30min.でHongKong!「香港麺 新記」三宿

30min香港麺新記iPhoneを手に入れ、早や3ヶ月が経った。私のiMacとの相性も良く、画像の取込みもカンタン。iPhoneを“健作ちゃん”と呼び、持ち歩く。「あれ、あそこで、あのときのさぁ、何だっけ?」と悩むとすかさず検索。自分で思い出そうとせずにネットで検索すると、脳の機能が低下し、記憶中枢に残っているデータを呼び起こせなくなるらしい。若年性アルツハイマーに向かってまっしぐらのお気楽夫婦。とは言え、便利。パソコンを持ち歩いているようなもの。それに加え無償のアプリが豊富。今話題の「セカイカメラ」や、「今日の中吊り」などはすっかり妻のお気に入り。かつて、カーナビならぬマンナビができないか、と各社がパームウェアをベースに検討した時期があったけれど、スマートフォンこそがマンナビ。

新記看板新記入口る週末、スカッシュのレッスンの後、渋谷で惣菜でも買って帰ろうかと電車で帰宅する2人。妻の手元にはいつものようにiPhone。妻が覗き込むiPhoneの画面に表示された地図の上に、次々にピンが降って来る。移動する度に画面が動き、新たなピンが降って来る。何だぁ?聞けば「30min.(サンゼロミニッツ)」という妻のお気に入りアプリ。現在地から30分以内で行けるスポットの情報が自動的に表記されるらしい。「おっ!そうだぁ♪」何やらタクラミ事がありそうな妻の声。「お腹空いて来ない?」そりゃあ、たっぷりと空いていますが。「香港麺食べに行かない?」ん?香港麺と言えば、三宿の新記。「そうなんだよねぇ♫」なるほど、30min.の情報に新記が表記され、刺激されたらしい。実に分かりやすい消費者2人は三宿を目指す。

牛もつ煮込豆苗炒め?しぶりに訪れた香港麺 新記は、都内で香港麺が食べられる貴重な店。牛丼屋の横の階段を上った2階という店のロケーション、チープな店構え、中国人スタッフの大雑把な接客と、香港の香りが溢れる。輪ゴムを伸ばして打ったような独特の縮れ麺は妻の大好物。メニューを眺めると以前よりも料理の種類が増えている。麺も香港麺と日本麺を選べるらしい。さっそく生ビール、牛バラ肉の煮込み、豆苗(豆苗とは思えなかったけれど)炒め、小籠包などをオーダー。香港の摩天楼をかすめ啓徳空港に着陸しようとする飛行機の壁紙、飛び交う広東語。「むふふ、良いねぇ♫」すっかり香港気分に浸る妻は満面の笑み。料理はと言えば、B級の味と価格。

エビワンタン麺ワンタン美味!して待望のエビ雲呑麺。この店に来たらこれは外せない。妻はさっそく小丼に取り分け、油を丁寧に除き、ラー油の辛みと香りだけをたっぷり麺に乗せる。「ふぅ。美味しいぃ〜っ♫」独特の歯応え、豚骨出汁なのにあっさりとしたスープ。ぷりぷりのエビがたっぷり詰まった巨大な雲呑。まさしく2人が大好きな香港の味だ。30分で訪れることのできる香港。三宿という場所柄、わざわざ行かなければ立ち寄ることもない。久しぶりに思い立って訪問するきっかけを「30min.」が提供してくれた。「プロモーションのアプリに乗せられて、思うつぼ、ということでもあるけどね」それでも嬉しい、電車で行けるお気楽なご近所の香港訪問。「また来なくちゃね!」終止ご機嫌な香港好き、香港麺好きの妻だった。

常連化計画進行中!「鮨いち伍」千歳烏山

つまみから節のネタを楽しむことができ、適度な距離感を残しつつ親密で、静謐でありながら柔らかで居心地の良い空間。そして何よりも気楽に訪れることができる、C/Pの良い店。通い詰めていたお気に入りの鮨屋を失って以降、そんな条件に合致する鮨屋を探し、お気楽夫婦は街を彷徨っていた。そしてようやくこれぞ!と思う店を見つけた。「鮨いち伍」という開店してまだ1年弱の若い店。けれど、その店、と言うよりは店のご主人が手強かった。いろいろとマメに声を掛ける私さえ、なかなか馴染ませてくれない。昨年末、ご近所の友人夫妻と共に2度目の訪問。小さな店でもあり、名前を覚えてもらうことも期待し、事前に予約。予約時に「当日はお子様連れのお客さまとご一緒になってしまいますが、よろしいでしょうか」とのこと。店の空気を柔らかくするために、逆にありがたいかもしれない。

ネギマ4人で並ぶカウンタ。先客の子供たちの声が適度なBGMとなり、前回より柔らかな雰囲気。初回の訪問時はお好みでオーダー。当日は4人での訪問ということもあり、お任せでお願いする。ご近所の友人(夫)のために、1人だけ酒も飲まずに大食漢なので、シャリを5割増しにして欲しいと願いすると、フツーの顔で「分かりました」とご主人。う〜む、これもつかみのネタだったのに。出てくるネタは丁寧な仕事が施され、端正な姿の握りとなる。いずれも絶品。「うわっ、美味しいねぇ」の声にも反応が薄い。ご近所の友人(妻)の実家が世田谷の魚屋だというネタも空振り。ご主人を巻き込んでの会話にならず。とは言え、4人で美味しく、楽しく、満足の鮨をいただき、店を出た4人。「美味しかったけど、なかなか馴染んでもらえないねぇ」と初対面でも大概の人と仲良くなれるご近所の友人(妻)もお手上げ。

さよりこで引き下がらないのがお気楽夫婦。何せ、美味しい店なのだ。店の佇まいも、鮨も、料金も、合格以上の水準なのだ。ある平日の夜、ふと思い立って「鮨いち伍」に出かけた2人。もちろん電話で事前予約。店に入ると他に客はいない。チャンス!まずは接客担当の奥さまを攻める。「先日は騒がしくて申し訳ありませんでした」いえいえ、却って和んで食べられました。奥さまから笑顔をゲット。よし。3度目の来店でそれぞれ食べ方を変えてみようと、おつまみからお願いする。「白子をご用意できます。後はネギマですね」白子は炙って、そしてネギマもお願いする。他に客もいないこともあり、写真を撮っても良いかと伺う。「どうぞ」。初回は黙って写真を撮ってしまったことをお詫び。「いいえ、ところでブログに書いていただきましたか」えぇっ!なぜそれを。「偶然拝見しました。ありがとうございます」びっくり。

ネタケースんなやり取りをきっかけに話が弾む。「初回は、いろいろ食べ慣れた方だと緊張していたんです」とご主人。「そんなこと全然ありませぇ〜ん。お気楽に、ただ美味しいものが好きなだけで♪」と妻。気に入った店だけに実に嬉しそう。積極的に会話を繋ぐ。「前回、騒がしかったので、もう来ていただけないかと心配していたんです」とご主人。聞けば、人一倍緊張してしまい、口数が少なくなり、空気を固くしてしまうとのこと。「そうなんですよぉ」と奥さまも、ここぞとばかりに会話に加わる。「奥さまも今日は良く話されて、ずっと笑ってらして、安心しました」安心したのはこちらも同様。前回までよりもさらに美味しく感じられるネタ。調子に乗ってネタケースまで撮影させていただく。ネギマも絶品。旬のサヨリも実に旨い。「サヨリの旬は年に2度あるんですが…」話し始めればご主人の口も滑らか。美味がいや増す。

日がいちばん美味しかったねぇ♪ふふふ、ご近所の友人(妻)にメールで教えてあげなきゃ」常連客らしい男性が来店したのを潮に店を出た2人。味覚以上に満足の時間を過ごすことができた。ご主人の人柄も分かった。半ば常連化も成功。「またすぐに来るよ!」妻の鼻息も荒い。次もまた平日の夜に!

■「食いしん坊夫婦の御用達」 鮨いち伍の訪問記

銀座のかに、銀座の矜持「銀座らん月」

銀座らん月便局の年末臨時スタッフ、日中友好の非営利団体事務局、ホテルのルームキーパー、コンサート会場のスタッフ、神社の祭礼スタッフ、英会話スクールの教材作り、花屋の休日店長、飲食店のサービス係…。学生時代、数えきれない程のアルバイトを経験した。中でも飲食店のサービス係としては、神田の寿司屋、お茶の水の中華料理店、赤坂のホテルのパブ、青山のオムレツ専門店、銀座のステーキ専門店、ホテル宴会場、そして「銀座らん月」の店内案内係と数多くの店で働いた。大学とアテネ・フランセのダブル・スクール生活。その講義の合間を縫って効率的に働くことが前提。時給が高いことを条件に探した結果、アルバイト先は有名店、老舗の高級店が多くなった。それぞれが記憶に残る店だったけれど、昭和22年創業、銀座の老舗「銀座らん月」での仕事は特に印象的だった。

蟹刺し人暮らしの身に取っては各店の「まかない」も魅力的。デートやサークルの宴会で使わせていただき、サービスしていただくこともあった。銀座らん月でも一度だけ「追い出しコンパ」で利用させていただいた。カニミソ、カニ刺し、カニの姿焼き、カニしゃぶなどのカニ尽くし。学生たちの乏しい予算以上の料理を出していただいた。当時の学生にとっては“超”が付くゼータクな宴会。普段は厳しい板さん、サービス係の上司、着物姿のお姉さんたち、地下にある利酒処「酒の穴」を預かる主のような強面のベテランスタッフが次々に顔を出してくれた。それぞれが「旨かったか?」「酒は足りてるか?」などと幹事だった私に声を掛けてくれた。優しく家庭的で、けれど仕事には厳しい、実に良い職場だった。上司の社員に連れられ、銀座の裏通りにある居酒屋に通った。六本木のステーキ屋でご馳走になった。

焼きしゃぶの冬、ズワイガニ不漁のニュース。「ふぅ〜ん。でも私はタラバの方が好きなんだよねぇ。それって、ほんとに美味しいズワイガニを食べていないってこと?」と挑戦的な妻。ようしっ、美味しいズワイを食べに行こうじゃないか。ある週末、芝居の後に銀座に向かった。目指すは「銀座らん月」だ。卒業後、ランチは何度か訪れたことがあったけれど、夜に訪れるのは初めて。「いらっしゃいませ」。銀座通り側の入口を入ると店内案内係のスタッフから声がかかる。かつての私だ。入口後ろの壁には、黒光りする歓迎看板に白い文字で予約のお客さまの名前が並ぶ。毎日丁寧に予約名を書き込んでいたかつての店長を思い出す。清潔で上品な佇まいは当時のままだ。

カニアシニを食べたいと伝えると2階に通されたお気楽夫婦。まだ時間も早く、店内には客もまばら。ゆったりとメニューを眺める。30年前と値段は大きく変わっていない(気がする)。当時はどんな人がこんなゼータクな食事をするのだろうと思ったメニューが、今自分の目の前にある。手頃とは言わないけれど、リーズナブルなお値段。当時はメニューになかった「かに焼きしゃぶ」のコースをオーダー。酒が飲めない妻の大好物、カニ味噌からスタート。「うん、やっぱり冬はこれだね♪」と妻。続いてカニ刺し。「すっごい、甘ぁい♪」とろりとした舌触りが堪らない。そしてメインのカニ焼きしゃぶ。牛脂を乗せた鉄鍋で、生のカニをさっと焼いて食べる。カニの身の表面がうっすら赤みがかかったところを、一気にぱくり。ふぅわりと上品な香りが鼻腔に抜け、同時に生とはまた違った甘さが口に広がる。絶品。

銀座百点味しかったぁ。さすがだねぇ。これだったんだねぇ、ズワイの味って…」銀座のカニを堪能し、満足げな妻。時間が経つにつれ中国人観光客などで賑わい出した店内。着物姿のお姉さんたちが慌ただしく店内を行き来する。それでもお気楽夫婦の席にもきちんと目が行き届いている。おしぼりが差し替えられ、デザートが運ばれる。接客の所作が小気味良く、心地良い。決して深くは踏み込まないけれど、すっと会話に入ってくるタイミングが絶妙。大人の店だ。良き銀座の空気を纏い、銀座の老舗の矜持をきちんと残している店だ。マクドナルドの日本1号店は銀座。国際的ブランドショップの旗艦店が目立とうが、ファストファッションの店が増えようが、新しいモノを受け入れつつ、古いモノも守る、そのバランスを保っていられる間は、銀座は銀座だ。こんな店が頑張っていられる間は、銀座も健在だ。

座百店会の加盟店でもある銀座らん月。1955年に創刊された情報誌「銀座百点」は通巻663号を数える。店置きの冊子を久しぶりに手に取り読んでみる。著名人の連載や広告ページからも、銀座の香りが漂う。銀座の矜持が溢れる。良い雑誌だ。ところで、お気楽夫婦は、この街を訪れるのに相応しい大人になったのだろうか。「う〜ん、まぁ良い年齢だからね」と妻。答はどっちだ?

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SINCE 1.May 2005