初夏の京を訪ねて♬「用賀 本城」

HonjoJunsaiめて本城さんとお会いしたのは、10年近く前のちょうど今頃の季節。京都の名店「たん熊北店二子玉川店」のカウンタ席だった。「久しぶりなんで指切ってしまいそうですわ」と言いながら、ざっざっごりっというリズミカルな音で鱧の骨切りをしていた本城さん。料理の味はもちろん、その人柄、気遣い、店の居心地の良さに惚れ、季節毎に通った。それから数年後、独立して出した店の看板には「たん熊」の「たん」の文字があしらわれている。その独立からあっという間に5年。同じ季節に「用賀 本城」のカウンタ席に座り、初めて店に伺った時の話を向けると「そうでしかねぇ」と言いながら、骨切りを続ける本城さん。ざっざっごりっという心地良い初夏の音。

HamokiriHamo席のお断りが看板横に貼り出されていたその日、女将さんにそう話しかけると「いぇいえ、今日はたまたまですわぁ」と女将さん。だったらお気楽夫婦は福の神ですねと返すと「はい。毎日来てください」と笑顔。「せめて毎月来たいなぁ」と真剣に答える妻。おいおいっ。鮮やかな切子の器に盛られた蓴菜の酢の物から料理がスタート。口の中に爽やかな初夏の風が吹く。無花果の味噌餡掛けに続いて、海ブドウが添えられた鱧の湯引き。梅肉ダレの酸味と抜群の相性。ミズダコのお造りには甘辛く煮込んだ吸盤。どちらも歯応え良く、味の組合せが新鮮で、思わず笑みが零れる美味しさ。ビールを飲み干し、辛口の酒に進む。ふふふ。口福な時間はまだ始ったばかりだ。

CrabAyu城さんがトリュフのような茶色の塊をスライスし出した。聞けばやはりトリュフ。「サマートリュフは香りは弱いですけど、ウチでもお出しできる値段ですわ」とのこと。そのフレッシュなサマートリュフは、カニの甲羅に載ってグリーンアスパラと供に登場。充分香りが立ち、美味しいけれど、前座。そして、いよいよ初夏の味人気No.1(お気楽夫婦調べ)若鮎の登場だ。稚鮎も子持ち鮎も捨て難いけれど、塩焼きにして食べるには若鮎が断然美味しい。その上品な香りと一緒に、頭から尻尾までしなやかな身を全て丸かじりできる幸福。大皿のステージ上で、鱧の押し寿司、白子焼きを従え、堂々たるセンターポジション。あぁ〜っ、ひと足早く舌の上に夏がやって来たぁ♬

EriSobaさんは身欠きニシンお好きでしたか」ひと通り夏の京都の味を堪能したところで、本城さんから声が掛る。「えぇ、フツーに好きですよ」そう言えば、以前私はニシン蕎麦が大好きで、妻はあっさりとしたウドンの方が好きだというと、小鍋に別々に出汁を取って、蕎麦とウドンを出していただいたことがあった。それを覚えていてくれた模様。するとシメに出てきたのは、やはりニシン蕎麦。嬉し〜いっ。お久しぶりのご対面。繊細に刻んだネギをあしらった椀には、祇園「原了郭」の黒七味が添えられる。絶品。ん〜、美味しい。蕎麦はお江戸やその周辺のものだけど、ニシン蕎麦だけは京都が旨い。しみじみと繊細な出汁を味わう。

を今年はみんなで食べに来ます!」と妻が帰り際に宣言。昨年、本城さんにお願いし、鮎尽くし料理を美味しくいただいたことが仲間に知られ(ブログの記事にしたから当然なのだが)、来年は参加したいというメンバーが集結中。…初夏の味を楽しんだのはつい先日のことなのに、京都の四季を味わう店、「用賀 本城」の盛夏が待ち遠しい。

お手軽レシピ♬「サラダランチ弁当」

CarotteRapeeのランチは、カロリーメイトなどのサプリメントを食べるだけ、ということが多かった。そんな日々を続ける内に、「野菜が足りない!」と言いだした。野菜サラダの弁当を作って持って行こう!と意気込んだものの、初日から挫折。サラダランチ弁当を作るのは、朝が早い私の担当となった。目の前にあるJAの直売所で、毎週末に1週間分の野菜を買込み、だいたいのローテーションを考える。大根、ニンジンなどの根野菜や、水が出にくいプティトマト、パプリカ、ズッキーニ、ラディッシュなど、世田谷産の野菜中心をたっぷり買っても1,000円前後。形が不揃いだったり、色が悪かったりもするけれど、新鮮で美味しい。日持ちもする。今週は宍戸さんのニンジン、杉田さんのキャベツなどと、生産者の名前を確認しながら選ぶのも楽しい。

Coleslawシピは簡単なのが基本。見た目の色合いを気にすることと、飽きないようにバリエーションを付けることが必須。その日のインスピレーションで、野菜の組合せや味付け、切り方を変える。例えば、キャロットラペ。フランスの常備菜。ニンジンの皮を剥き、スライサーで細切りにし、塩を振って味が沁み易いように軽く手で絞る。そこにオリーブオイル、ワインビネガー、レモン汁(もちろんボトルのもの)、ハチミツ、ブラックペッパー、パセリなどを適宜入れて混ぜて、冷蔵庫で冷やし、しっとりさせてから弁当箱へ詰め込む。アーモンドスライス、干しぶどう等、酒のつまみで余ったモノを加える場合もある。作って5時間後くらいに食べる頃には味が馴染んでいるはず。多めに作っても酒のつまみになる。白ワインに良く合う♬

Daikonールスローも定番。新鮮元気な世田谷産キャベツを使って、カンタンにできる。細かく切ったキャベツを軽く塩揉み。水を切って、コーン入りツナ缶を混ぜ、塩胡椒。その後は、マヨネーズや市販のドレッシングで和える。妻の好みは薄味、油分少なめ。塩胡椒を多めに、ドレッシングは少なめにして、野菜本来の味が前に出るように心がける。バリエーションが限りなく広がるのが蒸し野菜サラダ。食べ易い大きさにカットした野菜に塩胡椒、オリーブオイルで下味を付け、ココット鍋に入れ、電子レンジで1分前後蒸す。いったん取り出し、火の通りにくいものは再度蒸し直すが、野菜は固めに仕上げるのが基本。そして冷ましつつ、市販のドレッシングで和える。ドレッシングは何種類か用意してあり、味付けのバリエーションに留意する。

Fruitsは大根サラダが多くなる。細切りにした大根に塩を振り、キッチンタオルで軽く水分を絞る。そこに缶詰の貝柱。塩胡椒。マヨネーズ系の味でも、柑橘系のドレッシング、ゴマドレッシングでもOK。味付けによって乾燥刻み柚子、サラダ用ジャコなどを混ぜる場合もあるし、彩り良くするためにラディッシュを加えたり、乾燥パセリを加えたり。いずれも昼頃にはしっとり美味しくなっているはず。リンゴや梨などの季節のフルーツを使ったサラダもいける。果物を小口に切り、塩水に浸し色止めをして、その後に水分を拭き取り、イタリアンなどの香辛料が多めのドレッシングと、クリームチーズとブラックペッパー、そしてレモン汁と和える。仕上げにパセリをぱらり。柑橘系のドレッシングでも合う。ワインにも合う。

わぁ、こんなにヴォリュームあるんだぁ」調理中のボウルを覗き込み、妻が驚く。ピシッと閉じる密閉容器が弁当箱代わり。見た目よりもかなり入るし、中途半端に残っても嫌なので、ぎゅぎゅっと詰める。2種類のサラダが入った弁当箱は、毎日ずっしり重い。サプリメントやベーグルと一緒に食べているらしいが、小食の妻なら満足な量のランチ。健康的かつ経済的で一石二鳥な弁当。そして私はと言えば、時間と戦いながら手際良く工夫して作るのが毎日楽しく、すっかり趣味の世界に突入したサラダランチ弁当、間もなく3年目に突入!

故郷(再)発見「加茂水族館、土門拳記念館、他」

Kamo3Kamo420年前に母が倒れ、長い闘病生活の後、7年前に逝った。その間、母の介護を続けた父は昨年母の元に旅立った。この20年間、父母を見舞うために故郷の街を訪ねる度に、新たな故郷を知ることになった。と言うよりは、故郷で過ごしたのは高校生までの18年間、離れていた期間はその倍以上だから、故郷を初めて知ったと言っても良い程。例えば、加茂水族館という小さな水族館がある。子供の頃に数回訪れた記憶がある程度の、地味でローカルな施設。それが、バブル崩壊後入館者も減り閉鎖の危機が訪れた頃に、起死回生の展示を開始した。1997年にクラゲ展示に特化した水族館となったのだ。

Kamo1Kamo22000年にはクラゲ展示館「クラネタリウム」を設置し、クラゲの種類世界一となり、人気が急上昇。マスコミなどでも多く取り上げられた。ギネス記録登録もされ、年間入場者数は最少だった97年の3倍!とV字回復。そんな施設を数年前に妻と共に訪れたことがあった。相変わらず地味ながら、くらげの展示は期待以上に美しく、くらげアイスやくらげラーメン(食べなかったが)を売店で販売するなど、徹底した展示戦略になるほどと感心した。そしてこの春、父の1周忌の際に立ち寄ると、見違えるような施設として(翌日に)新規OPENというタイミングだった。なんだか嬉しく、頑張れ!という気分。

DomonDomon2門拳記念館(1983年に開館)も故郷を離れてから知った施設。地元出身の世界的な写真家である土門拳から寄贈された作品を中心に展示する、日本で初めての写真専門の美術館。「古寺巡礼」「ヒロシマ」「筑豊のこどもたち」などの代表的なシリーズ作品がじっくりと楽しめる土門の作品展示はもちろん、建築としても魅力あるもので、水と光の取入れ方の美しさに館内を巡るだけでも楽しめる。借景としての公園の緑、鴨が泳ぐ池、そして鳥海山を望む風景に、良い場所だなぁと観光客気分で楽しむことができた。今回は訪れることはできなかったが、妻と一緒に訪れること数度。おススメのスポットだ。

SunsetSakata本海の夕陽が美しいと知ったのも、オトナになってから。子供の頃は、日は海に沈むというのが当たり前としか思っていなかった。その美しさも、日常的なものであり、今日見られなくても明日見られるという、永遠の時間を持っていた子供だった頃の感覚。だからこそ、オトナになり、空も海も茜色に染める夕陽に久しぶりに出会った時、その夕景に心震え、嬉しく、誇らしく、懐かしく思った。歳を取ったからでもあるけれど。そして、「山居倉庫」という庄内米を貯蔵した倉、地産地消の有名レストラン「アルケッチァーノ」、和モダンの宿「湯どの庵」など、観光客気分の帰省を続けた。

見舞いばっかりで申し訳ないねぇ」毎回の帰省はお見舞いか法事。亡くなる前の病室で、父が申し訳なさそうにお気楽妻に詫びたことがあった。「あちこち行ったり、美味しいモノ食べたり、楽しんでますよ」同行する妻は明るく答えた。あれから1年。次はどこに故郷を発見しに行こうか。

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