美景の宿「TOBEオーベルジュリゾート」
2017年 7 月29日(土)
「レッスン休みだし、どこか行こっ」お気楽妻の週末は、スカッシュのレッスンが最優先事項。そのレッスンがないと分かると、すかさず旅に出よう!とスイッチが入る。どうやら、旅好き、ホテルマニアの血が騒ぐらしい。期限切れになる直前のマイルを使い、航空券の予約が取れる空港と、行きたいと思っていたホテルのリストを照らし合わせる。すると、松山空港と羽田往復、「TOBEオーベルジュリゾート」という組合せを選ぶことができた。伝説の“蛇口からみかんジュース”販売機がある松山空港から、まず鯛そうめんと鯛めしを食べに「五志喜」という郷土料理の店に向かい、“名物に(も)旨い物あり”の結論を得る。
砥部焼で有名な砥部町にある「TOBEオーベルジュリゾート」は松山から車で15分。市内まで迎えに来ていただいたオーナーの越智さん(開業前に日本各地のホテルを泊まり歩いたらしい)とホテル談義をしながらリゾートに向かう。通谷池の湖畔に建つホテルは広大な敷地を有し、レストランとブライダル施設のあるメイン棟と、客室とエステルームがある宿泊棟に分かれており、両棟間はスタッフがカートで送迎してくれる。まるで東南アジアのリゾート気分♬バーカウンターと兼用のフロントの向こうには、湖の象徴となっている噴水(水質保全という名目で、民間で初めて認められた湖水の噴水だとのこと)が美しい。
案内されたのは、「こぶし」という(なぜかアップグレードしていただいた)スイートルーム。「小さなホテルなのに何号室では味気ないので、全室花の名前を付けました」と越智さん。湖に面した方向は全てガラス窓と扉。湖の周辺は先人たちが桜や紅葉となる広葉樹を交互に植えてくれたお陰で、春も秋も客室から見事な眺めになるのだという。客室のレイアウトやデザインはシンプルながらスタイリッシュ。床や家具の木目と、漆喰の白が柔らかな雰囲気を醸している。ベッドルームと一体になったダイニングスペースの縦格子戸の奥は、なんと洗面、トイレ、シャワーブース、バスタブが機能的に配置された水回り設備だ。
「うわぁ〜!ステキ❤️」普段はテンションが低い妻が、MAXの感嘆符を飛ばす。バスルームの大きなガラス扉を全開にすると、半露天風呂になる仕掛けに感激の模様だ。「これなら外の温泉に行かなくてもいいね」チェックインの後に近くの温浴施設に行く予定を取り止め、部屋に籠ることにしたらしい。広いウッドデッキのバルコニーに出ると、同じ材を使ったデッキチェアが2台、湖に向かって並んでいる。スモークガラスの手すりを通して、寝転んでいても湖を眺められる。広い部屋の幅いっぱいに広がったデッキは清潔感に溢れ、実に清々しく、風呂上りにビールを飲むのにぴったり。この酷暑の時期でなければの話だが。
眺めが美しいこのリゾートは、細部まで拘った客室の備品も美しい。けれども、必要以上に自己主張せず、気づいた時にハッとさせられる仕掛けだ。例えば、部屋の名前の“こぶし”が、至る所に配されていることに気付いたのは、部屋をひと通り眺めた後だった。桐の箱に入った宿泊約款の皮の表紙を開くと、こぶしのイラストと春夏秋冬の周辺散策のメッセージが描かれている。洗面ボウルの排水栓にもこぶしが描かれ、部屋の角コーナーに置かれたスタンドのランプシェードにも。そして、それらが全てオリジナルの(リゾートに10室ある客室の、10種類の備品を全て陶工に依頼して作った)砥部焼というのが素晴らしい。
ワイングラスやタンブラーなどが収められているケースはライトアップされ、それぞれのデザインもおしゃれ。ビールもグラスで味が変わる。この客室のグラスは、思わず飲みたくなるデザインだ。さっそく風呂上りに、小川糸さんの『たそがれビール』を読みながら、「道後ビール」をいただく。至福の時間だ。夜、デッキに出て灯りをつけた部屋を眺め、その美景にため息を付く。何ともべっぴんな部屋だ。そして、翌朝のデッキからの眺めに再び嘆息。対岸にある「えひめこどもの城」というドイツの古城を思わせる建物や周辺の木々が湖に映り込み、朝ぼらけの空と共に、何とも美しい1枚の絵になっている。
「TOBEオーベルジュリゾート」は、客室の内も、外の眺めも美しい“美景の宿”だった。「桜の季節とか、紅葉の季節に来てみたいね」と妻。彼女のさっそくの再訪宣言は、かなりお気に入りの証拠。了解。では、次回はぜひデッキでビールが美味しく飲める季節に!