下高井戸は海の側?「まきたや」

namashirasuNamerou身は果たして料理なのだろうか。食材を仕入れて切って並べるだけじゃないか。そんな疑問は、この店を訪れると霧散する。下高井戸の「まきたや」。旬の美味しい魚を仕入れる目利きで、食材のコンディションを保ち、最も美味しく味わえる切り口で、食欲をそそる美しい盛付けを施し、実に見事なタイミングで供される。その日は、生シラスとタコを入れた盛合せをオーダー。組合せとして選ばれたキスと鰹を従え、生シラスが登場する。思わず見とれ会話が止まる美貌。食べてみて!と艶かしく訴える魚たち。そして美しく銀色に輝き、食べて食べて!と合唱する生シラスたち。見事な料理。

TakenokoNikudoufuシラスを箸でつまみ、生姜醤油を軽く付け、口の中へ迎える。うわぁ〜っ!思わず声が出る。するりとした独特の食感の生シラスの甘さと旨味、ほんのり生姜醤油の香りが口の中に広がる。身悶える旨さ。実は、数日前に仕事で出かけた逗子で、不漁のために生シラスが食べられなかった。漁のありなしで海の側でも食べられない新鮮でデリケートな魚。それがこの街で、この店で、食べられることの嬉しさ、ありがたさ。美味しいですねとカウンタ越しに板さんに声を掛ける。ちょっとはにかんで「ありがとうございます」と返される。奥ゆかしく、距離感も良い感じ。

KurosawaDaisekkei長、この店どれも美味しいですね。で、次は何食べます?お酒も次行きましょう♬」私を隊長と呼ぶ前職の後輩女子は、食欲たっぷりの上に飲んべ。連れて来るにはぴったり。鯵のなめろうはもちろん、筍にチーズを挟んで焼いた一品も、名物料理の牛肉豆腐温玉乗せも、「うぅ〜っ、美味しいっ」と唸る。まんさくの花に続き、信州の名酒、生もと造りくろさわ夏生をぐびり。ん、旨い。軽やかな夏の酒。同じく信州安曇野の大雪渓をぐびり。これまた旨い。ここ「まきたや」は、日本酒のラインナップが充実している嬉しい店。美味しい肴と魚たちに、思わず酒も進んでしまう困った店でもある。

Makitaya長、今日は終電の1本前で帰れました。自分で自分を誉めたい感じです」同行飲んべ女子のコメント。ふぅ〜む。酔っ払いは自分に対する評価基準が甘い。他人を観察すると良く判る、ということは自らも戒めなければと誓う。それにしてもよく飲んだ。最後に飲んだ「蒼空」という伏見のお酒は、爽やかで夏にぴったりの飲口。開店早々に入店し、カウンタの端でさし飲み。いつの間にか満席になり、予約なしの客を何組かお断りする程の人気店に、閉店まで居座った。店にとっては嫌な客。それでも居心地良く、美味しい酒と肴を味わいながら、延々と話を聞き、良く笑い、たっぷりと話をした。店との相性、飲む相手との相性が合えば、いつもこんな飲み方になる。

つものことじゃないですか」と飲んべ女子。言われてみると、その通り。「まぁ、彼女と飲むときはちょっと危険だね」と妻。ふぅむ。客観的に見てもそうらしい。海の側にあるような美味しい魚を供する店に、美味しい日本酒を心地良く飲ませてくれる店に行く際は、せいぜい飲み過ぎに注意しなければ。

自由が丘か、千歳烏山か「ナボナ vs パンセ」

Navona50thボナはお菓子のホームラン王です」ある世代以上の方なら誰でも知っているTVコマーシャル。ホームラン王として子供たちに大人気だった王選手がユニフォーム姿で登場し、笑顔でそのセリフを言うのだ。これでナボナも、東京自由が丘・亀屋万年堂も一躍有名になった。ナボナを食べたことがない子供はいても、ナボナを知らない子供はいなかった。◎◎は△△のホームラン王です、という言い回しも誰もが一度は使ったはずだ。そのナボナが発売50周年だという。ナボナが誕生したのは東京オリンピック開催の前年、1963年。1960年に始まったカラー放送開始から3年、カラー放送の番組はまだ少なく、新聞の番組表やTV画面の端に「カラー」の文字があった時代。洋菓子などはまだ一般には食べられていない頃。

Pensee心たちばな」という菓子店がある。本店は世田谷区の千歳烏山。朝日新聞の1面、題字下に広告を出していたこともある。創業昭和34年。その創業の頃から作り続けている菓子が「フレッシュパンセ」というブッセ。ブッセとは、サクッとした軽い歯触りの焼き菓子で、中にクリームやジャムをはさんであるもの。世田谷の銘菓として、周辺住民にはお馴染みの定番菓子。直営の数店以外にも、京王百貨店や調布パルコなどに売場を持つ。パンセ以外は和菓子が中心で、「花仙堂」という定番の創作和菓子や季節の和菓子が贈答用にも人気。それでも京王線沿線、千歳烏山周辺住民なら誰もが知っている、それ以外の地域では知る人ぞ知る、というポジション。

Jiyugaoka和13年に創業した亀屋万年堂が、王選手をCMに起用したのは昭和42年。創業者のお嬢さんがジャイアンツの選手、コーチ、二軍監督だった国松彰氏と結婚したのがきっかけだという。ちなみに国松さんは引退後、亀屋万年堂の社長となり、現在は会長職にある。直営の店舗数は東京、神奈川に約60店舗。それ以外にも取扱店舗は関東周辺に数十店舗。ナボナ発売50周年で記念パッケージにしたり、復刻版ナボナを販売したり、話題づくりも巧み。自由が丘という街のブランドが高まったこともあり、ナボナは今や自由が丘近辺だけではなく、広く浸透した東京銘菓となっている。

Navona由が丘と千歳烏山、それぞれの街に仕事で関わる立場として、ナボナとフレッシュパンセを比べてみた。ナボナのパッケージは50周年を記念した6代目。since1963の文字を配した華やかでシャレたデザイン。それに対し、パンセは落着いた色彩の上品な和紙のパッケージ。ナボナの定番はチーズクリーム、それにカラーナボナとして宇治抹茶クリーム、さらに季節ナボナのレモンクリームなどをラインナップ。一方のパンセはチーズバターとアンズジャムが定番。そして春にはイチゴ、抹茶、夏には白桃、パイン、秋にはマロンなど季節毎のパンセが店先に並ぶ。

Eat番同士(ナボナはチーズクリーム、パンセはチーズバター)で食べ比べ。大きさや見た目はほぼ同じ。表面は敢えて違いを言えばナボナがふんわり、パンセはややサクッとした歯応え。ナボナのチーズクリームは甘めでボリューム感があるのに対し、パンセのチーズバターはしっとりしていて、ほんのりバター風味。うぅ〜む、どちらも美味しい。この地に30年以上住み、食べ慣れているからか、パンセの方が舌に馴染む。「この2つを比べたら、私はナボナかな」と妻。そんな彼女はパンセで季節を知るのだと言う。イチゴや抹茶パンセで春の到来を感じ、巨峰やマロンクリームが店先に並ぶと夏の終わりを実感するらしい。

由が丘発で全国区になったナボナ、世田谷の銘菓に止まるパンセ。商業的にはナボナの圧勝だけれど、地元密着で愛され続けるパンセの立ち位置も悪くない。ナボナがホームラン王なら、パンセは地元出身のレギュラー選手。それぞれの街を代表する2つの銘菓は、それぞれの街を象徴してもいる。

ついつい手が出る「ご当地ポテチ」

OchaKakegawa会いは妻の故郷浜松だった。鮮やかな新茶の緑のパッケージ。駿河湾の海洋深層水の塩、そして静岡のお茶を使ったご当地ポテトチップス。お酒を飲まない義父母が、呑んべの私のために買っておいてくれたもの。「ほぉ〜っ、美味しいね♬」妻もポテト好き。あっさり塩味に、ほんのりお茶の味。確かに美味しい。誉めまくって食べるお気楽夫婦に気を良くした義父母。行く先で目に付くと買っておいてくれるらしく、浜松を訪問する度にご当地ポテチがスタンバイ。ある時は掛川のお茶をまぶした、その名も「かけがわ茶っぷす」という地域限定ポテトチップス。脱力系のネーミングが楽しい。

MikanSakuraebi度はこれ買っておいたよ♬」義母が嬉しそうに差し出したのは、JAみっかびの人気(?)キャラクター「ミカちゃん」をパッケージに登場させた三ヶ日ミカンのポテトチップス。「ふ〜ん、遠くの方で確かにミカンの味だぁ♡」ミカン好きでポテチ好きの妻にとってはたまらん1品。ん、さっぱりと美味しい。好きな味。調子に乗った義母が畳掛ける。「香る桜えびのかき揚げ味」のポテチ。なんと、ポテチの名門カルビーが静岡限定で販売するご当地ポテチまで登場だ。各メーカーがテストマーケティングで先行販売する県だと聞いてはいたが、すごいぞ、静岡。これはすっかり趣味になってしまった。

ShinsyuTouhoku野にもあったよぉ♬」長野出身の友人がお土産に買ってきてくれたのは、わさびマヨネーズ味のポテチ。なるほど。これも美味しい納得の味。ワサビのぴりりと効いた味はビールが一段とすすむ。「だったら山形にもきっとあるね」妻の提案に、帰省の度に土産物店を捜索。ところがなかなか見つからない。米所の山形。お米を使った煎餅系の地域限定商品は豊富にあるものの、ポテチがない。諦めかけていたところに、ようやく発見。酒田の塩味、ざっくりポテト!おぉっ、これだ。ところが、パッケージを開けてみるとポテチじゃない。米と皮付きポテトを使ったスナック菓子。残念!

Kansai当地ポテチ捜索の旅は、西にも延びる。関西への出張のある日、ひとりホテルで酒盛りだと入ったコンビニで、発見。あの人気商品の堅揚げポテトの、関西だししょうゆ味。いかにも身体に悪そうな合成的な味。歯応えたっぷりの厚めのポテトはいつも通り。旨いっ。やるなぁ、カルビー。一気食い。やっぱり旨いっ!と翌日にオトナ買い。かさばるポテチを土産にお持ち帰り。「期間限定のヤツもあるよ」ある日、妻がコンビニで発見。「堅揚げポテト匠味 薫製鶏塩味」という8月末までの限定販売商品。ふんふん、これも良し。けれど、その場所に行かないと買えない地域限定商品の方ががさらに魅力的。調べてみると北海道限定の「北海道バターしょうゆ味」、九州限定の「九州しょうゆ味」があるらしい。

も、ナショナルブランドじゃなくって、地元メーカーのものが楽しいよね」と妻。おっしゃる通り。何でも手に入る東京にいて、その街に行かなければ食べられないものは貴重。次に浜松を訪ねた際には、どんなポテチが待っているのか♬

002315680

SINCE 1.May 2005