Archive for 10 月 13th, 2007

無謀から無帽に「元気な街の元気な壁画」

Photo「IGAさんっ!」街で突然声を掛けられた。若い男の声。聞き覚えのある声ではある。誰?自分の住む街で、そんな風に声を掛けてくるのは・・・。この街に住んで20年以上。街を歩いていても顔見知りの方々と挨拶をすることが増えた。以前は行きつけの飲み屋、食いモノ屋の店主の方々にお会いする際に、お互い妙にテレながらお辞儀するだけだった。なのに、今は仕事や地域活動の関係で圧倒的に知人の数が増えた。特に仕事の関係で知り合った商店街の方々はお客さまでもあり、休日に街を歩いていても妙に気を遣ってしまう。

・・・タクシーを降りようとしてはっと気づく。おっとここは青年部副部長の店だ。運転手さん、もう少し先で停めてください。・・・買物をしていて声を掛けられる。「あぁIGAさん、ありがとう」うわっ!講演で全国を飛び回る理事長がなんで店の前にいるんだっ!・・・駅の階段を上る途中ででかい声が頭の上から降ってくる。「おっす!」今どきそんな挨拶もないだろうと顔を見るとオチャメで豪快な副理事長。ありゃりゃ、こんにちは。そんな毎日。そして、その日声を掛けられた相手は、そんな商店街の方々を通じて知り合ったNPO法人KOMPOSITIONの若き代表、寺井くん。「今壁画描いてるんですよ。IGAさん、時間ありますか?ぜひ見てくださいよ」ほぉ、面白そうじゃん。良いよ。その日は母の法事のために会社を早退して家に戻ろうとしたところ、時間に余裕はある。

Photo_2「これなんですよ、どうですか?」区民センターの正面に昇降台付きの車を左右に2台設置した本格的な現場。足場を組む代わりに折りたたみ式の昇降台が自在に上下する。なかなかのスグレモノ。製作途中の壁画は、まだ全体像が良く把握できないが、予想以上のインパクト。「世田谷区の事業として若手アーティストの育成でもあるし、商店街とのコラボレーションなんです」なるほど。彼らは元々渋谷を中心に<リーガル・ウォール>という街の落書きを消して壁画を描くという活動を行ってきた。この壁画もその活動の延長線上にある。「役所と仕事をするのは相変わらずたいへんですね」制作費を聞くと驚くほど安い。「IGAさんにそう言ってもらうと安心します。それでもアーティストのギャラもちゃんと出てるんですよ」良いねぇ。良い仕事だ。

「IGAさん、良かったらアンケート答えてもらえますか?街の人に話を聞いてフリーペーパーを作るんですよ」良いけど、この街にとっては仕事絡みの人だからなぁ。あ、でも最近<街づくり協議会>の副会長になったんだよ、そう答えると即座に突っ込まれた。「なんだ、しっかりこの街の人じゃないですか」そうか、そうなんだ。私はもう彼らから見ても“街の人”なんだ。ちょっと嬉しい。たまたま仕事で知り合ったものの、この街にはこの街を愛する人たちが大勢いる。だからますますこの街が好きになり、一市民として協議会にも参加している。人は会社にだけ属しているわけではなく、地域にも、家族にも、社会にも、いろんなレベルで属しているし、それぞれで役割がある。近頃そんな思いが強くなった。それにしても彼らも“若者の無謀”という段階を確実に脱却し、アイデンティティがはっきりとしてきた。それがきちんと良い意味でビジネスになるのは素晴らしい。スーツや制服の要らない“無帽”の仕事。無謀から無帽へ、まだ付き合いは続きそうだ。

002140991

SINCE 1.May 2005