正月気分の残る夜に『お正月』玉造小劇店配給芝居

Oshogatsu1西弁って、えぇなぁ…。そう思わせる芝居がある。劇団「リリパッドアーミーⅡ」を率いる座長のわかぎゑふが、1994年に立ち上げたもうひとつの劇団「ラックシステム」だ。ただ関西弁、と言っても京都と大阪を一緒にすな!とか、突っ込みが入りそうで怖いが、正確にはわかぎの生まれた“大阪弁”なのだろう。いずれも「お」で始まる公演タイトルの、大阪を舞台にした、登場人物の台詞のほとんどが大阪弁の物語。

Oshogatsu2気楽夫婦が初めて「ラックシステム」の芝居を観たのは2000年、代表作の『お正月』だった。その数年前にリリパの舞台を観て、2人揃ってすっかりファンになり、その流れで東京でほぼ初演(1995年のホントの初演は大失敗だったらしい)の公演を観て、完璧に打ちのめされた。わずか2時間の芝居で、舞台転換もなく、早替わりもなく、ある一家の明治から平成までの、それも元旦だけの場面で、100余年の物語を紡ぐのだ。

*正確には、お気楽夫婦が最初に観た『お正月』は「中島らも事務所プロデュース公演」。

Oshogatsu3弁当』『お祝い』『お見合』『『お願い』『お弔い』…その後のラックシステムの芝居は、リリパと同様にほぼ(残念ながら大阪のみの公演もあるのだ)観に出かけた。いずれも繰り返し何度か再演され、それでもきちんと客が入ることから「関西小劇場界のネオ商業演劇」とも呼ばれている(出典:wiki)…らしい。お気楽夫婦も、新作、再演関係なく迷わず出かけて行った。そしてどの公演も満足して帰って来た。

Oshogatsu4めつけは、ラックシステム15周年の記念公演として上演された『お代り』と言う『お正月』の姉妹編。『お正月』の主人公鈴木家のお隣に住む山田家の物語。やはりお隣さんだった「萱野家」の小椋あずきも登場する、ファン泣かせの企画。女性の家族全員が同じ顔をしており、母か娘か妹かお隣さんでも分からないけれど、正月には決まって黒豆のお裾分けを持ってくるという、お約束ネタで笑いが取れる“おいしい役”だった。

Oshogatsu5して、2019年1月、待望の『お正月』15年ぶりの再演だ。会場の受付では怪優「コング桑田」が物販の告知をしている。声を掛けるとニカッと笑い、「お寒い中ありがとうございます」とハスキーなバリトンボイスが返ってくる。お気楽夫婦がリリパとラックシステムを観続ける理由のひとつが、彼の存在だ。ステージ上での初見で驚愕。存在感あり過ぎの見た目と、良く通る声。惚れた。でも喰われるかと思った。ナマハゲか。

Oshogatsu7台上では猛獣(コング)使いの座長わかぎの前でこそ、まるで大きな子猫のようだが、今や『レ・ミゼラブル』などのステージにも欠かせないゴスペル歌手でもある。彼のミニライブに出かけた際にことばを交わし、観劇の度に挨拶する程度の中になった。以前は東横線沿線に住んでいたようで、車内や改札で何度か偶然出くわし、短い会話を交わしたことも数度。そのコング桑田も(粗っぽいが)この舞台では良い芝居をするのだ。

Oshogatsu8は3役。前回とも、前々回とも違う役回り。*写真は別の公演の際に撮影。配役同様に、物語の結末は毎回違う。関東大震災を経験し、地震のない関西に嫁いだ主要登場人物のハルが、阪神淡路大震災を経験することで、ある結論を出すという前回までのストーリーに、今回は東日本大震災のエピソードが加わった。じんわり泣けて、思いっきり笑えて、正月の観劇にぴったり。次回の再演(あるのか?)も期待したくなる傑作だ。

カラスミ尽くしとガレット・デ・ロワ「公現祭の夜」

Rois1レット・デ・ロワ食べたい!」フランス人でも、キリスト教徒でもないスカッシュ仲間が年末にそう宣言した。それも受付初日の朝に電話が繋がらず、1時間余りで完売するという人気店のガレット。1月3日、朝9時からの予約開始。「なかなか手ごわいですな。繋がらない」と友人からメッセージ。妻が店のサイトをチェックすると売切れの案内。そう伝えると、「67回も掛けたのに…」と涙。大丈夫。他に良い店がある♬

Rois2約できたよ!」代わりの人気店で無事に予約。後は公現祭の日に集合し、今年最初のスカッシュ、そしてデパ地下のデリと組み合わせた「ビストロ808」でガレットを食べるだけ。スカッシュで汗を流し、オードブルとメインの料理とワインを買い込みビストロに向かう。全ての料理を作る普段の開店よりもお気楽お手軽。新たな営業スタイル。とは言え、いつものキャロットラペと新作「タコ焼きチーズ」を準備していた。

Rois3〜!何これ!本当にタコ焼き?冷たいよ!あらっ、美味しい。何だろう?」ふふふ。正体はクリームチーズのカラスミ和え。小さなボール状にしたクリチに炙ったカラスミをおろして塗し、青ノリ代わりのパセリ、紅ショウガ代わりのピンクペッパーを散らしたもの。続いてグリーンアスパラのミモザサラダの上にゼータクにカラスミを振り掛けた一品。「うわぁ〜っ!このサラダもキレーで美味しいね」ワインがすすむ。

Rois4ってきた鴨のスモークと焼き野菜サラダを盛り付ける。「美し〜!」盛り付けもまた料理。そしてダメ押しはカラスミのパスタ。オリーブオイルと粗挽きのブラックペッパー、残ったカラスミを全て投入し、固めに茹でたパスタと和えるだけ。シンプルながらカラスミを味わうにはぴったりの一皿だ。「うひゃーっ!参った!」「ゼータクだねぇ」お節と一緒に「割烹 弁いち」で購入した自家製カラスミが大活躍だ。

Rois6していよいよ主役の出番。ガレット・デ・ロワの登場だ。発祥はフランス。キリスト教の公現祭(1月6日にイエス・キリストの顕現を祝う祭日)が起源のお菓子。豆(フェーヴ:fève)や小さな陶製の人形をパイの中に入れて焼き、切り分けて食べる際にフェーヴが入っていた人がその日1日だけ王様や王女様になって祝福されるというもの。日本ではまだ浸透していないが、フランスでは年明けの風物詩となっている。

Rois5約したのはマロンクリームのガレット・デ・ロワ。どの店のガレットもパイ生地の表面を繊細で綺麗な模様で飾るが、この店のマロンは中央に大小2つの栗の模様が可愛いし可笑しい。ところで、その日のメンバーは4人。散々食べて飲んだ後に、ホールのパイを食べ切るのは厳しい。「じゃあ、1/8づつ半分食べて、フェーヴが誰にも入っていなかったら残りも食べよう!」まるでロシアンルーレット。

Rois7なみに、ガレットを買ったパティスリーの名前は「Yu Sasage(ユウ・ササゲ)」というお気楽夫婦のご近所にある人気店。週末は店の前の小さな通りに遠方のナンバープレートを付けた高級車がよく停車している。何度かこの店のケーキを食べたスイーツ番長のスカッシュ仲間、役員秘書も太鼓判を押す店だ。「あぁ〜!入ってない!」4人が4人とも同じ声を上げる。「ん、でもここも美味しいね」では、好評につき2周目。

Rois8様は私。けれども王冠も含め、被り物全般が悲しいぐらい似合わない。すかさず退位。被り物が何でも似合うお気楽妻に王位を譲る。むっ!悔しいほど王冠が似合う。「では、みんなで腹筋30回!」女王の命令は絶対。酔っ払い3人が揃って腹筋を始める公現祭の夜。「楽しかったぁ。ビストロ808の新スタイル、良いね♬またやって!」友人たちにも好評のデパ地下持込スタイルを取り入れて、2019年のビストロ808営業開始♬

いつものように♬「故郷 浜松」

Hamamatsu1末に近づく頃、普段は感情体温の低いお気楽妻のテンションがやや上がり、周囲も気が付かない程度に浮き足立つ。一人娘の彼女の両親が住む街、浜松に向かう日がやって来るのだ。早々に往復の新幹線チケットを手配し、往路の車中2人宴会用の「ビストロ・トロワキャール」特製弁当も予約した。完璧。そして年内の勤務最終日、いつも通り会社帰りの妻と合流し、新幹線車内でのささやかな2人宴会が品川駅から始まる。

Hamamatsu2松での2日目はスカッシュ納め。年に数回しかお邪魔しないのに、毎回温かく優しく接してくれる(スカッシュのレベルも高い)仲間たちと一緒に汗を流す。このクラブはお気楽夫婦の理想形のひとつ。駅から至近で、スカッシュコートが2面、プールは7コース、ジャグジーやサウナなど水回りも充実し、ジムも広く、ストレッチスペースなどは小さな柔道場くらい!無料のマッサージチェア多数。毎日でも通いたいクラブだ。

Hamamatsu3松の奥座敷、舘山寺温泉のホテルに義父母と1泊するのもお約束。7〜8年ほど前までは静岡周辺あちこちの温泉やホテルを訪ねていたけれど、義母はすっかり遠出が苦手になった。ちょうどその頃、新しくできた温泉ホテルが気に入り、以降同じホテルに宿泊するのが常。料理も美味しいし、大浴場も複数あり、その上バリアフリーの客室があるのも嬉しい宿。義父母にとっては一人娘と旅する年に1回の楽しみの宿でもある。

Hamamatsu4蔵に行ってみる?試飲もできるんだってよ」一滴も酒を飲まない義母が、飲んべえの私のために地元の酒造所の情報をゲットしてくれたいた。80歳を過ぎても運転を続けている義父の様子をチェックしながら、ホテルから30分ほどのドライブ。免許を更新したばかりで、次回更新まで3年は運転できるけれど、そろそろ返納かなと温泉に浸かりながら語っていた。今の所運転に問題なし。安心し蔵元限定の酒をグビリ。旨い。

Hamamatsu53日目の夜は、ビストロ・トロワキャール特製のオードブル盛合せと、冷凍庫にあった手羽元を使い、生姜を利かせたオニオンスープをささっと作る。ここ10年以上、妻も義父母も料理は全て私任せ。冷蔵庫にある食材の生死を妻と共に(私だけの判断だと角が立つ)確認しつつ、いかに滞在中に使い切るかが工夫のしどころ。重要なミッションだ。無駄な食材がない(料理を作らない)我が家ではできない楽しい作業でもある。

Hamamatsu6晦日は、比内地鶏ときりたんぽ鍋とズワイガニの甲羅盛り。いずれもネット通販のお取り寄せ。外食も億劫になって来た義父母のために、目先を変えた料理を自宅で味わってもらおうという意図。義父母も食べられそうで、自分たちも食べてみたいものを選ぶのがポイント。これもまた楽しい年末恒例のお約束。年越し蕎麦の代わりに、太く長く(穴が空いているから)見通しが利くきりたんぽだよとウケを狙うことも忘れない。

Hamamatsu7年を迎えると、「割烹 弁いち」のお節料理という最大のお楽しみが待っている。初訪問の2008年の春、同行した義父母が(余りの私の気に入りぶりを見て)気を利かせてこの店のお節を頼んで以来、毎年の恒例になった。それまではあちこちの店を選んで頼んでいたお節も、今やこの店一本槍。決して派手さはないけれど、どの料理もしみじみ旨い。あぁ、今年も元気で新しい年を迎えることができたんだなぁという喜びを味わう。

Hamamatsu8年お雑煮は私が作る。今や妻の実家はオフクロの味ではなく、マスオさんの味。2日続いたおすましの雑煮の後は、京風の白味噌の雑煮で変化を付ける。昆布出汁を取り、たっぷり白味噌を使った渾身の一品。「あらぁ、美味しいね♬」口数が少なくストレートに褒めることも稀な義父母の口にも合ったようだ。残った汁も夕飯に食べるとまで言ってくれた。よしっ!小さくガッツポーズ。マスオさんの面目躍如だ。

疲れさまでした」帰路、新幹線の車内で反省会。そんな妻からの労いの言葉がマスオさんの最大の報酬。「いろいろ食べさせてくれてありがとうねって、母が言ってたよ」思いかけず、今年は追加報酬まで付いた。何より義父母に伝わっていたことも嬉しい。良い1年のスタートだ。今年も健やかな年になりますように。

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