週に2回は…「汗の快感」用賀編

Shrimpに2回。それがお気楽夫婦の目標。そう、どうしても身体が欲する、あれである。たっぷりと汗を流し、シャワーを浴びた後の爽快感。そして、さっぱりとした気分で飲むビール。週に2回のスポーツクラブ通いは止められない。毎週日曜日はスカッシュのレッスン。10年以上も続けている、妻が最優先するスケジュール。海外旅行に行っても、日曜の朝には帰国し、午後のレッスンに間に合わせようとしたりもする。スカッシュが好きということもあるけれど、日本ナショナルチームのコーチでもある山ちゃんのレッスンに魅せられた。そして気が付くと、あっという間に10年も過ぎていた。けれど、10年以上続けている割には、相変わらずのお気楽スカッシュ。多少の技術的な進歩はあっても、体力は知らず知らずの間に落ちている。年に1回程度の大会参加がせいぜい。プロも参加するOPEN大会に出場(勝てなかったけれど)していた頃は、遠い昔。

SeaserSaladeして、平日にもう1回。「週の半ばで行っておかないと調子が悪いんだよねぇ」と妻。やはり毎週通っている整体の先生の見立てでは、彼女は腹式呼吸が苦手で、日常生活でも呼吸が浅い。横隔膜を動かすことができず、腹筋を過剰に使って(だから、妻の腹筋は鍛えていないのに、仮面ライダー!)呼吸をし、身体をコントロールする傾向にあるらしい。先生曰く、「空気の薄い高地トレーニングを毎日やっているようなものです」と言うことになる。マグロはえら呼吸ができず、泳ぎ回って酸素を取り入れることで呼吸をし、なんとか生きている。泳がないと死んでしまう。その意味から言うと、妻もマグロに近い。運動をして強制的に呼吸をすることで体調の維持を計っている。「今週はいつ行ける?」それが毎週末に発せられるスポーツクラブ通いのメッセージ。

Vin blanc日に向うのも、ほとんどはスカッシュのレッスンで通い慣れた用賀のスポーツクラブ。駅から近く便利だけれど、施設は決して充実しているとは言い難い。スタジオも、マシンジムも、施設全体がちんまりとしており、開放感は全くない。マシンの間を通り抜けるのに、ぶつかりそうになることもある。ロッカールームは比較的ゆったりとしているものの、シャワーだけで風呂はないから、ゆったりと湯船に浸かりリラックスすることはできない。プールは階上にあり、スキューバ用のプールや室内外にジャグージもあることから、まあ及第点はあげられる。けれど、水着に着替えてジャグージに行くのはつい面倒で、利用頻度は低い。こうして改めて採点すると決して施設に対する評価は高くない。スカッシュコートがなければ、そしてコートに仲間がいなければ、おそらく通うこともない施設。

Steakして、もうひとつ。このクラブに通う理由がある。汗を流した後のビール♬と美味しい料理。決して店の数は多くないけれど、10年以上も通う街にはお馴染みの店がある。クラブの階下にある「なかむらや」は、優しい笑顔で迎えてくれる店主の中村さんがとびっきりの酒を用意してくれる。クラブから歩いて数10歩の場所にある「サザン」には、カジュアルなイタリア料理と美味しい酒がある。最近、妻がお気に入りの「ブルズガーデン」には、かりっと揚げたポテトやズッキーニのフリット、ローストビーフなど、彼女が大好きなメニューが豊富。そんな店の何軒かをローテーションしながら食べ歩く。週に1回、4〜5軒の店を順番に訪れれば、月に1回弱程度のペース。馴染みにもなろうというものだ。

も、こんな時間に食べてると、身体に良いのか悪いのか、ビミョーだね」と妻。いえいえ、はっきり言って身体には悪い。仕事帰りに汗を流し、食事をするのは10時を廻る頃。運動のプラス部分を、遅い食事が差し引いてマイナスのお釣りまで来てしまう。「それに、あなたは毎回たっぷり飲んじゃうしね」…健康的、かつ不健康なお気楽夫婦の生活は、こうして過ぎて行く。

米の自由化「Pain vs Rice」

SugiyamaTPP協議によって、関税が撤廃されることが検討されており、それによって国内産の米(コメ)などの農作物の価格競争力が…などと中途半端な知識で語ろうとしている訳ではない。お気楽夫婦の食生活の問題である。妻は大が付くパン好き。それもハード系のパン。それに反対はしない。私もパンは嫌いではない。と言うより積極的に好き。ヴェトナム系フランス人の血が1/8だけ入っているため、幼少の頃から食卓にバケットが並ぶことが多かった。嘘です。しかし、妻の徹底振りにいささか戸惑うこともある。何しろお気楽夫婦宅には炊飯器はあるものの、ここ数年使用していない。というよりは、15年以上前に購入した後、使用したのは数えるほど。外食が多い、惣菜を買って来てウチメシの場合もパン食が多い、私は穀物を水分(酒)で摂るため、基本的にはご飯は食べずに夕食を済ませる、どうしてもご飯が食べたい時用には「サトウのごはん」が活躍するなど、理由はいろいろある。

Michel Sablonン好き、酒好き、いつもはご飯の必要がない私でも、ご飯を食べたくなることが、ある。パンを食べたくないことも、ある。ちなみに、Painはフランス語。英語ではBread、Painは英語では苦痛、苦悩である。誤解のないように書けば、禁じられている訳ではないから、コメを食べることはできる。自宅で独りで食事をする場合は、ご飯に鮭缶などというメニューを好んで選ぶ。国内のホテル宿泊の際に、ヴァイキング形式の朝食の場合は、妻がパン食、私はご飯というパターンになる。自宅で(レトルト)カレーを食べる際には、妻はナン、私がサトウのごはんとなる。改めてこうして書いてみると、妻の徹底振りは実に見事だ。尊敬に値する程だ。例えば休日のお昼、“焼き鮭”と熱々のご飯が食べてくなったとする。妻は言う「良いよ、私はパンにするから。1切れだけ買ったら」…食卓には、私の焼鮭とサトウのごはん、妻の食べるパンと、一緒に食べるサラダが並ぶことになる。

RICEの問題もないんじゃない?おっしゃる通り。食べたい時に、それぞれが食べたいものを食べる。お気楽夫婦の間には、一見して食の自由化が成立している。けれど、その自由化の裏には、ん〜、ご飯が食べたいけどパンにしておくか、という気遣いがあって成立しているのだ。25%ほどの気遣いと、5%ほどの遠慮という関税が掛っているのだ。関税を撤廃したい!と声高に叫びたい訳ではない。妻に言えば、「どうぞ♪私はパンにするけど」と返って来るのは明白。炊飯器でご飯を炊くことも、食べ残したご飯をラップに包んで冷凍保存することも反対されないだろう。けれど、真の自由化というのは、コメの自由化というのは、…なんじゃったっけ?などとダイワハウスのD-ROOMのようなボケをかます大滝秀治声の上野樹里のような気分。自分でも書いている内に良く分からなくなってしまった表現し難い微妙なニュアンス。

PAUL緒に同じものが食べたいだけでしょ?」と妻。それも少し違うのだ。例えば、休日のランチ。「おむすび権米衛」と「PAUL」のどちらかで食事をするとした場合、30%の関税の分だけ妻の意見を重視する私は、PAULを提案するだろう妻に反対はしない。けれど、もし、その時の私の気分がコメだとしたら、どうしてもご飯を食べたい私が気遣いと遠慮という関税を撤廃し、おむすび権米衛を提案したとする。その時の妻の反応は…。「じゃあ、イートインじゃなくって、2軒でそれぞれテイクアウトにして外で食べようよ!」自由化とは、輸入・輸出両国間のメリットとデメリットが裏表に存在する。両者が寸分違わない合意をすることは難しい。妻の行動パターンは実に合理的で、既に関税は撤廃され、自由化されている。

建もの探訪『篤史 My Love』

Konnaiewotatetai近気に入っているCMがある。広告主は東京ガス。キャッチは、渡辺篤史が帰らない…。“ある”番組の収録で訪れたお宅から渡辺篤史が帰らない、その理由は…というもの。ところで、東京ガスのCMは昔から私のお気に入り。人気のTV番組『食彩の王国』で流れていた“炎”シリーズ(勝手にそう呼んでいた)…炎の中を食材が踊り、鍋肌を滑り、熱湯に飛び込む。ローアングルからの映像が実に美味しそうで、CMを視ながらぐっと来てしまい(朝食を食べ終えたばかりなのに)その日の夕食を何にしようかなどと妻と毎回話していた。それ以外も、家族の絆シリーズ(これは東京ガスが正式にそう呼んでいる)も良い。きたろう演じる「お父さんのチャーハン」編などは、毎回視る度にうるっとしていた。そして、今は水島かおり出演「お弁当メール」編。これもじんわり。さらには、織田信長と妻夫木くんの絡みも、小西真奈美とのラブストーリーも、東幹久の登場も…。

Watanabe Atsushiころで、本題は渡辺篤史である。あのCMは放送開始から20年を超える長寿番組『渡辺篤史の建もの探訪』を前提にしていることは言うまでもない。が、現在あの番組がまだ続いていることをご存知だろうか。以前は長く土曜の朝、その後は日曜の早朝に放送していたのに、何度も放映時間帯を変え、現在はなんと毎週金曜日の朝、4時30分!この番組が大好きで、ずっと視続けていた私としては淋しい限り。この時間帯では番組を視ることはほぼ叶わない。深酒の翌朝早く目覚め、何気なくTVの電源を入れた時に渡辺篤史が現れると小躍りしてしまう。彼の建物に対する愛情が表れる、あの独特の言い回しが耳に飛び込んでくると、なんだか得した気持になる。なにしろ『渡辺篤史のこんな家を建てたい』などという番組初期(放送8年目)の頃の本まで買ってしまっているのだ。だから、東横線のTQナビに流れる東京ガスのCM「渡辺篤史が帰らない」を眺めながら、幸せな気持で通勤している日々なのだ。

The Manpokeiれ程、渡辺篤史(正確には『建もの探訪』の渡辺篤史) Love♡な私だけれど、上には上がいた。『鴨川ホルモー』でデビューし、『鹿男あをによし』が直木賞候補となり、作品がドラマ化された万城目学である。かれのエッセイ集『ザ・万歩計』を読んで、私のLoveの敗北を知った。そのエッセイ集にある『篤史 My Love』の一文を紹介しよう。 …私がこよなく愛する、日本を代表する長寿番組である。その内容はいたってシンプルだ。(中略)最後はリビングで「いかがでしたか?○○さんのお宅」と総括。上品な音楽、ナイスなアングル、テンポよいカット割りがうれしい、まさに盤石の構成の三十分である。 …番組を丁寧に視ている作者の姿勢が良く顕れ、好感が持てる。が、この辺りはまだまだフツー。けれど作者は、高級感溢れるファニチャーショップに行ったら、渡辺篤史ごっこをしてみて欲しいと書き、実際に自分も試したと続ける。そして、渡辺篤史の発した「おおぉ、フェルメールの明かりが」という高度で分かり難いコメントを例にあげる。

Atsushi My Loveして、万城目学のエッセイはこのように終わる。 …文豪中島敦の代表作に『名人伝』という作品がある。弓の名手が、弓を極めようとするうち、最後には弓の存在すらも忘れてしまう、という話だ。キーワードは「あらゆることの境界がなくなる」という熟練の境地である。その一端を、私は篤史に感じずにはいられない。おそるべし、名人渡辺篤史。ひょっとして私、褒めすぎか。 …何という観察力と分析力、文章の起承転結はもちろん、引用の巧みさ、そして何よりもその文章の引きの強さは素直に敗北を認めざるを得ない。おそるべし、名人万城目学。ひょっとして私、褒めすぎか。

どと、人の書いた文章で遊ぶほど、嬉しかった。同じ思いを持つ他人がいることが、それも好きな作家であることが。『篤史 My Love』の学 My Love!と叫びたい。「んん〜、今日の記事は『ザ・万歩計』を読んでない人には分かり難いかなぁ」と妻。そこは限られた文字数で素人が書く文章、どうかお許しを。良かったら『ザ・万歩計』を読んでお確かめください。

*万城目学って不思議な思考構造を持ってるんだろうなぁ

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