2019年初春の「ビストロ808」第1弾は、柑橘類がテーマ。毎日が乾燥注意報続きで、記録的に流行っているインフルエンザや、風邪を予防するためにも、たっぷりビタミンCを摂ろう!と言う企画。まず買い込んだのは、たまたま(完熟金柑)だ。レギュラーメニューのキャロットラペをアレンジし、金柑を加える。ポロネギのマリネ、小さなパイにサラダを乗せたキッシュと一緒に盛り付け、最初の一皿が完成。
続く2皿目は、サーモンのリエット チコリ乗せ。いつもの「サバのリエット」にかわり、鮭缶を使ったサーモンのリエット。サバ缶を使ったリエットと同様に、丁寧に中骨や皮、血合いの部分を除き、クリームチーズなどと丁寧に混ぜる。以上。とても簡単で美味しいオススメのメニュー。今回は気取ってチコリに盛り付けてみる。あらら豪華。チコリの歯応えと、サーモンの優しい味が良い組合せだ。我ながら美味しいぞ。
3皿目はビジュアル勝負。白いキューブ状のモノは?「大根?」「冬瓜?」残念。「こんにゃく?」「ナタデココ?」惜しい?正解は、イカ。ハチミツに浸けたたまたまと、同じくらいの大きさに切り揃えたイカを和えて、交互に並べる。ネットで見つけたレシピにバルサミコ酢などの味付けを加え、お気楽夫婦好みの味にする。初めて作る料理は2人で味や盛付けを評価し、ゲストに出せるか、2度目があるかを判断するのだ。
次はフキノトウのグラタン。デパ地下で発見して衝動買いした食材は、買った後にメニューを決めることがある。今回のフキノトウがその典型。あぁ、もう春なんだなぁと買った後に、慌ててレシピを探す。もちろん食材として扱ったことはない。アクが強く、切った側から変色していく面倒なやつを巧く調理できた。「オトナの味だね。香りが良いね」とゲストにも好評。春のレギュラーメニューになりそうな雰囲気だ。
オレンジをたっぷり使った「タコとオレンジのセビーチェ」は、ご近所のJA直売所でミカンとして売っていたモノ(実はオレンジだった!)を大量に買ったことから生まれたメニュー。オレンジ、タコの白、プティトマトの赤をバランス良く盛付け、フレッシュチャーピルの緑を添える。目に鮮やかで食欲をそそる。それにしても料理は盛付け8割、味2割?盛付けには自信があるオレ。その意味では料理上手と言えるだろう。
メインの肉料理は、豚と金柑の低温ロースト。事前に調理して妻の舌で試し、好評だったためメニュー入りとなった。低温でローストした豚ロース肉は、大きめのひと口サイズながらとても柔らかい。フレッシュローズマリーが香り付けで良い仕事をするのだが、残った仲間達がまだ冷蔵庫の中で眠っている。ハーブを使い切るのは難しい。皿や調理器具のセレクトも料理の内。この赤いストウブは料理上手に見える必殺技だ。
「おぉ〜っ!ナオミちゃん、優勝だ!」その日は全豪OPENテニス女子シングルスの決勝。参加メンバーでTV中継を観入っていた。サービスが決まって優勝が決定した瞬間、思わず全員でハイタッチ。渋谷ハチ公前交差点のワカモノたちの気持ちが分かる。TVの前に集まってナオミちゃんと一緒に記念撮影。ワイワイと仲間たちと観戦するスポーツは楽しい。そして何より仲間たちとワイワイと飲むワインは美味しい。
「たまたま、どの料理も美味しかったなぁ」「フキノトウのグラタン絶品!」その日のゲスト、スカッシュ仲間の世田谷マダムたちから口々に料理をお褒めいただく。嬉しい限り。持って来ていただいたワインも順調に空になった。柑橘系料理で風邪を予防し、アルコールで消毒もできた。冬の日本のお約束の言い回し。2019年も「ビストロ808」不定期ながら好評営業中。次回の皆さまのご来店、お待ちしてます♬
忘年会シーズンが嵐のように去り、新年会もようやく落ち着いた。気が付けば、あっと言う間に如月2月だ。忘年会は、文字通り年忘れの宴会。1年間お疲れ様と杯を交わす。それに対し新年会は、これまた文字通り、新しい年を祝う会。忘年会よりもオフィシャルな意味合いが強く、会社単位で開催されたり、賀詞交換会という呼称で公的機関が開催する場合が多い。同窓会やクラス会などの開催も新年の場合がほとんどか。
友人同士の場合は、忘年会でスケジュールが合わなかったから、新年会というケースが多い。けれども、年末の慌ただしさに追いかけられず、年が明けたという新たな気持ちで、何となく時間的にも落ち着いて会える新年会が割と(いや、かなり)好きだ。年末に伺った際に、「用賀 本城」が2月ひと月お休みと聞き、では新年早々に京都の白味噌仕立ての雑煮を食べに行かなければと予約。スカッシュ仲間と新年会という企画だ。
母方の故郷が京都というスカッシュ仲間も、愛知の味噌文化が近いお気楽妻も、西京白味噌の雑煮が好物。この店で初めていただいた際に、お気楽夫婦のお気に入りの料理になった。そして、そこにもう一人のスカッシュ仲間、と言いってはおこがましいが、元日本チャンピオンの千夏ちゃんをお誘いした。 昨年夏以降は大会にも出ていなかったので、もしや?と思っていたら、予想通りにご懐妊の報告があったばかり。
体調も安定したものの、まだ以前のようには食べられないという彼女は、確かに驚くほど少食になった。けれども、無事に出産したら現役に復帰するとの宣言だけではなく、全日本にも出場したいと言う。嬉しい!素晴らしい!その意気や良し。何て新年会に相応しい話題だ。思わず独りで(残念ながら他は誰も酒は飲まない)乾杯。お土産にと、バゲットを買って来てくれたパン好きは相変わらずの千夏。どうか母子共に健康で!
そして今年初めて参加したのは、やはりスカッシュ仲間たちとの新年会。昨年末にお気楽夫婦が揃って入会した鬼沢コーチのレッスン生たちが30人程集まった賑やかな会。“鬼”沢という名前の通り、レッスン中にカウントを取り、敗者には笑顔で罰ゲームを課す。千夏ちゃん同様に、日本代表にも選ばれたことのある女性コーチだ。我ながら年齢の割に走れるのが災いして、汗まみれになるレッスンが続く。今年はお手柔らかに。
「誕生日おめでとう!」「ありがとう!(×3)」と、新年会を兼ねた、誕生日(何と1月生まれが3人!)のお祝いをしたのも、スカッシュ仲間たち。ご近所の四川の名店「萬来軒」で、持ち込んだシャンパン(グラスも持ち込み)で乾杯だ。余りにも愉しげに(騒がしく)していたせいか、見知らぬ独り飯のご老人が混ざり込んで来たのもご愛嬌。嫌がりもせず、鷹揚に大先輩の話に合わせるのは酔っ払い(女子たち)の懐の深さ。LOVE♡
スカッシュを通じて、良い仲間と出会ったとしみじみ思う年の始め。仕事のしがらみや、ストレスを抱えることもなく(お付き合いするのに面倒な相手もいるが)、同じスポーツを愛すると言う共通項で、一緒に汗を流し、美味しい酒が飲める。シンプルに嬉しく、つくづく有り難く、心から幸福なことだと思う。…あぁ、何だかまるでジイさんの心情だ。私も間もなく61歳。何だか不思議だが、今年も元気な1年のスタートだ。
関西弁って、えぇなぁ…。そう思わせる芝居がある。劇団「リリパッドアーミーⅡ」を率いる座長のわかぎゑふが、1994年に立ち上げたもうひとつの劇団「ラックシステム」だ。ただ関西弁、と言っても京都と大阪を一緒にすな!とか、突っ込みが入りそうで怖いが、正確にはわかぎの生まれた“大阪弁”なのだろう。いずれも「お」で始まる公演タイトルの、大阪を舞台にした、登場人物の台詞のほとんどが大阪弁の物語。
お気楽夫婦が初めて「ラックシステム」の芝居を観たのは2000年、代表作の『お正月』だった。その数年前にリリパの舞台を観て、2人揃ってすっかりファンになり、その流れで東京でほぼ初演(1995年のホントの初演は大失敗だったらしい)の公演を観て、完璧に打ちのめされた。わずか2時間の芝居で、舞台転換もなく、早替わりもなく、ある一家の明治から平成までの、それも元旦だけの場面で、100余年の物語を紡ぐのだ。
*正確には、お気楽夫婦が最初に観た『お正月』は「中島らも事務所プロデュース公演」。
『お弁当』『お祝い』『お見合』『『お願い』『お弔い』…その後のラックシステムの芝居は、リリパと同様にほぼ(残念ながら大阪のみの公演もあるのだ)観に出かけた。いずれも繰り返し何度か再演され、それでもきちんと客が入ることから「関西小劇場界のネオ商業演劇」とも呼ばれている(出典:wiki)…らしい。お気楽夫婦も、新作、再演関係なく迷わず出かけて行った。そしてどの公演も満足して帰って来た。
極めつけは、ラックシステム15周年の記念公演として上演された『お代り』と言う『お正月』の姉妹編。『お正月』の主人公鈴木家のお隣に住む山田家の物語。やはりお隣さんだった「萱野家」の小椋あずきも登場する、ファン泣かせの企画。女性の家族全員が同じ顔をしており、母か娘か妹かお隣さんでも分からないけれど、正月には決まって黒豆のお裾分けを持ってくるという、お約束ネタで笑いが取れる“おいしい役”だった。
そして、2019年1月、待望の『お正月』15年ぶりの再演だ。会場の受付では怪優「コング桑田」が物販の告知をしている。声を掛けるとニカッと笑い、「お寒い中ありがとうございます」とハスキーなバリトンボイスが返ってくる。お気楽夫婦がリリパとラックシステムを観続ける理由のひとつが、彼の存在だ。ステージ上での初見で驚愕。存在感あり過ぎの見た目と、良く通る声。惚れた。でも喰われるかと思った。ナマハゲか。
舞台上では猛獣(コング)使いの座長わかぎの前でこそ、まるで大きな子猫のようだが、今や『レ・ミゼラブル』などのステージにも欠かせないゴスペル歌手でもある。彼のミニライブに出かけた際にことばを交わし、観劇の度に挨拶する程度の中になった。以前は東横線沿線に住んでいたようで、車内や改札で何度か偶然出くわし、短い会話を交わしたことも数度。そのコング桑田も(粗っぽいが)この舞台では良い芝居をするのだ。
彼は3役。前回とも、前々回とも違う役回り。*写真は別の公演の際に撮影。配役同様に、物語の結末は毎回違う。関東大震災を経験し、地震のない関西に嫁いだ主要登場人物のハルが、阪神淡路大震災を経験することで、ある結論を出すという前回までのストーリーに、今回は東日本大震災のエピソードが加わった。じんわり泣けて、思いっきり笑えて、正月の観劇にぴったり。次回の再演(あるのか?)も期待したくなる傑作だ。