「Age Ain’t Nothing but a Number」年齢はただの数字よ!と、R&Bの歌姫アリーヤが歌ったのは1994年。彼女はまだ“わずか”15歳だった。そして2001年、飛行機事故により“わずか”22歳の若さで亡くなってしまう。「年齢はただの数字、記号さ」と嘯く、年齢を重ねた男女が使う言葉とは逆の意味。15歳は子供じゃないわと彼女は歌った。この曲は、山田詠美のエッセイで知ったのだが、詠美のエッセイではこう続く。
年齢を単なる数字、などと強がるのは、もう止めましょう。意味のある数字と受け入れる方が、人生はるかに楽しいよ、と。ん〜、どっちも違って、どちらも合っていると“61歳”の私は思う。世の中の多くの日本人には定年もあるし、元気だと思っていても確実に老いもする。年齢を数字だとばかりは言っていられない。けれども、年齢を気にして、自分を制限する必要もない。その意味では、年齢は単なる数字に過ぎない。
「誕生日おめでとう♬」ありがとう&おめでとう!と一緒にお祝いをしようと同行した2月生まれの友人に返す。場所は、前年に私の還暦と、妻との25周年を祝ったホテルのバーだ。事前にお世話になった宴会のご担当に挨拶に伺い、友人たちと記念撮影をした場所で自撮りをした後で、友人と落ち合った。「このピッツアむちゃ美味しいね。やっぱりこのホテル良いわぁ」と笑顔。ひと回り年齢の違う彼女は、大切な友人だ。
年上の方に敬意は払うけれど、年齢の違いが儒教的な上下関係になるのは違和感がある。逆も然り。年上だからと、敬語ばかり使われる相手との距離感はなかなか縮まらない。ビールの後は、シャンパンにする?「おっ、良いね。飲もうか♬」私をIGA-IGAと呼ぶ友人が応える。そうか。タメ口ができるかどうは、年齢や親しさを測るだけではなく、彼女のようにキャラ勝ちの要素はあるな。*IGA-IGAと呼ぶ女性を数えたら、現在7人いた!
4年後に、お気楽妻の還暦パーティもここでやろうか!と、冗談とも本気とも聞こえるように言うと、「良いねえ」と友人は答え、妻は「きっとそんなに大勢集まらないよ」と戸惑いながら、それでも満更でもなさそうに返す。2人一緒の写真を撮るよと言うと、「恵方巻き!」と言いながら、2人揃って同じ方向を向いてピッツアを咥える。こんな時は(うっかり)友人の子供のようなテンションに(嬉しそうに)釣られる妻。
「Happy Birthday to You ♬」ピアノトリオの演奏に合わせ、ヴォーカルの女性が歌い始めた。へぇ。私以外にも誕生日の人がいるのか、と思っていたら、キャンドル付きのプレートが我々の席に向かってやって来た。え?え?店内にいる全員の視線が集まる。わ・た・し?どうやらそうらしい。そう言えば、直前にスタッフが執拗にデザートを勧めるから、数種類の中から一つだけ頼んだのに、何と全部盛りだ!サプライズ!
「N田さんの手配だね♬」お気楽妻が動揺した私を愉快そうに眺めながら呟く。そうか、確かにちょうど1年前のパーティでお世話になってと言う会話があった。昨年の巨大なイチゴのケーキサプライズに続き、2年続けてしてやられたぜ。「すごい!初めて!こんなの!」友人は興奮を隠せない様子、どころか「次のステージでもう一回お願いしようよ」と宣う。え?本気?止める間もなく、女性スタッフに無謀なリクエスト。え?
15分後、何事もなかったかのように、「Happy Birthday to You」が繰り返され、さすがに今度は小さなアイスにキャンドルを付けて、スタッフが登場した。素晴らしい。ホテルのスタッフも、度胸があるだけではなく徹底的に楽しもうという友人も。ちょっと恥ずかしいと思ってしまった自分が恥ずかしい(笑)。節度や品位を保てば、もうオトナなんだからとか、まだ子供だからとか、年齢と同様にそんな概念も関係ないのだ。
「楽しかったぁ♬ありがとう!」と友人が微笑む。こちらこそ。文字通りお腹を抱えて笑った。実に楽しかった。61歳の誕生日も、記憶に残る夜になった。年齢はやはりただの数字だ。けれども、その数字が増える毎に、妻や友人たちとこんな愉しみを味わえたら良いなぁ。友人とお気楽妻と、そして何よりも愛するホテル(パークハイアット東京)と、スタッフの皆さんに感謝!
丸の内に余り縁のない半生を過ごして来た。通勤したこともなく、馴染みの店もない。せいぜいが○菱地所の皆さんと「大丸有」のエコポイントプロジェクトでご一緒したくらい。*あぁ、そうか。10年ほど前のその仕事では何ヶ月か日参したけれど、記憶から消えていた。決して黒歴史ではないのだが。地所と言えば、大手町、丸の内、有楽町の大家さん。その頭文字を取って、「大丸有」と名付け、エリアマネジメントを行なっているのだ。
地所が丸の内に日本初のオフィスビル「三菱一号館」を建設したのが1894年。1968年に解体され、2010年にレプリカ復元(決して歴史的建造物ではない)され、「三菱一号館美術館」として開館。そこで開催中の『フィリップス・コレクション展』を鑑賞。“全員巨匠”というキャッチ通りの美術展。遠目で、あ!マティスだ、ゴッホだ、ユトリロだ!と分かる作品ばかり。レプリカとは言え味わいある建物と融合して、なかなかの趣き。
美術鑑賞で心を満たした後は、空腹を満たそう!と予約してあった「丘如春/YAUMAY(ヤウメイ)」という点心専門店へ。場所は美術館のすぐ隣の東京會舘、東京商工会議所があった場所に建てられた「丸の内二重橋ビル」の商業施設「二重橋スクエア」の2階。この建物は丸の内仲通り側が二重橋スクエア、皇居側に東京商工会議所、東京會舘が同居し、上層階は三菱地所と東京會舘が共同で所有するオフィスという面白い作りだ。
店は入口を入って左側がバーコーナー、右に進むと巨大なオープンキッチンを横目に見ながら正面に広い客席を見渡す、という新鮮なレイアウト。オープンキッチンと客席の間には良くあるガラスの壁もなく、キッチン上部にある巨大な換気扇が煙や臭いを吸い上げている。出来たばかりということもあるが、清潔感溢れる店内は高感度高し。家具や内装も香港にありそうな雰囲気。飲茶好きのお気楽夫婦の期待は高まる。
最初の一皿は、点心といえばの「海老蒸餃子」。プリプリのエビがゼータクにパンパンに入っている。皮は薄くモチモチで、繊細で上品な味。「ん〜、これはなかなか美味しいねぇ」早くもお気楽妻はOKのサインを出し始めている。まだまだ。評価は焼き物を味わってからじゃないか。とは言え、順調な出だしに頬が緩む。だいたい、少食の2人にとって、夜でも軽めに点心が食べられる“点心専門”というのが嬉しい。
焼き物は、これも定番の「ハニーローストポーク」。肉汁たっぷりジューシーで、脂が甘く、表面がカリッとして、ガッツリと旨い。先日、治療先の先生から膝の怪我が治らないのはタンパク質が不足しているからと断言され、肉肉しい食事を心掛けている。そんな今の私にぴったりのメニュー。バランス良く「台湾豆苗ガーリック炒め」と合わせ技で1本。生ビールをグビリ。く〜っつ、んまい。至福の時間が流れる。
店の名物料理「蝦夷鹿肉のパイ包み」は、楽しみにしていた一皿。サクッとしたパイ皮の中の鹿肉(ロンドンで有名になったメニューらしい)は、濃厚で黒胡椒が効き、というか効き過ぎており、美味しいのだけれど汗ダラダラ。臭みを消すために必要以上に黒胡椒が入っているのか。「豚肉でも良いんじゃないかと思う」という妻が名言を吐いた。全く同感。好きなのに辛味に弱いという(涙)私にとっては辛い味。とは言え大満足。
サクッと食べて(点心はこれが良い)、外に出ると丸の内仲通りはまだ宵のうち。以前なら週末はひっそりとしていたこの街も、明るくオシャレに大変身。地所さん、頑張ったなぁとしみじみ思う。ブランドショップの並ぶ街並みあり、美術館あり、香港まで行かずとも美味しい点心の店ありと、オフィス街に奥行きができ、深みができた。街並みがキレー過ぎて陰がなく、人によそよそしいから、ワクワク感はまだないけれど。
「くまモン発見!」すかさず観光客の如く自撮りする2人。そうか、お気楽夫婦にとっては、この街はホームではなく、旅先なのだ。渋谷、二子、シモキタのように、我が街として歩いてはおらず、ふわふわと少し浮いている感じ。そんな視線で見直せば、実に良い街なのだ。そうだ、また訪れよう。きっと、まだまだしばらくは他所者扱いされてしまうだろうけれど、一方的に告白しよう。丸の内、LOVE。
2019年初春の「ビストロ808」第1弾は、柑橘類がテーマ。毎日が乾燥注意報続きで、記録的に流行っているインフルエンザや、風邪を予防するためにも、たっぷりビタミンCを摂ろう!と言う企画。まず買い込んだのは、たまたま(完熟金柑)だ。レギュラーメニューのキャロットラペをアレンジし、金柑を加える。ポロネギのマリネ、小さなパイにサラダを乗せたキッシュと一緒に盛り付け、最初の一皿が完成。
続く2皿目は、サーモンのリエット チコリ乗せ。いつもの「サバのリエット」にかわり、鮭缶を使ったサーモンのリエット。サバ缶を使ったリエットと同様に、丁寧に中骨や皮、血合いの部分を除き、クリームチーズなどと丁寧に混ぜる。以上。とても簡単で美味しいオススメのメニュー。今回は気取ってチコリに盛り付けてみる。あらら豪華。チコリの歯応えと、サーモンの優しい味が良い組合せだ。我ながら美味しいぞ。
3皿目はビジュアル勝負。白いキューブ状のモノは?「大根?」「冬瓜?」残念。「こんにゃく?」「ナタデココ?」惜しい?正解は、イカ。ハチミツに浸けたたまたまと、同じくらいの大きさに切り揃えたイカを和えて、交互に並べる。ネットで見つけたレシピにバルサミコ酢などの味付けを加え、お気楽夫婦好みの味にする。初めて作る料理は2人で味や盛付けを評価し、ゲストに出せるか、2度目があるかを判断するのだ。
次はフキノトウのグラタン。デパ地下で発見して衝動買いした食材は、買った後にメニューを決めることがある。今回のフキノトウがその典型。あぁ、もう春なんだなぁと買った後に、慌ててレシピを探す。もちろん食材として扱ったことはない。アクが強く、切った側から変色していく面倒なやつを巧く調理できた。「オトナの味だね。香りが良いね」とゲストにも好評。春のレギュラーメニューになりそうな雰囲気だ。
オレンジをたっぷり使った「タコとオレンジのセビーチェ」は、ご近所のJA直売所でミカンとして売っていたモノ(実はオレンジだった!)を大量に買ったことから生まれたメニュー。オレンジ、タコの白、プティトマトの赤をバランス良く盛付け、フレッシュチャーピルの緑を添える。目に鮮やかで食欲をそそる。それにしても料理は盛付け8割、味2割?盛付けには自信があるオレ。その意味では料理上手と言えるだろう。
メインの肉料理は、豚と金柑の低温ロースト。事前に調理して妻の舌で試し、好評だったためメニュー入りとなった。低温でローストした豚ロース肉は、大きめのひと口サイズながらとても柔らかい。フレッシュローズマリーが香り付けで良い仕事をするのだが、残った仲間達がまだ冷蔵庫の中で眠っている。ハーブを使い切るのは難しい。皿や調理器具のセレクトも料理の内。この赤いストウブは料理上手に見える必殺技だ。
「おぉ〜っ!ナオミちゃん、優勝だ!」その日は全豪OPENテニス女子シングルスの決勝。参加メンバーでTV中継を観入っていた。サービスが決まって優勝が決定した瞬間、思わず全員でハイタッチ。渋谷ハチ公前交差点のワカモノたちの気持ちが分かる。TVの前に集まってナオミちゃんと一緒に記念撮影。ワイワイと仲間たちと観戦するスポーツは楽しい。そして何より仲間たちとワイワイと飲むワインは美味しい。
「たまたま、どの料理も美味しかったなぁ」「フキノトウのグラタン絶品!」その日のゲスト、スカッシュ仲間の世田谷マダムたちから口々に料理をお褒めいただく。嬉しい限り。持って来ていただいたワインも順調に空になった。柑橘系料理で風邪を予防し、アルコールで消毒もできた。冬の日本のお約束の言い回し。2019年も「ビストロ808」不定期ながら好評営業中。次回の皆さまのご来店、お待ちしてます♬