“トモ”に祝う夜♡「ビストロ・トロワキャール」

Trois1Trois2IGAさん、6周年記念イベントのご案内です」ビストロ・トロワキャールの木下シェフから案内のメッセージ。待ってました!今年はこの店の周年イベントに合わせ、スカッシュ仲間の快気祝いを企画していた。さらには、肉部に所属する彼を一緒にお祝いするなら、この2人しかいない!という肉部幹部のI葉ご夫婦をお誘いしてあった。各種肉食べ放題、生ビール(ヒューガルデン)&ワイン飲み放題企画に挑むには(少食のお気楽夫婦を除いて)最強の布陣だ。待望の週末。まずはオードブルの盛合せで唸る。パテドカンパーニュ、パテドグランメールの食べ比べ。風味の違いを味わう。好物のサーモンのミキュイ、フローマージュドテットに涙。いずれも繊細で上品で、しみじみ旨い。少量多種の盛合せは落涙の美味しさ。幸福で満足の一皿。

Trois3Trois4日はこれをお出ししまぁす!」シェフが次々と巨大な肉塊を抱えてテーブルにやってくる度に「おぉ〜っ!」と歓声が上がる。手術明けのスカッシュ仲間が満面の笑みで肉のバトンを受け取り、ポーズを取る。大きな肉が実によく似合う。牛、アグー豚、鹿、羊など、各種肉のロースト。盛合せで少量づついただくスタイル。「お代わりいくらでもどーぞ」というシェフに「わぁ〜いっ!」と答えるI葉夫妻。赤ワインをぐびり。「このワインのラインナップでこの料金は凄いですよ」ワイン好きでもある彼らが絶賛する周年記念メニュー。絶好調で2皿めの肉にかぶりつく。赤ワインをさらにぐびり。「今年も年末オードブル企画はやるんですか」「ウチも予約お願いします!」たっぷりと旨い肉を食べながら、年末の肉料理の予約。肉部の面目躍如だ。

Trois5Trois6活頑張ってんですよ」スカッシュ仲間が現状報告。ん?だったら彼女たちの友人にも紹介してもらおうか。その日は偶然にも長野♡LOVEのスカッシュ仲間がママ友と一緒に来店中。さっそく彼女たちの席にお邪魔してご挨拶。ノリの良いママ友たちは歓迎モード。一緒に乾杯し、スカッシュ仲間もご紹介。何度かテーブルを往復しながら互いにテンションが上がっていく。そして自分たちのテーブルに戻ってみると、そこにはグラタン・ドーフィノア(ポテトグラタン)が供され、その横にはブラックホールのような物体が誕生していた。と、よく見るとそれはI葉夫人。真っ黒な長い髪を“サダコ”のように垂らし、真っ黒なセーターを着込み、全てのワインをその体内に飲み込んだ結果、人間ブラックホールのような状態になっていたのだった。思わず写真をパチリ。

Trois7Trois8めでとうございます」6周年のお祝いに送ったプリザーブドフラワーも無事に店に到着。お返しにデザートプレートに結婚16周年のお祝いメッセージを書いていただいた。この店の開店記念日と、お気楽夫婦の結婚記念日は奇遇にも同じ日。毎年一緒に周年をお祝いできる嬉しい関係なのだ。さらに今年は手術から無事生還したスカッシュ仲間もいる。彼のデザート皿には「Félicitations !(おめでとう)」とメッセージ。おめでとうの3乗だ。事前に何も互いに決めていなかったのに、それぞれがプレゼントやお祝いを持参してきたから、まるでクリスマスのプレゼント交換のような嬉しいシーンもあった。これで手術明けのスカッシュ仲間の婚活が上手くいったら、めでたし尽くし。「紹介できるようになったらビストロ808呼んでください」うん、ぜひとも!

れ?これ知らないです!」翌日、SNSでアップされたデザートの写真を見て、I葉夫人が呟いた。それもそのはず。彼女が爆睡状態の時に出てきたデザートは、しっかりダンナが(2皿)食べていた。「なんでタクシーで帰ってきたの?と翌朝怒られました」と、I葉くん。もちろん、彼女を車に押し込めるように帰宅するしかなかったことは、彼女以外の全員が知っている。めでたく、憎めない、可愛い彼女の名前は“サダコ”ではなく、実は“トモ⚪︎”と言う。共に記念日を迎えたお店と、お気楽夫婦の結婚記念日と、婚活中の友の退院を“トモ”に祝う、楽しい夜だった。

この場所で♬「パークハイアット東京」

Wedding1Wedding21994年に開業したパークハイアット東京。その年にお気楽夫婦は一緒に暮らし始めた。その開業早々に最上階のNYバーを訪問した2人は、初回からパークハイアットマジックに魅せられた。小さなエントランスからエレベータに乗り、ピークラウンジとジランドールのざわめきを横目にしてライブラリーを横切り、エレベータを乗り換え52階に降り立った瞬間、新宿の夜景の中に歩き出していけそうな錯覚に陥る。素晴らしい演出。席からの眺めも、店の雰囲気やサービスもすっかり気に入り、何か良いことがある度に訪れる場所になった。そして何度か宿泊し、ますますお気に入り度が増し、自分たちの結婚パーティをするならここしかない!と開催したのが2000年。スカッシュ仲間を中心に、こぢんまりとして温かく楽しいパーティだった。

Wedding3Wedding4る年にはお嬢さんの中学受験が無事に終わった友人と一緒に、NYバーとNYグリルをハシゴでお祝い。明るい日差しが注ぐNYバーで乾杯し、NYグリルでガッツリと美味しい肉料理を堪能した。妻や自分の誕生日を祝うことを(自分たちへの)口実に宿泊することも何度か。貯まったポイントを使ってパークスイートにアップグレードし、友人たちと一緒に食事をした後に、2次会は部屋で飲むというコースがお約束だった。大きい部屋なら最初から部屋飲みにしよう!と持ち込んだ料理や酒、ルームサービス(フォークナイフを人数分いただくために)でのんびり過ごしたこともあった。デリカテッセンで買い込んだ料理を部屋で食べると伝えると、皿に盛り付けて(料理によっては温めて)部屋まで運んでくれて驚いたこともあった。*ルームサービスよりもずっとお得♬

Wedding5Wedding62016年、結婚16年目の記念日も2人はNYバーにいた。仕事帰りに待ち合わせて行こうかという妻に、客先から向かうから別々に向かおうとフェイントをかけて、こっそり用意したプレゼントを抱えパークハイアットに向かう。感情体温が低い妻に、ちょっとやそっとのサプライズでは驚いてもらえない。先に席に着いていた妻に見えぬよう、ビジネスバッグの後ろに包みを隠し、まずは乾杯の生ビールをぐびり。料理のオーダーを済ませたところで、プレゼントを渡す。「おぉ〜っ」と妻は小さめのリアクション。それでも目ざといスタッフに「何かの記念日なんですか」と尋ねられると「結婚記念日なんです」とスムースに答えるところを見ると、どうやらご機嫌の模様。ここでパーティをしたのだと伝えると、スタッフは「おめでとうございます」と満面の笑顔。

Wedding7Wedding8ライドポテトにシーザーサラダ、去年もここで同じモノを食べたね」と妻が微笑む。あっという間の1年。今年のポテトもカラッと旨い。たっぷりのローメインレタスもパリパリと美味しい。変わらないことを確かめ、安心し、味わい楽しむ。セビーチェを肴にワインをぐびり。遠くにスカイツリー、そして東京タワーのダブルツリーを望む心踊る夜景。お気楽夫婦以外、ほぼ西洋人系の客だけという相変わらず不思議な空間。店名通り、NYCを訪ねているような気分。窓際で記念写真を撮るインバウンド系の観光客。TOKYOもなかなか良いでしょ?と話しかけたくなる。NYCとTOKYOのソーダ割り(意味不明)だ。「デザートはいかがですか」スタッフが尋ねてくる。では、NYチーズケーキをひとつ、軽い気持ちでオーダー。実は、それが彼の思惑通りだった。

めでとうございます♬」誰かの誕生日なのか?どこのテーブルだろうと思っていたキャンドル付きの皿が、思いもせずお気楽夫婦のテーブルにやって来た。え”っ!ホワイトチョコには「Happy Wedding Anniversary♡」のメッセージ付き。「うわぁ、ありがとうございます!」妻のテンションが一気に上がる。やられた。彼らの接客はいつもスマートで、柔らかく、適度な距離感を持っているのにフレンドリー。だからこのホテルは止められない。帰り際、妻が担当してくれたスタッフ(実は彼も含めイケメン君揃い)にお礼を伝えると、エレベータ前まで挨拶しに来てくれた。また来年、伺います。お祝いは、また来年もこの場所で。

“想い”のおもひで「カリエール展」

Kari1Kari210代最後の年、旅先の倉敷の大原美術館でその絵に出会った。ウジェーヌ・カリエールの「想い」という作品。当時は名前も知らない画家の、その小さな絵の前でしばらく動けなかった。女性が片肘を付き、物思いに耽っている。色彩に乏しく、霧がかかったようにぼんやりとした輪郭。その女性の表情は悲しいのか、楽しいことを思い出しているのか、悩んでいるのか。見る人に委ねられているように曖昧で、見る人のその時の「想い」を表わすようでもあった。10代の私がどう捉えたのかは覚えてはいないけれど、しばらく飽かず眺め、すっかり魅了されてしまった。美術館を巡る旅がそれまで以上に好きになり、誰の絵が好きかと聞かれれば、迷わずカリエールの「想い」と答えることになる。10代の私に、誰もそんなことは聞いてはくれなかったけれど。

Kari3Kari420代最初の年、パリに2ヶ月弱の短期留学をすることになった。アリアンス・フランセーズという語学学校に通う、というツアー。入学初日にクラスを決めるテストを受け、学生証を発行してもらい、カルト・オランジュという定期券を買ってしまったらこっちのもの。2日目以降には全く通学せず、ルーブル美術館や印象派美術館(当時はオルセー美術館はまだ開館前だった)を見て回り、リュクサンブール公園をぶらつき、街のカフェで屯した。そのツアーの中に広島出身の女性がおり、帰省の度に立ち寄る大原美術館の「想い」が大好きなのだという話題になった。驚くべき偶然。運命の出会い?では、パリ市内にあるカリエール作品を一緒に見に行こうということになったものの、「想い」以上の作品には出会えず、彼女ともその後会うこともなかった。

Kari5Kari650代の最後を迎えようとしている今年、「カリエール展」が開催されるということを知った。副題は「セピア色の想い(パンセ)」。これは行かねばだ。カリエールの作品は、大原美術館所蔵の「想い」に限らず、“カリエールの霧”と称される幻想的な表現を使った作品が多い。例えば、美術展のメインビジュアルに使われている「手紙」という作品も、霧の中で子供を抱く母が手紙を読んでいる。その内容は嬉しい便りなのか、悲しい報せなのか、やはり鑑賞する側に任せされている絵に見える。ただ、「想い」と違うのは、抱かれる娘の明るく無垢な表情。けれども、それは嬉しい手紙の象徴なのか、悲しい便りとの対比を描いたのか、またしても曖昧で、淡い色調の中に秘められている。セピア色のパンセという副題通り、30年以上も前の記憶が懐かしく、甘酸っぱく蘇る。

Kari7Kari8Luckyだったね♬」53歳になったばかりの妻が言う。美術展を見た後、土地勘のない新宿西口を彷徨った。その後、何となく入った中華料理屋が“当り”だった。パリパリの羽根つき餃子、合菜戴帽(野菜炒めの上に帽子のように巻いて焼いた卵を被せてある)などが素早く出てくる。失礼ながら期待できない店構えにも関わらず、メニューは豊富、味もそこそこ、お値段は手頃という小さな幸福。団体客で賑わう狭い店内は、大声で会話しないと相手の声が聞こえない。日本語が余り上手ではない店員が、変な日本語でオーダーを繰り返す。ふだんならイライラするシチュエーションでも、余裕を持って笑って楽しめる。ネガティブな状況もポジティブに捉えれば楽しみに変わる。受け手に感情を委ねるのは、絵画も料理も一緒…なのかもしれない。違うか(笑)。

60歳近い今の方がずっと若々しいなぁ」20歳の頃の私の写真を見て妻が言う。まぁね。何者かになろうとして、何者になれるのかを想い、迷ったり、足掻いたり、そんな“こっ恥ずかしい”時代だった、んだよ。ねえ?40年間という時間を挟んだ、10代最後の齢の私に話しかけた。返って来た彼の想いは…。

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