職業選択の自由「母と娘の風景」

Sena&JunpeiNewYearConcert業とは何だろう。生活して行くために収入を得るという経済性、社会の中で自らの役割を持って貢献するという社会性、そして自身の生き甲斐を充足させるための個人性。それらのバランスで成り立っているとも言える。何を優先させるかによって職業の選択肢は広がったり、狭まったりもする。振り返れば、経済性を優先した職業選択からスタートし、徐々に社会性や個人性に軸足を置いた仕事ができるようになった。多くの人との関わりによって、現在の仕事に到ることができたことを感謝する日々だ。

NamuljapchaeIGAIGA、年明けの週末って暇ぁ?」スカッシュ仲間の奥さまから声が掛る。新年早々に、娘のコンサートがあるという。「もちろん、行くさぁ!」妻が元気良く答える。彼女の娘は小さい頃からヴァイオリンと共に育ち、ヴァイオリンを中心に生活している。4歳から始めたヴァイオリン。桐朋で学び、イタリアに短期留学した。自らアマチュアのチェロ奏者としてずっと活動をしている父親とともに、彼ら家族の中心は音楽。父親の選択した職業の経済的成功のおかげで、父と娘は音楽を続けることができている。

TostyBabyNew Year Concert 2013」というタイトルの桐朋の同級生3人の小さなステージ。一昨年のクリスマスにも同じメンバーでコンサートを開催。当時3年生だった3人は、今ではそれぞれプロとアマチュアの狭間で音楽に関わっている。家族の支えによって好きな音楽を続けられる幸せなメンバー。当日も母親たちがかいがいしく裏方のスタッフを担当する。本人の才能と努力を掛けた係数だけでは音楽の世界で生活して行くことはできない。スポーツや芸術などの世界では富は集中している。僅かな、一握りの成功者が名声と富を手に入れ、多くの才能にはスポットが当たることはない。

KishichanKiyoshiンサートは素晴らしかった。アンコールの「アヴェ・マリア」は鳥肌ものだった。オトナになった3人の演奏は2年前とはひと味違っていた。そんな感想を言い合いながら帰路に付く。向ったのはスカッシュ仲間の地元、世田谷の高級住宅街。彼女の自宅に戻り、スプマンテで乾杯。地元の韓国料理屋で乾杯。いずれの会場でも同行したスカッシュ仲間の愛嬢が主役。「可愛いよねぇ。私もこんな孫娘が欲しいなぁ」巣立ちの時期を迎えた娘を持つ母親の素直な気持。娘の将来と、職業選択と、家族の形成と、もやもやとした不安と期待が混在する様子。

っという間に大きくなっちゃうよ」彼女の自宅に再度戻り、シャンパンで乾杯。周囲に慣れて来たスカッシュ仲間の愛嬢が元気に動き回る。「皆の注目を集めてるって分かると、すごく嬉しいらしいんです」新米ママが分析。彼女はどんな子供に、そしてオトナになるんだろう。「この娘、ちょうだい!」仲間の娘を撮影するベテラン母は満面の笑顔。きっと、この母と娘の光景は20年前の彼女の光景。

幸せ気分をご一緒に♬『幸福ロケット』山本幸久

Happyみ終わった後に、その先に続く物語を読みたくなる作品がある。読み終えたほっこりとした満足感と、もっと読み続けたいと思う欲求。残念ながらもうこれ以上読めないという淋しさ。すっかり感情移入してしまった登場人物のその後に想いを馳せる。彼らのその後のエピソードを知りたくなってしまう。そんな気持が複雑に混じり合う余韻を楽しむ。読後の時間は読書そのものの愉しみ同様に味わい深い時間だ。本を読むなら、読み終わった後に幸せになる方が良い。山本幸久の作品は、まさしくそんな気持にさせる。読むと元気になり、ぽわっと身体が温かくなる。『幸福ロケット』もそんな1冊だ。

Duck人公は小学生たち。11歳の、淡いけれど11歳なりの、拙く純情で、それでもきちんと悩み、打算もあり、深い嫉妬すらする恋の物語。なのに、50代も半ばを迎えたオヤヂがたっぷりと感情移入してしまう。男の子はこんなだったか、ふぅむ女の子はそんなこと考えていたのか。あっという間に山本幸久の術中にハマる。スムースな会話も秀逸だけれど、更に地の文が困る。ツボに入る。視点となる主人公の頭に浮かぶことばが、軽やかな文体で描かれる。人は口に出すことばを一瞬躊躇い、他のことを考えながら発したりする訳だけど、その心の動きを実にリアルに描き出すのだ。

Miharuる日、アヒルバス』や『美晴さんランナウェイ』など他の作品でも同様。主人公の女の子にエールを送ってしまう。健気で可愛い主人公に惚れそうになってしまう。独り言のような地の文で思わずクスッとしてしまう。そう、電車の中で読むには危険。時代小説やビジネス書を読んでいそうな風体のオヤヂが、黄色の表紙のアヒルのイラスト入りの文庫本を読んで微笑む風景はいかがなものか。物語の舞台はフツーの人々のフツーの日常。誰もが経験するであろう世界を描く。しかし、山本幸久の描く登場人物やエピソードが実に魅力的なのだ。後付けで好きになった仕事に頑張ってしまうバスガイドのデコちゃんにも、不器用で空元気な美晴さんにも肩入れしてしまう。あっという間に物語世界にハマり込んでしまうのだ。

MIna白いね。すぐに読み終えちゃうね!本の持ち主に感想メール。実は山本幸久作品は全て借りた本。借りた相手はスカッシュ仲間の小顔美女。「山本幸久いいですよね〜。嬉しい♬」と返信。いつの頃からか、愛読書の貸し借りをするようになった小顔美女とお気楽夫婦。お気に入りの作品を貸して、その感想を書いたブログ記事を紹介する。そして彼女のおススメを借りる。自分たちでは手に取らなかっただろう作家の作品が読める。2人で共有していた読後の幸福感を周囲に広げ、幸せな気分を共有できる満足感。オトナになってから味わう交換日記的な快感♬(笑)

ログで書いてたあの寿司屋に食べに行きましょう!」と小顔美女から嬉しいお誘い。良いねぇ。そんな幸せもおまけに付いて来る。

2人の故郷は「HAMAMATSU♡LOVE 」

PotatoChipsEspo末年始は妻の故郷浜松で過ごす。それがお気楽夫婦のここ10年のお約束。ひとり娘である妻。年老いた両親を想い、できるだけ一緒にいられる時間を作りたいと願う気持は良く分かる。仕事納めの日、2人だけで新幹線宴会をしながら浜松に向かう。妻は生まれ故郷に近づくにつれ娘に戻って行く。酒を飲まない義父母は、マスオになる私の好きなヱビスビールを買い込み、地元限定のポテチなどをつまみとして用意してくれている。

AbaloneFamily松に到着した翌日からは毎日スポーツクラブ通い。地元で知り合ったスカッシュ仲間にお相手をしていただく。妻のライバルは自転車やゴルフを楽しむアスリートオヤジ。2012年最後の対戦は3-2で妻の勝利。子供のような笑顔で飛び上がって喜ぶ妻。普段もストレスが少ない生活のはずなのに、さらにリラックスした妻の表情がどんどん柔らかくなって行く。大晦日前には家族4人で忘年会。温泉旅館に宿泊し、1年の垢を落とす。

WellSeasonSoba前酒で形ばかりの乾杯。酒を飲めない3人分のグラスが呑んベの前に集まる。年末にこうして4人で過ごすことができることに感謝して、独りで全て飲み干す。続いて地元浜松の酒「花の舞」をいただく。肴は浜名湖や遠州灘の海の幸。しみじみと旨い。風呂に入り直し、湯上がりにビール。火照った身体に冷たいビールがくぅ〜っと旨い。普段は飲み過ぎに厳しい妻もこの日は酒量に甘い。妻も自らに甘くゆるゆる。じんわりと幸せを味わう。

BenichiBenIchiOsechi越し蕎麦、お雑煮などの料理はマスオが担当。ちなみに年末の大掃除もお気楽夫婦が担当。ふだんは義父母の目が届きにくい場所を中心に徹底的に磨き上げる。いずれも年末年始の恒例。恒例と言えば「割烹弁いち」のお節料理もここ数年の定番となった。今年も数日前から全て手作りの料理を丹精したご主人。*Facebookに実況報告をされていた。このひとつひとつの料理の味わいが新しい年を待ち遠しくさせる。

Crabhatsumoudeの故郷浜松は、今や2人の故郷になった。地元限定ポテチも、広くゆったりとしたスポーツクラブも、気さくなスカッシュ仲間も、新装なった温泉旅館も、名割烹のお節料理も、全て2人のお気に入りだ。義父母が買っておいてくれたズワイガニを調理しながら、リビングで寛ぐ家族を眺める。口数の少ない3人は、短い会話をそれでも楽しんでいる様子。いつものように、これはこれで幸せな光景だ。これが愛すべき浜松の光景だ。

近所のお宮に初詣。滞在最終日に地元でお願いするのは義父母の健康。お気楽夫婦が一緒にいられない間も、義父母がつつが無く暮らせますように。

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