。子供たちが獲って食べる分くらいは大目に見てもらっていた、長閑で水産資源も豊かだった時代。イガイを茹でたり焼いたりの素朴な食べ方しかしていなかった田舎で、その貝はフランス料理などでも使われるムール貝なのだと東京に住む従姉が教えてくれた。ふぅ〜ん、と聞き流して十数年後、その味を知り、驚き、思わず頷いた。その後、メニューにあれば必ず注文する大好物となった。

Tomatoる週末の夜、あるシェフがfacebookにアップしたムール貝の画像にまんまと釣られ、急ぎ仕事を終え店に向かった。とは言え、まずはビール。喉越し爽やかな白ビール、ヒューガルデンをぐびり。ふぅ〜。夏のヴァカンス直前の残務を処理する慌ただしい日々にひと息付く。目の前に出てきたアミューズは、肉自慢のビストロとしては珍しく、プティトマトのジュレ。皮と実の境目が分らない程柔らかで繊細で、甘さは野菜ではなく、もうこれは殆どフルーツ。適度に酸味もあり、濃厚。実に旨い。入荷の姿を見せてもらうと、一つ一つ丁寧に包装され、まさしく千疋屋に売っていそうな高級果物。ジュ・ド・べべ(Joue de Bebe:赤ちゃんのほっぺ)という品種だと言う。日本の農業の向かう先はこんな品種を育てることだよなと、独り言つ。

VinUsualつもの感じで良いですか?」とシェフの聡ちゃんが尋ねてくれる頃、残業を途中で打ち切り、パソコンを抱えた妻が遅れてやって来た。まさかリゾートまでパソコンを持ち込まないよな?という疑惑を顔には出さずに乾杯。良いタイミングでいつもの感じのオードブル盛合せが供される。フロマージュドテット、リエット、サーモン…。白ワインを飲みながら、一品一品を丁寧に味わう。お気楽夫婦にとってすっかり定着したこの一皿は、メインと言っても良い一皿。小食の2人は、この豊かで饒舌な皿だけで充分満足できる。が、今日はムール貝、それにこれも旬の鮎のコンフィも!と意気込む。

AyuMouleずは鮎のコンフィ。頭も骨も気にせず全て食べられる中型。ほろほろと崩れる繊細な身と共に、鮎の香り、肚の苦みを一口に頬張る。旨ぁ〜いっ。そこに待望のムール・マリニエール登場。海産物として初めてAOC(原産地統制呼称)を獲得したモンサンミッシェル産のムール貝を、ニンニク、オリーブオイル、白ワインなどで味付けた漁師料理が起源の素朴な一皿。山盛りのフリット(フライドポテト)と一緒に食べるのがお約束。モンサンミッシェルのムール貝は、小振りなのに火を入れても縮まず、味は濃厚。ひとつ目を食べ、空になったムール貝の殻を使って2個目以降をパクつく。会話を止める旨さ。

味しかったなぁ♬やっぱり、行きたい!と思った時にさっと行ける店が良いなぁ」と妻。松陰神社前駅から徒歩30秒、残業帰りに思い立っても伺える。人気の店だけれど、毎日満席という訳ではないから、カウンタ席なら2人でサクッと食事ができる。小さな店なのに、きちんと季節の味が楽しめる。相変わらず良い店だ。ということで、夏はムール貝の旬。まだの方は、ぜひ!

ピッツア食いねぇ、スカンピ食いねぇ♬「プルチーノ」

Eri&MinaSkampi気楽夫婦の住まいの近辺には飲食店が多い。と言うよりは、飲食店街の中に2人の住むマンションが建っていると言っても良い程。何しろ、駅から徒歩2分のマンションの入口までの間に、中華料理店4店!居酒屋系7店、総菜屋、寿司屋、蕎麦屋、ウドン屋などが各1店、スナック系は数知れず、もちろん八百屋あり、魚屋あり、コンビニあり、輸入食品屋あり、というものすごく食に偏って便利な、お気楽夫婦にぴったりな商店街。さらに、マンションから徒歩1分のところに、めぇ〜る街というほぼ飲食店だけが30店以上集まる商店街がある。*小さな郵便局があることが街の名前の由来。

MargheritaPizzaぇ〜る街には、石垣牛ステーキ店があり、ハマちゃんことN田敏行さんも行きつけの美味しい焼鳥屋があり、フレンチビストロがあり、餃子専門店があり、有名パティシエのパティスリーもできた。最近(ご近所で)話題の注目スポット。その中の1軒に「プルチーノ」という小さな店がある。イタリアンの店というよりは、ピッツァがウリのピッツエリア。トマトソースベースのピッツアが12種類、トマトソース以外のピッツアが8種類、それ以外にも季節毎に限定のピッツァがメニューに並ぶ。この店の本格的な石窯で焼くピッツァが、どれも実に美味しいのだ。

Pizza3Pizza2カンピ食べたぁい!」スカッシュ仲間の酒豪女子のひと言で、その日に飲んだくれる店が決まった。スカッシュで汗を流した後に、妻と3人でプルチーノに向かう。少人数で食べるにはぴったりの、こぢんまりとした店。そしてピッツァが美味しいこの店の石窯で焼く、スカンピが絶品なのだ。ここ数ヶ月、何人かの友人とこの店でスカンピを食べ、ピッツァを平らげ、その度にfacebookにアップ。それを読んだ酒豪女子。大好物のスカンピに心躍ったらしい。「おいっしい!」エビ味噌と、卵と、香ばしく焼き上がった身にレモンを絞り、パクり。絶品。良い香り。ワインがススむ。会話が弾む。

Kamaッツァは何食べましょうか。基本のマルゲリータが良いかな。このシラスと青のりも美味しそう♡」とスカンピとワインでご機嫌の酒豪女子。じゃあ、スカッシュでたっぷりと汗を流した後だし、両方行っちゃおうか!「良いよぉ」ピッツァ好きの妻にも異存はないらしい。熱々のマルゲリータが登場し、満面笑みの小顔の2人。「うん、ここのピッツァ美味しい♫」それは良かった。自分たちのお気に入りの店で、美味しいと言ってもらえると、自分の店でもないのに思わず嬉しくなる。食いねぇ食いねぇ、シラスと青のりのピッツァも。ワインは勧めなくても飲んでるから良いか。

味しかった♡今度はまた“てとら”にも行きましょう」またそんな嬉しいことを言ってくれる酒豪女子。次回はぜひ!と言いながら顔が綻ぶ。そうなのだ。実に困ってしまうのだ。お気楽夫婦の生活する環境は、お気に入りの飲食店で溢れている。一緒に飲んで楽しい友人たちに囲まれている。実に嬉しい誘惑に満ちている日々だ。「飲み過ぎてお風呂で寝たりしなければね」…と、妻の歯止めも漏れなく付いてくる。そんな街に、2人でずっと住み続けるのだろうなぁ。

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SINCE 1.May 2005